放送内容
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2020年7月12日
去年3月、プールサイドで涙を見せた、水泳・一ノ瀬メイ。
一ノ瀬「選考会は派遣標準を切らないと意味がない。どうやって次に向けて切り替えるか模索したいと思う。(日本代表として)チームのみんなといけないのがすごい寂しい」
そんな彼女が、再起を賭けて向かったのは…水泳大国・オーストラリア。
今年の選考会が、新型コロナウイルスの影響により中止に…。リベンジの機会を失った。
逆境にも前を向く23歳・一ノ瀬メイ。
そのあくなき挑戦を追った。
今年3月。東京への代表入りをかけた選考会が新型コロナウイルスにより中止となった。
一ノ瀬「いいトレーニングをつめていたので、やってみないと分からないけど、ある程度自信はありました」
パラリンピックも1年延期となったいま…
一ノ瀬「自分の実力というよりは、スポーツができる状態ではないってことは明らかでしたし、オリンピックやパラリンピックより人の命や健康の方が大事だって分かってますし。アスリートではなく一人の人として自分の周りの人の健康を第一に考える時間をもらえたので一番はほっとした」。
先天性の障がいにより、人よりも右腕が短い状態で生まれた一ノ瀬選手。小学生のころ、その障がいを理由にスイミングクラブの入部を断られた。
その後、家族でイギリスへ。そこで暮らした経験が、彼女の心境に大きな影響を与えた。
一ノ瀬「ちっちゃい時イギリスで、障がいのある人もない人も一緒に練習しているのを見て、それを日本でも広めたかった」
帰国後、史上最年少の13歳で出場したアジアパラ競技大会。みごと銀メダルに輝いた。
今では「水のプリンセス」として人気・実力ともに、パラ水泳界期待の選手に。
母校の近畿大学水上競技部は、これまで入江陵介選手や寺川綾さんなど数多くのメダリストを輩出してきた名門校。
指導する山本貴司監督もその一人。アテネオリンピックの200メートルバタフライで銀メダルを獲得した実績の持ち主。
そんな名門校で史上初のパラスイマーとして入部した一ノ瀬選手。
2018年のアジアパラ競技大会では出場8種目すべてでメダルを獲得。国内トップクラスの選手へと成長した。
そんな彼女のストロングポイントは…
「左右にブレない力強い泳ぎ」
腕の長さの違いを克服する、卓越したバランス感覚。
水泳では基本の泳ぎとされる、クロール。
一ノ瀬選手は両腕の長さが違うにも関わらず、まっすぐ泳いでいる。両腕を同じように回すと、「左右のタイム差」が生じる。そしてその「差」がバランスを崩す原因に。
一ノ瀬「右手を回したら早く回る分前で止める。左手は後ろまでかくと長すぎるので出来る限り前で1回(水を)かいたらすぐ抜く」
さらに、左右にぶれないこの泳ぎはクロールだけでなく、バタフライでも…。
バタフライのポイントは『右手は一緒にかかず少し待つ』。
左右にブレない安定したフォーム。
その裏には、両腕の長さの違いを克服する卓越した技術があった。
自慢の泳ぎを武器に挑んだ、4年前のリオパラリンピック。
日本勢最多の8種目に出場するも個人種目は全て予選敗退…。
悔しさをバネに、さらなる成長を胸に刻んだ一ノ瀬選手…。
しかしその後、タイムが思うように伸びず、強化指定選手から外されてしまった。
再起をかけて向かったのが水泳大国オーストラリア。そこでは、以前から親交のあるリオの金メダリスト・片足のスイマー、エリーコール選手たちと練習を共にした。
アスリートにとってもっとも重要な「勝負する」という気持ち。技術だけでなく、心境にも大きな変化があった。
そして挑んだ、去年の「パラ水泳春季記録会」。
世界選手権の日本代表入りをかけた大事な大会。一ノ瀬選手は得意の100メートルバタフライに出場。
タイムは1分12秒03。
自己ベストは更新したものの、世界選手権の派遣標準タイムには届かなかった。
試合後、悔しさからプールサイドで思わず涙する姿が。
大会後はオーストラリアに拠点を移し、さらなるフォーム改善に取り組んだ。
そこから半年後の9月…。
再び特訓の成果を試せる絶好の機会、ジャパンパラ。
前半から力強い泳ぎで日本記録ペース。
記録は1分11秒20。
自身の持つ日本記録を更新し、派遣標準も上回った。
一ノ瀬「ここで自己ベストを出さないと何も始まらない。ここで自己ベストを出せたのは自信にもつながるし、これからももっともっと更新していきたい」
課題を克服し、進化を遂げた一ノ瀬選手。
次の目標はプールサイドで人目をはばからず涙を流したあの春季記録会。
次こそは結果を出せるよう再びオーストラリアで自らを磨く。
去年12月、オーストラリアから一時帰国していた一ノ瀬選手は母校・近畿大学にいた。
後輩たちと共に休むことなく、ひたすら泳ぎ続ける。
記録会へ向け、充実した練習を行う一ノ瀬選手。
しかし、そこで思わぬ事態が…。
新型コロナウイルスにより、3月の記録会が中止に。さらに、練習拠点のプールも閉鎖されていた。
オーストラリアでも外出が制限されるなか、ウエイトトレーニングなど家でできることを探し、強化してきた。
練習拠点のプールが閉鎖され、練習はどうしているのか?
一ノ瀬「海が近いのでそれは最大限活用しないともったいないということで、海での練習を週に二回くらい行なってました。もちろん、プールみたくまっすぐ泳げない、海水で体が浮いてしまう、波があるとか最初は慣れなくてすごい怖かったけど、水に触れられる環境があるのはラッキーだった」
現在はプールも再開し、無事に練習ができているそう。
さらに自粛中、ある勉強も始めたそう…
一ノ瀬「自分の食べてるものを見直す意味でも、栄養学を勉強したりなので動物性食品を取らない、ビーガン料理を探究してやってます」
その影響で、新たに始めた趣味というのが家庭菜園。
一ノ瀬「ほうれん草・小松菜・チリ・カリフラワー・バジル・インゲン豆・トマトだと思います。思った以上に成長が早くて、すごいことになってるから手入れしようと思ってました」
東京パラリンピックへ向け、オーストラリアで練習に励む、水泳・一ノ瀬メイ選手。
最後に東京への意気込みを。
一ノ瀬「東京パラリンピックが開催されれば、一生に一度の母国開催になると思うので、パラリンピックを楽しむコツは活躍することとリオで学んだので、母国開催のパラリンピックを目一杯楽しめるように今から実力をつけていきたい。」