放送内容
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2020年8月23日
今年8月、富山県魚津市。
ここに東京パラリンピックで活躍を期待される選手の姿が…
車いすバスケットボール、岩井孝義選手。
新型コロナウイルスの影響で利用できなかった体育館やジムも、5月にようやく再開。
車いすバスケットボール日本代表として活躍する岩井選手。
2018年の三菱電機ワールドチャレンジカップでは全勝優勝に貢献。攻守に渡る活躍をみせ、ベストプレーヤー賞を受賞した。
日本代表にまで上り詰めたのは尊敬する「ある先輩」の言葉と、家族の支えだった。
東京で悲願のメダル獲得へ。
さらなる高みを目指す24歳の進化に迫った。
岩井選手の取材を始めたのは今年2月。
北陸の港町。富山県魚津市へやってきた。
現在、富山を拠点とするチームに所属する岩井選手。
練習場までは、30分かけて母・幸子さんの運転で向かう。
働きながら岩井選手を育ててきた幸子さん。送り迎えも日課となっている。
さらに、妹の文香さんは岩井選手が所属するチームのマネージャーとして、練習のサポートをしている。練習や遠征の時など、常にチームの一員としてバックアップしている文香さん。練習中もタイムキーパーを務めるなど、率先して動き回る。
岩井選手が東京オリンピックを目指す原動力のひとつ。それは家族への恩返し。
96年。富山県に生まれた岩井選手。
幼い頃は運動が苦手でゲーム好きの子供だった。身体の異変を感じたのは、小学校6年生の時。
診断の結果は…脊髄のがん。手術の後遺症により車いす生活になった。
岩井「僕の場合バラバラなんですけどみぞおちから下は感覚があったりなかったり腹筋背筋の機能もあまりしていなくてそういった意味では術後は驚きました。」
そして、リハビリの一貫で勧められたのが車いすバスケットボール。
しかし…
岩井「最初体育館に入ってスピード感がすごいなって思ってたんですけど、実際にやってみてシュートも届かないですし、パス練習やるぞって体育館の外でやっていたんですけど、一発でパーン。突き指しちゃってもうやりたくないって思いましたね。」
そんな岩井選手が日本代表にまで登りつめる転機は15歳の時。
きっかけとなったのは、宮島徹也選手。現在、岩井選手と同じチームに所属し、キャプテンも務めている。
宮島選手は過去3度、パラリンピックにも出場する日本を代表する選手。
岩井「初めて遠征についていく機会がありまして『お前も頑張ったらU23日本代表になれるよ』って言われてそこ目指して頑張ってみようかなっていうのがきっかけで練習に真剣に取り組むようになりました。」
車いすバスケットボールではダブルドリブルのルールがなく何度でもドリブルができる。そして一番の特徴が、障害の程度によって、各選手に持ち点が設定されているということ。障害が最も重い選手は1.0。そこから0.5点きざみで最高4.5までの持ち点がある。試合では、障害の軽い選手から重い選手まで平等に出場機会が与えられるよう、チームの持ち点が14点以内と決められている。
岩井選手の持ち点は1.0。一番障害が重くローポインターと呼ばれている。一方、障害が軽い3.0以上の選手がハイポインター。
一般的に障害が軽いハイポインターの役割は、攻撃。持ち前のスピードを生かし、得点を稼いでいく。一方、障害が重いローポインターが主に活躍するのが…ディフェンス。ハイポインターを相手にパスやシュートを防ぐのがメイン。
そんな岩井選手のストロングポイントが…
「相手を翻弄する常識外のプレー」。
ローポインターの枠に収まらない岩井選手のプレーとは?
岩井選手の強さについて、チームメイトであり、日本代表でも共に戦う宮島選手に聞くと…
宮島「(障がいの重い)1点の選手はスピードが遅いイメージだったんですけど彼は間違いなく世界でトップスピードのある選手でそのスピード力はすごいと思いますね。」
岩井選手の常識外のプレー、その1…「スピード」。
障がいの軽いハイポインターの宮島選手に引けを取らない瞬発力。素早いディフェンスで進路を塞ぐ。
そのスピードを磨くため、普段から行っているのが負荷をかけた走り込み。
岩井選手の常識外のプレー、その2…シュート。
一般的に、ディフェンスが中心のローポインターだが、岩井選手はシュート力も高い。岩井選手はチーム練習とは別に週4回の個人練習をしている。さまざまなシチュエーションを想定し、ひとり黙々とシュートを打ち込んでいく。
そして、岩井選手のようなローポインターが、特に難しいのが…レイアップシュート。障害により体幹が効かないため、バランスを取ってシュートするのが難しい。
ローポインターの岩井選手がここまでシュート力を磨くには、ある理由が…
岩井「強い選手にディフェンダーが集まっていくのでぽつんと空いて、相手の打たせるっていう作戦なのかもしれないですけど、そこで決めだされるとめんどくさいなってぼくもディフェンスをしてて思うので」
攻守に渡り相手を翻弄するプレーをする車いすバスケットボール岩井孝義選手。
現在、抱える課題が…
岩井「世界と戦っていくには筋力もパワーも必要になってくる部分もありますしそういった意味で筋力トレーニングは継続していかなければならない課題でもあります。」
そのため、取り組んでいるのが週4回のウエイトトレーニング。下半身に麻痺があるため、腕周りを中心に強化している。
東京パラリンピックへ向け、進化を続ける岩井選手。
しかし…新型コロナの影響で練習がストップ。その期間はどのように過ごしていたのか?
岩井「コロナによって接触をする練習が全くできなかったので自宅近くの坂道でダッシュの練習やこういったダンベルで筋トレをしたり、チューブを使って体幹のトレーニングをして体力や筋力が落ちないようにトレーニングを重ねていました。」
1年の延期となった東京パラリンピック。
岩井選手が東京パラリンピックへ懸ける思いとは。
岩井「コロナの影響で東京パラリンピックが延期になってしまいましたがモチベーションは変わらず、逆に1年成長できる時間ができたと今は思っています。1日1日を無駄にせず努力していきたいと思いますし、日本代表メンバーに入り、その先にあるメダルという目標に向かって頑張りたいと思います。」