ポルトガル第二の都市「ポルト」。ドウロ川の北側に広がる街には、現在人口24万人が暮らしています。ローマ帝国時代、この一帯はカーレと呼ばれていました。ポルトは、当時も港町だったため、ラテン語で「カーレの港」を意味する「ポルトゥス・カーレ」が、やがてこの国と町の名前になりました。大航海時代の面影を残す旧市街は「ポルト歴史地区」として、1996年、世界遺産に登録されています。

ポルトを象徴する大河ドウロ川に面した旧市街の一角、カイス・ダ・リベイラ地区。
大航海時代は、外洋に出る大型帆船の波止場があった場所。当時、植民地経営などで巨万の富を得たポルトガルは、繁栄の最盛期を迎えていました。17世紀の情緒溢れる古い家々や、狭い路地などに大航海時代の面影を見ることができます。

大航海時代のポルトガルの栄華を今に伝えるサン・フランシスコ教会があります。
この教会がカトリックのフランシスコ会派によって13世紀に建築されました。
教会の内部は17世紀後半から18世紀にかけ、木の彫刻の上に金箔が貼られた装飾が施され、豪華絢爛な空間となっています。金の量はおよそ600kg。当時、植民地だったブラジルで大量の金塊が発掘され、国中がゴールドラッシュに湧いていました。

ポルト市内から北東へ40kmに位置するギマランイスは、ポルトガルの初代国王アフォンソ1世が生まれた土地として知られ、「ポルトガル誕生の地」と言われています。
建国当時の面影を残す旧市街は、2001年、世界遺産に登録されました。
町の高台にアフォンソ１世がが生まれ育ったギマランイス城が残されています。
1109年、この城に生まれたアフォンソ1世は、父の死により僅か3歳で城主になります。その後、独立を目指しカスティーリャ王国と戦い、1143年に念願の独立が認められ、ポルトガルが誕生します。

ポルトの町からドウロ川の上流へおよそ70キロ。緑の山々に抱かれた古都・ラメーゴは、ポルトガルの初代国王アフォンソ1世が初めて国会を開い街で、かつては政治や宗教、経済の中心地として栄えました。
街を見下ろす高台に立つ、ノッサ・セニョーラ・ドス・レメディオス教会は、ポルトガルを代表する巡礼地のひとつに上げられます。麓から教会が立つ高台までの高度差は約150m。町の中央を走る大通りからそのまま続く686段の階段を登らないと聖地にたどり着けません。この教会は医学や薬の女神としても知られる聖女レメディオスを祀っています。
毎年9月に、「レメディオスの祝祭」が盛大に行なわれ、普段は静寂が支配する教会もこのときばかりは歓喜に包まれます。

ラメーゴの中心から北へおよそ10km。ドウロ川沿いに穏やかな丘陵地帯が広がります。
「アルト・ドウロ・ワイン生産地域」は天然の地形を生かしたブドウの段々畑で、2001年、世界遺産に登録されています。2万5千ヘクタールという広大な土地から生み出されているのが世界的に知られるポートワインです。9月半ばから10月に掛けて収穫されたブドウからポートワインが作られます。ワイナリーで半年間熟成されたポートワインは、収穫から半年経った毎年4月に、この地から樽のままポルトまで運ばれます。

ドウロ川を挟んだポルトの対岸の街、ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア。ドウロ地方で熟成されたワインの樽は、かつては専用の船で現在は陸路でこの町に運ばれてきます。川には当時使われたラベーロと呼ばれる運搬船が、モニュメントとして飾られています。ガイアの町には、ドウロ川に沿うようにワイン専用の倉庫が並んでいます。かつてはこの町の倉庫に保管され、最後の熟成をしたものしかポートワインと呼ばれませんでした。

ポルトの港から西へ1500kmにある人口13万人のサンミゲル島は大西洋に浮かぶ9つの島からなるアソーレス諸島の中で、最も大きな島です。かつては遠洋漁業などの基地として使われていました。温暖な気候と、火山帯にあるため島の各地で温泉が湧き出し、現在は、保養地として人気で、世界各国から観光客が訪れています。
海岸線に、お茶の畑が広がります。サンミゲル島にはヨーロッパで唯一の茶畑があります。
島に茶畑ができたのは19世紀末。かつて島で栽培されていたオレンジが伝染病で絶滅し、新たな農作物として中国のお茶が持ち込まれました。ポルトガルの王女がイギリスに嫁いだとき一緒にお茶の文化を伝えたと言われています。