




2013年4月3日 初回放送
ヨーロッパ大陸の北西に浮かぶ、グレートブリテン島。
その北部を占めるイギリス連邦スコットランド。
美しい中世の街並みが広がり、その美しさから「北のアテネ」と称される、
首都エディンバラから旅を始めます。
街は中世に築かれた旧市街と、18世紀、イギリス連邦加入後に作られた新市街に別れます。
大きく2つの時代を織り込んだエディンバラは、
「世界一美しい街」のひとつに数えられ、その街並みは1995年、
世界遺産に登録されています。
人口はおよそ50万人。グラスゴーに次ぐスコットランド第2の都市で、
古くから商業で栄えました。
ロイヤルマイルの中央に立つ「聖ジャイルズ大聖堂」。
建築が始まったのは、12世紀初頭。アーチ型の高い入り口や窓は、
当時のヨーロッパを席巻したゴシック建築の特徴です。
今もエディンバラのカトリックの中心とされる教会。
壁全体がゴシック建築の時代に発展したステンドグラスで、色鮮やかに飾られています。
大聖堂はその名の通り、7世紀の聖人「聖ジャイルズ」が祀られています。
アテネ出身のジャイルズは、鹿狩りの流れ矢で傷を負った逸話から、
病人の守護聖人とされます。
大聖堂で最も貴重とされる場所が、
20世紀初頭に増設された「シスル礼拝堂」です。
シスルとはアザミのこと、アザミの名前を冠した騎士団は最高位に位置します。
ロイヤルマイルの一角に、街の歴史を今に伝える店があります。
「ワールズ・エンド」、「世界の果て」という名の古いパブです。
観光客はもちろん、地元の常連客で店内はいつも賑わっています。
店の名はかつて、イギリス軍から街を守る為に設けられた巨大な壁に隣接していた
ことからつけられました。
店で最も人気があるのは、スコットランドの伝統料理、ハギスです。
ハギスとは、羊の内臓などを胃袋に詰めたもの。
こってりして香りの強い肉に、炒めたタマネギと生クリームとウイスキーで作った
ソースをかけます。
スコッチウイスキーによく合う、スコットランドのソウルフードです。
街の北側、フォース湾に流れるリース川の近くにキルトの老舗専門店があります。
キルトは、スカートの様に見えるスコットランドの民族衣装です。
スコットランドでは、キルトは男性の正装に用いられます。
それに使うチェック模様をタータンと呼び、
多くの場合、持ち主の家や立場を表しています。
18世紀以降、キルトは、軍隊の中で所属部隊を区別する軍服として使われていました。
その後、政治的な理由で一時着用が禁止されましたが
1822年にスコットランドを訪問したイギリス国王ジョージ四世がつけた事から、
再び国中に広まりました。
日本で言う家紋のように、家ごとに違うタータンが使われる様になったのも
その頃からだといいます。
現在、新しいタータンを使う際には、政府への申請が必要とされています。
エディンバラから南東へおよそ12キロ。ロスリンという小さな街があります。
街は、ロスリン礼拝堂で世界に名が知られています。
近年、「ダヴィンチコード」で取り上げられて一躍有名になりました。
15世紀、スコットランド北部の貴族
ウイリアム・シンクレアの指示により45年の歳月をかけて建てられました。
礼拝堂の壁は、全体が無数のレリーフで飾られています。
その一つ一つが謎めいて、見る者の想像を刺激します。
ロスリンの南に流れる、ツイード川。
イングランドとの境界線を源流として、156キロ彼方の北海に注いでいます。
毎年2月から始まる漁期には、サーモンを目当てに国内外から多くの釣り人がやって来ます。
人気の秘密は、その難しさ。
ベテランでも日に2匹釣り上げるのがやっとです。
スポーツフィッシング王国スコットランドの中でも
この川は魚の泳ぐ範囲が広く、難所として知られています。
エディンバラから北へ110キロあまり。
山々が連なる丘陵地、ハイランド地方を訪ねます。
小さな村の谷間を流れる小川に沿って、スコッチウイスキーの名ブランドとして
世界的に知られる、「エドラダワー蒸留所」があります。
伝統の製法を守り続けるエドラダワー蒸留所。
味の決め手は、ハイランドでゆっくりと育まれた水です。
スコットランド西岸に広がる、ヘブリディーズ諸島。
近海に大小500以上もの島が連なるように浮いています。
その中でも最大の島が「ルイス島」と「ハリス島」です。
南北に地続きでありながら、別々の名前を持つ2つの島。
ヨーロッパにおける最後の辺境とも呼ばれ、独自の文化を守り続けています。
島では、世界中のファッションブランドが注目するハリスツイードが作られています。
ハリスツイードは18世紀にこの島で誕生し、今も当時のままの製法で作られおり、
この島で作ったものでないと、正式なハリスツイードとして認められません。
ハリスツイード職人ドナルド・ジョン・マッケイさんは、ツイード作りには、
この島の厳しい自然が無くてはならないといいます。
縦糸と横糸に織り込むのは、島の大地や海の色。
その素朴で懐かしい質感は、最果ての島の人々の手でずっと紡がれてきたのです。