放送内容

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第216回 柔道 廣瀬順子&北薗新光

2020年6月21日

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、1年の延期が決まった東京パラリンピック。これまで多くの選手に密着してきたストロングポイント。選手たちは今どのようにして過ごしているのか。
今回は、日本のお家芸ともされる柔道でメダルが期待される選手たちの今をリモート取材。
明かされた厳しい現実。
逆境を乗り換えるための秘策とは?
日本勢金メダルゼロに終わったリオパラリンピック。
悲願の金メダルを目指す柔道家たちのこれまでの歩み、さらに、自粛中の最新練習法にも迫る。

東京パラリンピックの金メダル候補。
まずは、前回のリオ大会で銅メダルを獲得した女子57キロ級・廣瀬順子選手。男子日本代表、そしてコーチでもある夫の悠さんと共に、この夏の金メダルを目指してきた。

順子「今年8月に向けてずっと調整してきたので、延期になったのはとても残念ですが、明確に時期も決まったので、これからそれに向けてまた頑張っていきたいと思っています」

廣瀬選手が柔道を始めたのは、小学5年生のとき。
高校では県の代表としてインターハイにも出場。
しかし、大学進学後、10万人に2人の難病「成人スティル病」を発症。完治したものの両目の視力を、ほぼ失った。
それでも柔道への情熱は消えることなく、視覚障害者柔道を始めると、国内では敵なしの存在に。
廣瀬選手を初めて取材をしたのは、リオパラリンピックを目前に控えた2016年3月。地元、愛媛県にある柔道の強豪校で健常者とともに稽古に励んでいた。
2015年に結婚、新婚ホヤホヤだった廣瀬夫婦。
共に視覚障害者。
夫婦二人三脚で進化を遂げてきた廣瀬選手は初出場のパラリンピック、リオ大会で銅メダルを獲得。この活躍についてコーチの悠さんは。

悠「まだ2人でやりだして1年なので、あれで3位になれるのなら、4年後には余裕で金メダル取れるだろうというぐらい伸びしろがあります」 

その言葉通り、廣瀬選手の勢いは止まらず2018年のワールドカップでは日本女子初となる金メダルを獲得。
世界ランキング2位まで浮上した。
しかし、東京での金メダル獲得には倒さなくてはならない強力なライバルが。
世界ランキング1位、トルコのチェリキ・ゼイネプ選手。
国際大会で金メダルを総なめにしている最強女王。
対戦成績は3戦3敗。

順子「彼女自身がすごく多彩な技を持っていて、自分自身がそれに対応しきれていないのが敗因」

最強女王を倒し、金メダルを掴むために廣瀬選手は秘策を講じていた。
金メダル獲得への秘策、1つ目は・・・

悠「従来は左で順子が組んでいて、低い背負いで投げてそのまま押さえ込み、順子のスタイルだった。いまは左の技、“大内刈り”だったり“内股”の技の練習をしています」

小柄な体格を生かした低い一本背負いで、勝利を重ねてきた廣瀬選手。ところが、ライバルに研究し尽くされ対策が必要となっていた。
そこで、技のバリエーションを増やし、相手を惑わすことで得意の一本背負いがかかりやすくなる。

金メダル獲得への秘策、2つ目は・・・

悠「順子さんはずっと攻めていたので、逆に守りが弱かったので、僕の守りを教えて守りと攻めが混合しているようなスタイル。パワーに頼らない攻撃柔道とパワーに頼った防御と2つに」

廣瀬選手のストロングポイント「パワーに頼らない攻撃柔道」。
そんな攻撃スタイルを活かすための防御とは?
相手を力で押さえつけ、技を封じ、自分の有利な体勢に持ち込む。

悠「技もかけられるから投げられるのであって、かけさせなければ勝てる。それが防御」。

しかし外国人選手の動きを封じるには、かなりの力が必要。
そのために行っているのがハードなウエイトトレーニング。柔道で必要な筋力を合理的に鍛え上げる。

そして今、対策はどうなっているのか?

順子「今道場がないので対策は進んでいないんですけど、家で悠さんと道着をきて打ち込みしたりしかできていない。再開できるようになった時にしっかり道場で練習ができるようにしています」

金メダル期待の柔道選手。
続いては、パラリンピック2大会連続出場の北薗新光選手。
実は異色の戦歴の持ち主。
2012年のロンドンパラリンピックには100キロ級で出場し、7位入賞。
続くリオパラリンピックではなんと30キロ減量。73キロ級で出場し、5位入賞。
さらに翌年、2017年のワールドカップでは81キロ級で銅メダルを獲得。
度々の階級変更にはある理由が。

北薗「太りやすい・・・身体能力では100キロは無理があると思い、減量することを決めました」

現在はベスト体重の81キロ級で東京の金メダルを目指す。
北薗選手が柔道を始めたのは5歳の時。
夢はオリンピックの金メダル。
テレビで観た谷亮子選手の活躍がきっかけ。
高校は兵庫県の強豪、育英高校に進学。
柔道に打ち込む北薗選手だったが、次第に視力が低下。大学進学時にはほとんどの視力を失った。
2010年、視覚障害者柔道へ転向。
2017年のワールドカップでは銅メダルを獲得した。
そんな北薗選手を初めて取材したのは、2017年11月。
練習場所は日本一にも輝いた経験のある強豪、兵庫県警柔道部。
日本でもトップクラスの環境で、健常者と共に汗を流していた北薗選手。
彼のストロングポイントは「変幻自在の連続技」。
研ぎ澄まされた感覚を頼りに相手の意表をつく技を次々とかけ続けていく攻撃スタイル。
そこには3つの強さの秘密があった。

強さの秘密、1つ目は「反射神経」

北薗 「技をかけた、避けられたじゃあ、相手の体重がどこにかかっているのか、考える前に体が勝手に動くことができるんですよね」

考える前に体が動くことが勝利のカギ。

強さの秘密、2つ目は「組み手で負けない筋力」。

北薗「外国の選手でも力で勝つぐらいの筋力が欲しいなって思ったんで、専門的なパーソナルトレーニングに行ったらどうなるんかなと思って、行くようになった」

パーソナルトレーナー指導のもと、筋力アップに励む日々。
鍛え上げた筋力で、組み手争いを制し、自分の攻撃にうまく繋げられるようになった北薗選手。

強さの秘密、3つ目は「左手の探知能力」。
左手の探知能力でかけられた技を把握し対応。さらに、防御の後、すぐ攻撃に転じるのが北薗選手の超攻撃柔道。

そんな北薗選手に、実は今年4月嬉しい出来事が。

北薗「第二子が誕生したので 柔道強くなって、人間性も強めたい!」

1年後の東京パラリンピックへ・・・
夫婦二人三脚で進化を遂げてきた廣瀬選手。そして、2児のパパとして東京へ挑む北薗選手から、最後に力強い意気込みが。

廣瀬順子「一年延期になっても二人の目標は変わらないので、今できることを精一杯頑張って、金メダル獲得を目指して精一杯頑張っていきたいと思います。悠さんはどうですか?」

廣瀬悠 「1年強くなる期間を与えられたと思って、順子さんと一緒に頑張って二人で出場したいなと思います」

北薗「東京パラリンピックで金メダルを目指します。上田さん、二人の子を持つ父としてしっかり頑張るので応援宜しくお願いします。」

上田「柔道は日本のお家芸なんて言われて期待も大きいし、プレッシャーも大きいかもしれませんが、そのプレッシャーを楽しみつつ、いい結果を出してくださいね。」

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