放送内容
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2020年8月30日
来年8月24日から13日間にわたって開催予定の東京パラリンピック。
オリンピックより200種目も多い22競技539種目が行われる。
種目が多い分、期待されるのは日本人選手団のメダル数。
前回リオでは無念の金メダル“ゼロ”に終わった日本選手団。
過去最多だったアテネの17個超えを目指す。
そこで、東京パラリンピックで金メダル獲得が有力視されている競技の一部をご紹介。
まずは、有明テニスの森で行われる「車いすテニス」。
男子にはシングルスでパラリンピック連覇を成し遂げた国枝慎吾選手。女子では、今年の全豪オープンを制し、グランドスラムで合計7回優勝している上地結衣選手に注目。
続いては、国立競技場で行われる「陸上」。
注目は前回リオ大会で銀メダルを獲得した、山本篤選手。マラソンでは視覚障がいクラス女子の世界記録保持者・道下美里選手が初のパラリンピック金メダルを狙う。
「水泳」が行われるのは、東京アクアティクスセンター。
注目は知的障がいクラスで世界記録保持者の2人、東海林大選手と山口尚秀選手。
国立代々木競技場で行われるのは「車いすラグビー」。
激しいぶつかり合いが特徴のこの競技。おととしの世界選手権では悲願の初優勝。最強ジャパンを証明できるか、注目。
有明体操競技場で行われるのは「ボッチャ」。
「地上のカーリング」とも呼ばれるこの競技。前回リオ大会ではチーム戦で銀メダルを獲得、東京での活躍が期待される。
そして今回、番組では金メダル候補の最右翼、3つの世界記録を持つ水泳、木村敬一選手と4つの世界記録を誇る陸上、佐藤友祈選手を特集。世界記録を持つ2人ならではの調整法が明らかに。
ワールドレコードホルダーの今に迫った。
7月下旬、東京。
来年のパラリンピックへ向け、合宿を行っていた世界記録保持者。
全盲のスイマー、木村敬一選手。
視力のない木村選手、泳ぐときはコースロープに触れながら。ターンやゴールは「タッパー」と呼ばれる補助員にタッチで教えてもらう。
木村選手の強化ポイントは「スタミナ」。
そのため練習には秘密兵器が…実はこのプール、室内を低酸素状態にキープすることが出来るため、高地トレーニングと同じ効果が得られる。
木村選手はパラリンピックに3大会連続出場、合計6個のメダルを獲得している。
木村「リオまでの4年間は自分の中でもがんばったつもりだった。それでも(金メダルに)届かなかった。今まで以上のことをやらないといけない。そのなかで考えたのが海外での練習」
2018年、木村選手はまだ手にしていない金メダル獲得へむけ、アメリカへ練習拠点を移した。指導を仰ぐのは2人の金メダリストを育てあげた名コーチ。課題であるスタミナ強化のために使うのが「パワータワー」。腰にロープをつけて泳ぎ、水を入れたバケツを引き上げる。体に負荷をかけ心肺機能と筋力を高める。
東京へむけ、アメリカで練習を続けていた木村選手。しかし、新型コロナの影響でやむなく帰国。気になる近況を木村選手に聞くと。
木村「3月20日頃にアメリカから日本に戻ってきた。アメリカは感染が広がっていた。トレーニングもできる状況ではなかった。自粛期間で実家に戻ったりもしながら、今は東京のナショナルトレーニングセンターで引き続きアメリカのコーチから練習メニューはもらいながら自分一人で練習をしている」
実は木村選手には世界記録保持者ならではの独自の調整法がある。
ピークを合わせるのに重要なのは、スタミナ、スピード、疲労、3つのバランス。スタミナとスピードを最大限にし、疲労を最小限にすることでベスト記録が期待できる。一般的には、2か月ほどの期間を3つに区切った練習メニューで調整する。
しかし、木村選手の場合、普段の練習からスタミナ強化とスピード強化を同時に行っているため、長期的な調整は不必要。ピーキングに必要なのはたった2週間、疲労の管理のみ。
木村「僕はいつでもレーススピード出せるし、そのトレーニングはしている。疲労はたまるので疲労を抜かないとレースではスピード出せない。疲労を抜くのは大事。疲労を抜くと持久力が落ちるのでそれを落とさないようにする」
木村選手のこの方法は長年の経験から培われたもの。
そんな木村選手が世界記録を持つ3種目は、残念ながらパラリンピックで実施対象外。東京での本命種目は100mバタフライ。去年の時点で世界記録に百分の5秒まで迫っている。
木村「予定では東京パラリンピックの前に(世界新を)出しておくつもりなんですよ。たぶんパラリンピックでは緊張する。心身ともにベストな状態で迎えられるわけがない。自信をもってスタート台に上がるためにも世界記録は出しておきたい。(本番まで)大会がいくつあるかわからない。一つでもあればそこで世界記録を出すつもりでいます」
東京パラリンピック1年前、目指せ!世界記録更新スペシャル。
続いては…パラ陸上、車いすクラスで4つの世界記録を持つ佐藤友祈選手。
佐藤「(練習拠点の)岡山県はいまでこそ(8月初旬)感染者増えていますけど、以前は少なかった。練習に関しては通常どおり競技場が使えていた。コロナが言われ出したのが1月2月の頃。延期か中止になるだろうなと思っていた。すぐ切り替えてトレーニングすることができていた。モチベーションとしては1年延期になったけど1年後、新国立で世界記録出せる走りに待っていかないと」
前回のリオ大会、2つの金メダルをあとわずかで逃した佐藤選手。栄光を掴んだのは当時の世界記録保持者・マーティン選手。
最強のライバルに勝つため佐藤選手が磨いたのは「中盤の加速力」。
ポイントとなるのはコンパクトなこぎで、回転数の多い走法。
その理由は佐藤選手の障害にあった。握力が弱く、腹筋のきかない佐藤選手は腕を振りぬくと戻ってこぎだすまでのロスが多い。そのため小さなこぎでロスを少なくし、回転数を増やしている。
さらにもう一つ、佐藤選手の走りには大きな秘密がある。
佐藤「リズムです。こぐときのピッチの安定したリズム。実際、他の選手がやろうとしても疲れてきたら一定のリズムをキープすることができなくなってくる。僕は例えば60分こぎ続けるとなってもリズムは変わらず一定のピッチでこぎ続けることができる」
中盤の加速力に磨きをかけた佐藤選手。
すると、リオから2年後の2018年。ライバル、マーティン選手が持つ400メートルと1500メートルの世界記録を更新。
翌年には800メートルと5000メートルでも世界新をマークすると、11月に行われた世界選手権では2種目で金メダルを獲得。東京パラリンピック出場が内定した。
陸上の車いす種目で世界新記録での金メダル獲得を狙う佐藤選手。そこで気になるのは1年後に向けたコンディションづくり。
佐藤「ピークを合わせるのが来年になった。大会も今年、公認レースがない状態。9月に予定されているレースにむけてピークを合わせていく。そのあとのピークは8月のパラリンピック本番」
東京パラリンピックでは自身のもつ世界記録の更新を狙う佐藤選手。
佐藤「400mは55秒を切りたい。1500mは3分23、22くらいで行けたらいいな。トレーニングを日々怠らずにやっていくこと、僕の場合恵まれていてトレーニングが普通にできている。このままの調子でいけたら問題ない」