ユカタン半島の突端。メキシコを代表するビーチリゾートの町「カンクン」。
カリブ海を望む、全長20キロもの純白の砂浜は、波に砕けた珊瑚が、数千年かけて堆積したものです。その美しさに魅せられ、人口62万人の町に、年間300万人を超える観光客が、世界中から訪れます。カリブ海沿岸地域は、一年間の平均気温が27度から28度。カンクンの砂浜は、一年中、ラテンの陽気さに覆われています。

カリブ海には、世界中のおよそ30パーセントにあたる珊瑚礁が広がっています。カンクンの海は、メキシコ政府の規制により、自然のままの珊瑚礁と、透明度の高い海水が守られています。その美しい海を、支えているもののひとつが、カンクンの内海ラグーンに茂るマングローブ。マングローブは、海水と、淡水が混ざり合う場所に生える樹木で、酸素を生み出し、それが水に溶け込むことにより、水を浄化するといいます、さらにマングローブ林から流れ出す養分が、海に流れ出し、豊かな海の基となるそうです。現在、マングローブの急激な減少が、世界中の海で問題になっています、その中で、豊かな自然を保ち続けるカンクンの海は、奇跡の海とも言われています。

カンクンから南西へ200キロ。マヤ文明の古代遺跡「チチェン・イツァ」です。マヤ文明は、紀元前から17世紀にかけてメキシコ南東部で栄え、現在ここは世界遺産になっています。この遺跡の象徴とされるのが、9世紀に建てられた、高さ24メートルの神殿「ククルカン・ピラミッド」です。ピラミッドの最上部には、神殿があり、マヤの最高の神であるククルカンが祀られています。マヤの人々は当時、すでに正確な暦を持っていたと考えられています。このピラミッドには、4面にそれぞれ91段ずつの階段が作られています。その合計364段に、最上段の神殿の1段を足すと、ちょうど一年と同じ365段になります。このことから「暦のピラミッド」とも呼ばれています。

マヤ文明には、他の多くの古代文明とは、違う特徴があります。エジプトや、黄河など世界の四大文明が、大きな川のほとりで誕生したのに対し、マヤ文明は、泉によって発展しました。その面影を残すのが、遺跡内にある「聖なるセノーテ」。セノーテとは、泉のことです。チチェン・イツァのセノーテは、直径およそ60メートル、深さ28メートルで、ユカタン半島最大と言われています。当時ここでは、雨乞いの為の、生贄が捧げられたといいます。かつて行なわれた調査では、水底から調度品と共に、230体の骨が発見されました。川の無いユカタン半島では、セノーテが、唯一の真水の供給源でした。マヤの人々にとってセノーテの水は、信仰の対象であると同時に、生活用水でもありました。

カリブ海には、7000もの島々が浮かんでいます。それらは、カリブ諸島と呼ばれます。
カンクンから11キロほど離れたイスラ・ムへーレス。美しい海と、豊かな自然、白いビーチが観光客に人気です。イスラ・ムヘーレスはスペイン語で、「女性の島」という意味を持ちます。マヤの人々の聖地で、出産の女神であるイシュチェルが、祀られていました。
安産を願って、巡礼に訪れたマヤの女性たちが女性の像を大量に奉納し、後に、これを発見したスペイン人が、女性の島と名付けたのです。島での、リゾート客の移動手段は、レンタルカートです。全長8キロほどの島の、端から端まででも1時間あれば移動できます。
島の最南端に、マヤ時代に作られた、神殿の跡があります。「イシュチェル遺跡」です。
現在は建物の一部しか残っていません。崩壊した遺跡には、わずかに、階段らしき部分が残っています。マヤの女性たちは、この階段に女神イシュチェルへ捧げる像を、並べたと言われています。

カンクンから南へおよそ130キロ。カリブ海に面して立つ、トゥルム遺跡。
ここは、内陸の密林で発展した、マヤが海側にまで勢力を広げ、作ったとされる古代都市の遺跡です。中南米に、数々ある古代遺跡の中で最も美しいとも言われますがスペイン軍に破壊された歴史から、マヤ終焉の地と呼ばれています。古代都市の名前「トゥルム」には、囲いや柵という意味があります。この街は、城壁と海に囲まれた、要塞都市だったのです。この地を攻め滅ぼしたスペイン人は、マヤの人々が、暮らす美しい街並みに、驚きと感動を覚えたといいます。当時のマヤの建築技術は、ヨーロッパ各国に並ぶか、それを凌ぐほどのものだったのです。遺跡のある断崖の下には、カリブ海を望むビーチが広がっています。鮮やかな青のカリブ海と、純白のビーチそしてマヤの人々による建造物、そのコントラストが中南米で、最も美しい遺跡と言われるゆえんです。遺跡を見学したリゾート客は、古の人々の思いと、神々に見守られながらカリブの海を楽しみます。