



2014年6月11日 放送
イタリア北部を流れるアディジェ川はアルプスから400キロの旅を経てアドリア海に注ぐイタリア第二の大河です。
アディジェの流れに沿って流域の街々をたずねます。
上流部で一番の大都市、ボルツァーノ。
中心部に美しい大聖堂と広場があります。
広場近くの交通標識は、イタリア語とドイツ語で表記されています。
このあたりは1918年までオーストリア領だったため、住民の4分の1はドイツ系です。
「南チロル」と呼ばれるこの地域は
イタリアの中にあって、独自の文化を築き上げています。
ボルツァーノ近くに、可愛らしい登山鉄道、レノン鉄道があります。
行く先に間近に迫る山は、標高約3000メートル、世界遺産のドロミーティ。
日本ではドロミテとして知られています。
マグネシウム質の石灰岩を豊富に含む特殊な土壌です。
ドロミーティの周りには、
世界の登山好きを魅了する幾つものトレッキングコースが設定されています。
アルプスの本格的な登山から、軽装でのハイキングまで様々楽しめます。
ボルツァーノを含むチロル一帯は、春を彩るある食材の名産地としても知られています。
春に旬を迎えるホワイトアスパラガスです。
アディジェ川沿い、ボルツァーノの近郊の村々には、
ホワイトアスパラガスの畑が幾つも広がります。
ホワイトアスパラガスは、通常のグリーンアスパラに土を被せて育てることで、
白くしています。
アディジェ川の運んだ細かい砂の土壌ときれいな地下水が、
真っすぐでジューシーなアスパラガスを育てているのです。
そんなアスパラガスは、
クリーミーな卵のソース、「ボルツァーノソース」をかけて食べるのがおすすめです。
ボルツァーノ近郊の街、メラーノはアディジェ川流域を代表する温泉保養地です。
周囲に連なる3000メートル級の山々と、
美しさが有名で「アルプスの真珠」とも呼ばれています。
アルプスの真珠「メラーノ」を象徴する建物、トラウトマンズドルフ城。
14世紀に建てられた城で、チロル地方のネオゴシック様式の城の基本とされてます。
季節ごとに花々が色づく城の庭園は、
2001年より「メラーノ植物園」として公開されています。
庭園内の植物は全体で5800種類、約70万本にも上ります。
山間の村「パルチーネス」は、古くから泉湧き出す名水の里として知られています。
村の水はかつて、癒しの水として医療にも使われました。
村には世界中から観光客が訪れるレストランがあります。
「ターおじさんのレストラン」。
古代ローマの昔から温泉地として栄えたパルチーネス。
この店の下から湧き出す源泉は1430年から使われていて、
チロルに現存する最も古い温泉施設とされます。
店のオーナーは、ターおじさんことカールさん。
カールさんは、湧き出る源泉を利用して、ある食材の養殖を店の裏で行っています。
食用のカタツムリ「エスカルゴ」です。
レストランの裏庭にある畑で育つ野菜やハーブは、地下水を使って育てられています。
これらの野菜は店で料理として出されると同時に、
エスカルゴの餌にも使われています。
健康な水で育ったエスカルゴ料理は、お客さんに人気があります。
パルチーネスの村には、水を使った人気のアクティビティもあります。
冷たい水で腕や足を冷やし、その刺激で体を活性化する
「クナイプアクティビティ」です。
19世紀のドイツで生まれた健康法です。
滝から流れ落ちた冷たい水で顔を刺激し、
頭の血行促進をすれば気分もすっきりすると言います。