染の王国 新宿編

2024年4月10日放送~5月8日放送(全5回)

【染の王国 新宿❶】江戸小紋
2024年4月10日放送

かつて200軒以上の染め物の工房が軒を連ねたという「染の王国」新宿。
「なぜ新宿が染め物の町になったのか?」この謎を解いていく。

冨永愛が訪れたのは、創業100年を超える「江戸小紋」の老舗・廣瀬染工場。
半年前、こちらの工房を訪れていた冨永愛は「江戸小紋」の繊細な文様に魅かれ、
着物をオーダーしていた。その着物を作ったのが四代目の廣瀬雄一さん。
完成した着物と対面した冨永は、その素晴らしさに思わず声を上げて感動する。

「江戸小紋」

江戸時代、「奢侈禁止令」という法令により贅沢を禁止され、着物の生地や色までが指定された。
それでもお洒落をしたかった江戸の武士たちは、パッと見は無地に見える細かい文様を裃に染めて隠れたお洒落を楽しんだ。
そんな江戸っ子の「粋」から生まれた極細な文様を特徴とした染め物が「江戸小紋」であり、
江戸の武士や町人たちは、オリジナルの小紋を作って「粋」を競い合った。

「廣瀬染工場」四代目・廣瀬雄一さん

小学生の時に始めたウィンドサーフィンに熱中し、大学生の頃にはオリンピックの強化選手に選ばれるほどに。大学卒業後もウィンドサーフィンを続けようと思っていたが、祖父から「家業を継ぐには今から覚えなくては駄目だ」と言われ、江戸小紋の道に進む。
当初、30歳くらいまではウィンドサーフィンを続けるつもりでいたが、今は、祖父に言われた言葉の意味が理解できるという。

「なぜ新宿が染め物の町になったのか?」
元々は日本橋に染め物の問屋が数多く存在し、工房も集まっていた。生地の糊を洗い落とす「水元」という作業を神田川で行なっていたが、水質汚染により「水元」が出来なくなり、水が綺麗な神田川の下流・新宿周辺に工房が移った。※現在は井戸水を使用

【染の王国 新宿❷】江戸小紋
2024年4月17日放送

創業百年を超える江戸小紋の老舗・廣瀬染工場を訪れた冨永愛。
生地に糊を置く「型付け」という、難しい作業を体験させてもらう。
はたして、その出来栄えは?
そして、江戸小紋の極細な文様を染め上げるのに欠かせないのが

「伊勢型紙」と「美濃和紙」

遠方から物を運ぶのも大変だった江戸時代、
なぜ江戸(東京)の工芸・江戸小紋に、わざわざ伊勢(三重県)の型紙と
美濃(岐阜県)の和紙が使われたのか?

その秘密を解き明かすため、冨永愛と廣瀬染工場の四代目・廣瀬雄一さん、
さらに伊勢型紙の職人・今坂千秋さんと美濃和紙の職人・小澤由美さんに
参加していただき、リモート対談を決行!
まずは4千本の彫刻刀を使い分けて彫るという、伊勢型紙作りの神業に迫る。

「伊勢型紙」

三重県の鈴鹿市周辺で作られている型紙。美濃和紙を重ね柿渋で補強してできた紙に、彫刻刀で細かい文様を掘っていく。
古くから型染に使われ発展していったが、江戸時代になると、小紋の柄がどんどん細かくなっていき、型紙職人と染職人がともに技を磨きながら進歩していった。
伊勢型紙には、「道具彫り」「錐彫り(きりぼり)」「縞彫り(しまぼり)」「突彫り(つきぼり)」という4つの代表的な技法があり、基本的に彫刻師は一つの技法を専門とし、その技を極め続ける。
染め師は文様によって、型紙の彫り師を選んでいく。

伊勢型紙三代目彫刻師・伝統工芸士 今坂千秋さん

「道具彫り」が専門。「道具」とは彫刻刀のことで、丸や四角、花びらなどの形をした彫刻刀を使い分け、一突きで文様を掘っていく。
「道具彫り」の彫刻師は、自らの手で彫刻刀を作るのだが、今坂さんの彫刻刀の数は実に4千本を超えるという。
一つの技法を極めるのが基本だが、「錐彫り」の彫刻師が一人しかいなくなってしまい、伝統を残すために「錐彫り」の技法も始める。
「錐彫り」とは、錐と呼ばれる刃先が半円形の彫刻刃を垂直に立て、回転させながら小さな穴を彫る技法。伊勢型紙の技法の中でも最も古い技法の一つといわれている。

【染の王国 新宿❸】江戸小紋の未来
2024年4月24日放送

江戸小紋の極細な文様を染め上げるのに欠かせない
「伊勢型紙」と「美濃和紙」
なぜ江戸(東京)の工芸・江戸小紋に、わざわざ伊勢(三重県)の型紙と
美濃(岐阜県)の和紙が使われたのか?

