



2014年2月12日 初回放送
スイス南東部。
アルプスの山間、標高1822メートルに位置する街サン・モリッツ。
古くから高級山岳リゾートとして知られ、夏はハイキング、冬はウィンタースポーツで賑わいます。
スイスの高原地帯の多くが海洋性気候で、天候が不安定とされます。
その中でサン・モリッツは、年間の晴天が300日以上あることで知られています。
その爽やかな空気はまるでシャンパンのようだと讃えられています。
サン・モリッツ湖のほとりに、古いカトリックの教会が建っています。
サン・カルル・ボッローメウス教会です。
1889年に建てられました。
スイスは、周辺をフランスやドイツ、イタリアなどに囲まれていて
同じ国内でも地域ごとに公用語が違います。
サン・モリッツはドイツ語圏にあり、
この教会はドイツ語を話す市民のために建てられた最初の教会だそうです。
スイス南東部の街サン・モリッツ。
美しい森と湖、アルプスの山々に抱かれたこの街を愛したひとりの画家がいます。
アルプスの画家と呼ばれたジョヴァンニ・セガンティーニです。
セガンティーニが晩年を過ごしたのが、サン・モリッツ郊外の村マローヤです。
湖のほとりに佇む、人口300人ほどの小さな村です。
村内には、セガンティーニの家が今も残されています。
セガンティーニは、
1894年から1899年に亡くなるまでの5年間をこの家で過ごしました。
山間の街サン・モリッツの玄関口。
1904年に開業したサン・モリッツ駅から人気の列車が運行しています。
国境を越えて北イタリアの街ティラーノまでを結ぶベルニナ急行です。
アルプスの自然をそこなうことなく切り開いた
その鉄道技術と沿線の美しい風景から、
もっとも感動的な鉄道として2008年に世界遺産に登録されました。
アルプスを南北に縦断するベルニナ急行。
沿線の風景を映す車窓に、アルプスを代表する絶景が飛び込んできます。
山間を覆う美しく雄大なモルテラッチ氷河です。
列車は氷河の玄関口モルテラッチ駅に停車します。
駅からは氷河の間近まで歩いて行くことができるハイキングコースがあります。
モルテラッチ氷河の麓に、
スイス伝統の製法を今も続ける一軒のチーズ工房があります。
この工房では形を整えたフレッシュチーズを、
貯蔵庫で6週間寝かせて熟成させます。
工房には食堂も併設されていて、自慢のチーズを味わうことができます。
ベルニナ急行の旅は更に続きます。
山の上の湖ラーゴ・ビアンコが見えてきました。
ラーゴ・ビアンコはイタリア語で白い湖を意味します。
湖が白いのは、氷河から溶け出たミネラル分のためだそうです。
白い湖を過ぎると間もなく、また別の湖が見えてきます。
水力発電のために作られた人工の湖、ポスキアーヴォ湖です。
山々を映す緑の湖面が、白い湖ラーゴ・ビアンコと対照的です。
サン・モリッツからおよそ2時間。
ベルニナ急行、最後の見所にさしかかります。
線路が360度回転するオープンループ橋です。
山の斜面の急勾配を緩やかにする為に作られました。
ループ橋自体は日本はもちろん他の国にもありますが、
途中にトンネルが無く全体を見ることが出来るループ橋は非常に珍しいそうです。
オープンループ橋を越えると終点まではもう間もなくです。
標高1800メートルの澄んだ空気と、
氷河の雪解け水、そしてアルプスの山々が生み出すスイス南東部。
この自然を描き続けた画家ジョヴァンニ・セガンティーニは、
その死の直前に病床でこう語ったといいます。
私の山が見たい。