



2013年10月30日 初回放送
スイス中央部の山間の町ルツェルン。
町がつくられたのは1200年前。
13世紀にイタリアのミラノへ続く峠道が開通した事で南北ヨーロッパを結ぶ交易地として発展しました。
人口およそ8万人のこの中世の面影を残す古い町には、世界中から毎年多くの観光客が訪れています。
ルツェルンの町並みに沿って広がるルツェルン湖。
およそ114平方キロメートル、猪苗代湖とほぼ同じ広さがあります。
ルツェルン湖から流れ出るロイス川。
ロイス川には14世紀の屋根つきの橋が架かっています。
カペル橋です。全長200メートル。
1333年、ハプスブルク家からの独立戦争の最中に町を守る為に作られました。
ヨーロッパで最も古い木造の橋といわれています。
スイスアルプスを望む湖畔の町ルツェルン。
旧市街の高台に巨大な中世の建造物があります。
ムーゼック城壁です。
ハプスブルク家との独立戦争の最中、14世紀から16世紀にかけて建てられました。
当時は旧市街全体を取り囲んでいましたが、現在はそのうちの900メートルだけが残っています。
現存する城壁では国内最長といわれています。
中世の戦乱と侵略の歴史を今に伝える城壁。
21世紀の今は緑に覆われ、市民や観光客の憩いの場となっています。
ロイス川のほとりに、スイスで最も古いバロック様式の建物があります。
1666年に建てられたイエズス教会です。
装飾性豊かなバロック建築の特徴が見て取れます。
教会の内部は、バロック様式後の18世紀に生まれたロココ様式。
自然をモチーフにした複雑な曲線デザインが特徴で、フランスの宮廷から広まりました。
ルツェルン旧市街の小さな公園に、18世紀のフランス革命の記念碑が彫られた岩があります。
ライオン記念碑です。
革命中のパリで命を落とした786人のスイス人兵士に捧げられました。
資源を持たないスイスは、古くから傭兵で外貨を稼いでいました。
永世中立国でありながら多くの若者が戦争で散っています。
この記念碑は、世界で最も悲しく、そして感動的な岩の彫刻であると評されています。
高原の湖畔の町ルツェルン。
スイスアルプスを望むルツェルン湖には、多くの遊覧船が運航しています。
中でも観光客の人気が一番高いのが、1905年に建造された蒸気船シラー号です。
ルツェルンの船着場を出航して、湖畔の観光名所を巡ります。
出航しておよそ10分。最大の見せ場が近づいてきました。
ポプラの木々に覆われた一軒の家。
19世紀のドイツの作曲家で、オペラの歴史にその名を残すリヒャルト・ワーグナーが暮らした家です。
ワーグナーは1866年から1872年まで、ルツェルン郊外のこの家で過ごしました。
ルツェルン湖のほとりに標高2132メートルの山、ピラトゥス山があります。
山頂までは、登山鉄道が走っています。
1889年に開通したこの登山鉄道は、スイスで3番目に古いものです。
世界一急勾配な鉄道として知られています。
山頂に古き良きスイスの音色が響きます。
アルプス地方伝統の管楽器、アルプホルンです。
本来は、放牧した羊の群れを集めたり、遠くの山の仲間を呼ぶために用いられました。
その昔アルプホルンは、一本の木をくり抜いて作っていました。
今では、口をつけて吹く部分、中間の筒部分、先端のラッパ状の部分を分割して作っています。
一番神経を使うのは、音色を左右する先端部分だそうです。
全長2メートル以上にもなるホルンの音色が、わずか数ミリの厚さで変わるといいます。
山と湖が溶け合うスイス中部の情景。
この美しい舞台に立ったリヒャルト・ワーグナーは、こんな言葉を残しています。
自然は、それを愛する者の心を裏切るようなことは決してない