その秘密を解き明かすため、冨永愛と廣瀬染工場の四代目・廣瀬雄一さん、
さらに伊勢型紙の職人・今坂千秋さんと美濃和紙の職人・小澤由美さんに
参加していただき、リモート対談を決行!
今回は、伊勢型紙に使われる美濃和紙を紐解く。

さらにミライアクションでは、着物や和紙の需要が減った今、
江戸小紋、伊勢型紙、美濃和紙の伝統をいかにして未来へ紡ぐのか?
それぞれが行なっている活動や新たな試みを紹介する。

「美濃和紙」

日本三大和紙の一つで、柔らかみのある繊細な風合いをもち、薄いながらもまるで布のような丈夫さが特徴。
また、美濃和紙の中でも最高峰とされる「本美濃紙」はユネスコの世界無形文化遺産にも登録されている。
白く綺麗な和紙にするには、「ちりとり」という作業でいかに時間をかけて、丁寧に細かいゴミや硬い皮を取り除くかにかかっている。
伊勢型紙に使われる美濃和紙は彫りやすくするために、漉き方を変えて作られるという。

「石原英和工房」小澤 由美さん

美濃和紙職人の両親の間に生まれながら、職人の道に進んだのは、就職・出産・子育てを終えた40歳を過ぎてから。
そこから紙漉きの仕事を見た時に「ひょっとしたら素敵な仕事なのかも」と思い、新聞の研修者募集の広告を見て応募した。
現在、伊勢型紙用の美濃和紙を漉くのは、小澤さん一人だけなのだそう。
偉大な父や母の背中を追い、腕を磨き続ける。

【染の王国 新宿❹】東京手描友禅
2024年5月1日放送

染物の町・新宿で、江戸小紋に並び有名なのが、「東京手描友禅」。
まるで絵画のような友禅染めはどのようにして染め上げるのか?

その謎を解くため冨永愛が訪れたのは、小倉染芸の三代目、小倉隆さんのアトリエ。
東京手描友禅界のホープと呼ばれる小倉さんの、繊細な染めの技術を見せていただく。
また、小倉染芸独自といわれる染めの技とは?

さらに、日本三大友禅=京友禅・加賀友禅・東京手描友禅の未来を担う作家が
一堂に集結!それぞれの特徴や違いについて明らかにしていく。

そして、能登半島地震で被災した伝統文化を応援する
「北陸の伝統を未来へ紡ぐ」では、珠洲市の伝統工芸「珠洲焼」の現状と
5月3日~5日に開催される特別展「創炎会展」への想いを伺う。

「友禅」とは…

江戸時代、京都の扇面絵師・宮崎友禅斎が作った染めの技法。友禅斎の名前をとって「友禅染め」と名付けられた。
その後、友禅斎が加賀にその技法を伝え、現在の「加賀友禅」となる。さらに江戸にも伝わり、京友禅、加賀友禅、東京友禅は「日本三大友禅」と呼ばれる。
友禅染めには、「型友禅」と「手描友禅」があり、その名の通り、手描きで生地に柄を描くのが「手描友禅」。
そして全て手描きで繊細な模様を描き上げるのに欠かせない技が「糸目」。下絵の輪郭に沿って糸目糊を置いていくことで、糊が防染の役割を果たす。それによって緻密な模様を描くことができる。

「東京手描友禅」

江戸時代、贅沢を禁止し、着物の生地や色まで制限された「奢侈禁止令」の中、おしゃれを諦めたくない江戸っ子の間で、使用が許されていた茶色や灰色を使った友禅染めの着物が広まった。限られた色の中でお洒落を競い、その多彩な色の数々は四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねず)といわれ、茶色や灰色だけでも100色以上があるといわれる。また落ち着いた色彩の中にも江戸らしい粋や洒落が表現されているもの特徴。

「小倉染芸」三代目 小倉隆さん

伝統的工芸品産業振興協会長賞、東京都中小企業振興公社理事長賞など、これまで数々の賞を受賞。
また、イタリア「ボッテガ」とコラボレーションした、スパークリングワインのラベルデザインを手がけるなど、東京手描友禅界のホープと言われている。
友禅の世界に入ったのは26歳の頃。留学先での経験、友禅作家である父からの一言でサラリーマンから転職し、友禅の道に進んだ。

【染の王国 新宿❺】東京手描友禅✕京友禅✕加賀友禅
2024年5月8日放送

前回に引き続き、京友禅の吉田麗さん、加賀友禅の志々目哲也さん、東京手描友禅の小倉隆さん、日本三大友禅の未来を担う作家・職人たちが集結!
友禅界の今と未来を語り尽くしていく。

若手作家同士が共感する「友禅あるあるトーク」は大盛り上がり!
友禅あるある① 「腰痛になりがち」
友禅あるある② 「深爪になりがち」
友禅あるある③ 「夜、思いついた柄を朝見てみたら大したことないと思いがち」…
そんなあるあるの中から、各作家たちが「大切にしてしていること」が見えてきた。

そして、友禅界のミライアクションとは?

それぞれの作家たちは、これまでの伝統を守りつつ、新たな可能性を広げる作品作りや、新たな活動に踏み出していた。
友禅界の未来を担う3人の挑戦を紹介していく。

京友禅職人 吉田 麗さん

生地の染料と、絵柄の染料が混ざらないように糊を置く「糸目糊置」を専門とする職人。
京都市伝統産業技術者研修を卒業して友禅の道に進む。
そこで出会った女性職人と3人で、ユニットsoin(そわん)を結成。数々のイベントに出展するほか、人形用の友禅を制作するなど、京友禅の普及に力を入れている。

加賀友禅作家 志々目哲也さん

加賀友禅作家の中では唯一の30代。
先人たちが受け継いできた伝統を継承しながらも、先進的な技術や自然から感じとる命の輝きを自身の感性で表現することに努める。
スマホゲームでキャラクターが着る衣装を手がけるなど、友禅を広める活動も行なっている。

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