放送内容
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2020年8月16日
今回、番組が焦点を当てたのは、パラアスリートたちがストロングポイントを発揮するための重要人物たち。
これを見ればパラスポーツの試合がさらに楽しめる。
「実はすごい!パラアスリートを支える裏方さんスペシャル」。
目が見えていないのにドリブルや華麗なシュート。
視覚障がいの選手で争われるブラインドサッカー。
障がいの差をなくし公平性をきすために選手はアイマスクを装着。5人制でフィールドプレーヤーは4人。ゴールキーパーのみ目が見える選手が務める。ピッチはフットサルと同じ広さ。サイドにはフェンスがあり、ラインを割ることはない。ボールには特別な仕掛けが・・・この音を頼りにプレーする。
そんな選手たちの活躍に欠かせない裏方さんがいる。
ゴールの裏から声で選手に指示を出す『ガイド』と呼ばれるスタッフ。指示を出していた『フリーバードメジロダイ』のガイド、高橋めぐみさんに話を聞くと。
高橋「攻撃に関する指示を出すことが多いんですけれど、ゴールまでの距離であったり角度であったりせめてくるときに相手の守備陣がいるので相手の守備陣の状況であったり味方の選手がどこにパスを出せる状態でいるよとかいないとか、そういったことを伝えてますね。」
フリーキックの場面ではどのような指示を?
高橋「フリーキックだと直接ゴールを狙うこともできたりもするのでゴールのサイズ感とかを音で選手に知らせていて、フリーキックであれば壁の位置や枚数を伝えています。」
続いて、車いす同士のぶつかり合いが唯一許されているパラリンピック競技。車いすラグビー。
その衝撃で試合中、タイヤがパンクすることもしばしば。そんなとき、活躍する裏方さんがこの人。
日本代表のメカニック、三山慧さん。
衝突によるパンクや部品の修理など試合中に起こる車いすのトラブルに対応し、整備してくれる欠かせない存在。
さらに、木村選手が活躍する水泳の全盲クラスではターンやゴールの際に、欠かせない裏方さんが・・・
棒で体を叩き合図する『タッパー』。
木村選手のタッパー寺西さん。タイミングよく合図することで壁の位置を知らせ、理想的なターンやゴールを可能にしていた。
次に紹介するのは、目の見えない選手が助走してジャンプする走幅跳の全盲クラス。
日本のトップ・高田千明選手は2016年のリオパラリンピックで8位入賞。2017年の世界パラ陸上では銀メダルを獲得した、東京パラリンピックの金メダル候補。母でもある高田選手は、包丁さばきもお手の物。
そんな高田選手が競技をする上で、目となりサポートするのが、手拍子で指示を出す、元オリンピック選手でコーチの大森盛一さん。目の見えない高田選手に踏み切りのタイミングを伝える『コーラー』を務めている。
全盲クラスは健常者の走幅跳と比べ、踏切エリアが広く1mもある。計測は、つま先からなので踏み切り位置をシッカリ守れば、飛んだ距離はロスなく計測される。しかし、いくら歩数が合っていても全盲の場合、まっすぐ走るというのが難しい。踏切エリアや砂場まで入らなければ制限時間1分の間、何度でも助走をやり直すことができる。
試合では選手たちの大ジャンプを支える裏方さん、コーラーにも注目。
視覚障がいの選手が42.195キロを走りぬく、ブラインドマラソンにも欠かせない裏方さんがいる。
東京パリンピックでの活躍が期待されている道下美里選手。1分間に240歩、つまり1秒間に4歩という驚異的な高速ピッチが彼女のストロングポイント。初出場したリオパラリンピックでは銀メダルを獲得。さらにその翌年には2時間56分14秒の世界新記録を樹立。東京パラリンピックの金メダル候補。
右目は全く見えず、左目は光や色がわずかにわかる程度。
そんな道下選手の隣で並走する重要人物が。
選手の目となりコースの状況を伝えてくれる裏方さん『ガイドランナー』。
選手とガイドランナーをつなぐのは通称『絆』と呼ばれるロープ。
