放送内容
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2019年10月20日
ゴールボール、安室早姫。
視界を遮り、音のみを頼りに戦うパラスポーツならではの競技、ゴールボール。
日本は2012年ロンドンパラリンピックで金メダルを獲得。
しかし連覇を目指したリオでは5位。
王座奪還のために、東京パラリンピックでの活躍が期待される安室選手。
彼女には誰にも負けない武器がある。
「ヒントを逃さない聴力」
どんな些細な音でも正確にキャッチ。見えない相手の動きを瞬時に察知し、攻守でチームに貢献する。
その聴力を生んだ意外な出会いとは?
来年の東京で金メダルを目指す26歳、若き日本代表候補に迫る。
埼玉県所沢市にある体育館。
こちらでゴールボールの日本代表合宿が行われている。
ゴールボールのコートはバレーボールと同じ大きさ。
両陣にはゴールを設置。攻撃と守備を交互に行い得点を競う。
また公平を期すため選手全員がアイシェードという目隠しを着用。同じ条件で競技を行っている。
使用するボールには鈴が入っていて、この音を頼りにボールの方向や速度、弾み方を予測しゴールを守る。
また、境界線を示すラインにも仕掛けが。ラインの下にタコ糸が。選手たちはこの糸を触って現在地を確認する。
さらに、攻撃では相手を惑わすために、手を叩いたり足音を立てて、ポジションチェンジすることも戦略の一つ。
ちなみに、投げたボールは攻撃側エリアとニュートラルエリア両方にバウンドさせなければ反則。
またマイボールになったら、10秒以内に投球。攻守交代がめまぐるしいのも特徴。
1993年沖縄県に生まれた安室選手は1歳の頃、病気で両目の視力を失った。それでも、持ち前の負けず嫌いな性格でお姉さんと泥だらけになって遊ぶなど活発な幼少期を過ごした。
そんな安室選手がゴールボールと出会ったのは高校2年生の時。
安室「クラブの顧問をしていらっしゃった先生が体育の先生で、体育の授業の時にゴールボールやってみないかと声をかけていただいて。もともと球技が好きだったので、せっかく声をかけていただいたのでやってみようかなって思ってゴールボールはコートに入っている選手は全員みえていないので、自分自身の力で鈴の音を聞いて、ボールを止められるというのが楽しかったです」
自分の聴力を存分に発揮できるゴールボール、始めてすぐに運命的な出来事が。
安室「日本選手権があってただそこに出るために選手が足りないということで、そうそうに日本選手権大会に出ることになって」
初めての試合は10対0、大敗。
安室「この一球は絶対に止めたいって思ったんですけど止められなくて悔しくて、あのボールを全部止められるようになりたいと思って本格的に続けようと思いました」
悔しさをバネに大きな飛躍を遂げた安室選手。
今では日本代表期待の選手の一人。
まるでボールが見えているかのような鉄壁のディフェンス。
どのように反応しているのか?
ゴールボールでは選手間の距離はおよそ12m。
そこで重要なのは・・・
安室「サーチ力です。相手コートのどこにボールがあるのか、相手がどこでボールを持って、どういう動きをしているのか。音で聞き取ってボールの投げ出される位置がわかるのでそこから来るボールの軌道をそこから判断して守っている」
この能力のカギの一つは、視力を失った年齢。
日本代表の中心プレイヤー、若杉選手の13歳に比べ、安室選手は1歳。
安室「もともと目が見えていない分、日常生活でも音から情報を得て生活をしているので音に対する敏感さや集中力は見えている人よりも高いんじゃないかなって」
幼い頃から磨きあげてきたという抜群の聴力。
実際、どんな能力なのか?
視覚障がいの選手が行うゴールボール。プレーのヒントとなるのは様々な音。
安室選手は試合中、ボールの音以外、どんな音を聞いているのか?
安室「ラインを確認している音も聞いています。手とか足でこすっているような音も」
12m先から聞こえるささいな音も重要なヒント。コートのラインをこする音まで聞こえている。
安室選手が誇る抜群の聴力。
実は幼少期のある出会いがきっかけで身についたものだそう。
安室「趣味はペンギンを見ることです。形はぬいぐるみを触って知りました。足とかくちばしとか羽とか鳥みたいなのに立っている感じの形がすごい好きです。水族館に行って、ペンギンのところに行ってずっといるんですけど。泳いでいる音とか息継ぎしている音とか、あと陸地を歩いている足音だったりとか、鳴き声とかを聞いて楽しむ。それで聴力が研ぎ澄まされたおかげで、ペンギンの音を聞いてペンギンを感じることができるようになった」
12月にはアジアパシフィック選手権を控える日本代表。
自身初のパラリンピック出場を目指す安室選手。
来年に迫った東京大会への意気込みは?
安室「代表チームの方では常に代表メンバーの選考が行われていて、まずは代表に選ばれたいと思っています。十分にメダルをとる力はあると思うので、後は本番で自分たちの持っている力をしっかりと出し切れるようにしていきたいし、それができれば金メダルをとれると思っています」