



2014年3月19日 放送
インドシナ半島の中央に位置するカンボジア王国。
首都プノンペンは、メコン川とトンレサップ川という2つの大河が合流する
南部地方にあり、全国民のほぼ10分の1に当たる
およそ134万人が暮らしています。
街の歴史は中世クメール王朝によって建設された13世紀に遡ります。
大航海時代にはヨーロッパ各国の侵略を受け、
19世紀からはフランスの統治下に置かれます。
プノンペンの中心部に立つ「独立記念塔」。
カンボジアがフランスから独立した1953年の5年後、
1958年に建造されました。
祖国のために戦った兵士たちを祀る慰霊塔でもあり、
毎年11月9日の独立記念日には、ここで式典が行われています。
独立から半世紀あまり街はその美しさから「東洋のパリ」とも呼ばれています。
街の北側に、プノンペンの名の由来となった建物があります。
「ワット・プノン」。
1372年に建てられた街で最も古い仏教寺院です。
寺院には一つの伝説があります。
ある時、ペン夫人という地元の女性が、メコン川を流れてきた一体の仏像を見つけ、それを祭る為の祠を丘の上に建てました。
街の名前「プノンペン」は、クメール語で「ペン夫人の丘」を意味します。
プノンペンから北西へおよそ250キロ。
シェムリアップは、年間およそ250万人が訪れる
カンボジア有数の観光都市です。
街の名前は、17世紀にクメール人がシャム王国から土地を奪った
「シャム人敗戦の地」という意味を持ちます。
現在、街は豊かな緑と水で彩られています。
この街は、世界的な遺跡観光の玄関口として知られています。
天空の楽園と呼ばれる世界遺産の「アンコールワット」です。
夜明け前、遺跡の周辺に観光客が集まります。
朝日と遺跡の幻想的な光景を見るためです。
やがて空が白み出すとともに、遺跡の壮大なシルエットが浮かびあがります。
水面が鏡のように天空の楽園「アンコールワット」を映し出します。
「シェムリアップ」の街では、
伝統舞踊も受け継がれています。「アプサラダンス」。
元々はアンコール王朝時代の宮廷舞踊で、
アンコールワットの壁にも描かれています。
アプサラダンスの特徴は優雅な指先の動きにあります。
満開に咲く花などを表しているといわれ、
指の反り返りの角度が大きいほど優れたダンサーだとされています。
クメールの伝説では「アプサラダンス」は、
古代インド神話の天女アプサラスがクメール人に教えたと言われています。
シェムリアップの街の南に、東南アジア最大の湖があります。
「トンレサップ湖」。その面積は一年を通して大きく変化します。
最も小さい時で2700平方キロメートル。 雨季には川の逆流で6倍にまで拡大します。広大な湖には、いくつもの水上村が点在しています。
その1つモアットクラー村。
村の人口は1400人にもなるそうです。
村は、トンレサップ湖でも辺鄙な位置にあり、観光客は殆ど訪れません。
そのため古くからの暮らしと風景が守られています。
「プノンペン」の街はアンコール王朝時代には、
現在とは別の名前で呼ばれていました。
「チャットムック」=「大河が出会う場所」です。
その名の通り、インドシナ半島を縦断する母なる大河「メコン」と
東南アジア最大の湖を持つ「トンレサップ」という、
2つの豊かな流れが、神秘の遺跡や伝統の文化を育んだのです。