安全に気を配りながら選手と同じ速度で走ることは、かなりの体力と精神力が要求される。そこで、大会でともに走るガイドランナーは途中で交代できるよう二人まで許されている。ちなみにパラリンピックや主要な世界大会では一人のガイドランナーが最後まで走り切った場合、選手と同じ色のメダルがもらえる。
去年、ブラインドマラソンの道下美里選手は初めて東京マラソンに出場。3万8000人ものランナーが参加する東京マラソン。道下選手のように目が見えない選手にとっては人の多さは衝突や転倒のリスクが大きくなる。そこで、ガイドランナーの堀内さんは…
堀内「左向いて、前安全です。前広いよ広いよ。」
まわりの歓声に負けない大きな声を出すのにはもう1つ理由が。大きな声で指示を出すことで周りのランナーに自分たちの位置を知らせ、ルートを確保していた。
そして、レースを大きく左右するのが給水。健常者の場合でも取るのが難しい、マラソンの生命線となるポイント。果たして道下選手は、ガイドランナーがドリンクをとり、ロープを持っていない手で受け渡し。無事給水をとることができた。
多くのランナーの中でも選手の目となり、安全にゴールへと導く。様々な局面でサポートする裏方さん、ガイドランナーにも注目。
手や足の代わりとなり、パラアスリートを支えてくれる義手や義足。これらを制作する、重要な裏方さんたち。
『義足の仙人』と呼ばれる人がいるという噂を聞き、荒川区のある施設にやってきた。
こちらが噂の人、臼井二美男さん 64歳。
『義肢装具士』と呼ばれる裏方さん。
走高跳の鈴木徹選手をはじめ、数多くの義足アスリートをパラリンピックに送り出し、2000年シドニー大会から5大会連続でパラリンピックに同行。この道36年の大ベテラン普段はここ義肢装具サポートセンターに勤務。義足、義手、装具合わせて年間7000件を制作。リオパラリンピックの銅メダリスト、重本沙絵選手の義手は臼井さんが手がけた。
現在30人の義肢装具士が在籍、そのトップが臼井さん。義手や義足は患者や選手の状態に合わせてすべてオーダーメイド。まずは患者の足型に合わせ、石膏で模型を作る。それをもとにプラスチック樹脂でソケットを作り、数あるパーツの中からあったものを選び、組み立て。実際に履いて、微調整を繰り返し完成する。
臼井さんが陸上競技に携わったのは今から30年ほど前。
長年、義肢装具士をされてきてやりがいを感じるのは、どんな時なのか?
臼井「例えば30mを気持ちよく走れたときとか、結構みなさん感動してくれて(足を切断してから)走ることをあきらめている人が多いですから。中には泣いちゃう人もいるくらいね涙を流すくらい。そこがすごくうれしい瞬間というかやりがいを感じますね。あとは鈴木くんのように晴れ舞台ですね、世界の晴れ舞台のパラリンピックのグランドに立ったときですよね。パラリンピックのステージに立った姿を見るのがすごくやってきてよかったと感じますね。」
競技用だけではなく、日常用の義足も日々進化しているという。
臼井「コンピューターが義足の中にはいってきたんですよ。それがこの30年間ですごく進歩して。歩く力は本人の力なんですけども、コンピュータがアシストしてくれて」
膝の部分に入ったマイクロコンピューターが歩く速度に合わせて油圧を調整。膝の軟らかさをリアルタイムで変化させ、より自然に歩くことができるようにしている。
この最新技術で、中腰や下り坂など、今までの義足では難しかったシチュエーションでも転倒しにくくなったそう。さらに。臼井さんは新しい義足を制作。美しさやかっこよさなどファッション性を重視した義足を1からデザイン。義足へのイメージを変えたいという想いから義足のファッションショーを始めた。
臼井「障がいそのものを隠している人がたくさんいますよね。隠すんじゃなくてこの足は自分の足なんだと自信を持っていただいて。自分の体にまだ受け入れられない、そういう人が少しでも前向きな気持ちになれるように、そういうところに突破口を見いだせればなと思って。」
戦っているのは選手だけではない。パラアスリートの側には、必ず頼りになる裏方さんの存在があった。選手の輝きを増す、彼らの働き、今度パラスポーツを観るときはぜひ、裏方さんの活躍にも注目してほしい。