放送内容
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2020年9月13日
東京パラリンピック出場が内定しているパラ卓球界のホープ、岩渕幸洋選手。
世界大会を制すること5回。
パラリンピックにも21歳で初出場。
一昨年には、パラ選手として初めて、健常者がプレーする日本卓球リーグに参戦。高いレベルで経験を積むと、去年、パラ卓球の国際大会で2度の優勝。世界ランキングは3位に。
東京でのメダル獲得へ、順調に調整を進めていたなか、新型コロナウイルスの影響でパラリンピックが1年延期に。
ひたむきに前を向き、さらなる高みへ。
飽くなき挑戦の日々を追った。
岩渕選手の取材を始めたのは、今から4年半前。練習環境では、大きな変化があった。
岩渕「リオからの4年は以前は早稲田大学で大学生としてやっていたのですが、実業団のトップチームでやらせていただいて、すごく環境面では大きな変化があった4年になる。普段の練習のレベルは本当に高くて、どんなボールを打っても返せされてしまうという環境の中でやってこれたので、パラ卓球の試合になっても油断せず、作戦はあるんですけど、どんなボールが返ってきても対応していこうという自信はついてきたと思う」
岩渕選手には両足が内側に曲がる先天性の障がいがあり、特に重いのは左足。それでも、幼い頃から水泳や野球、ゴルフなど様々なスポーツを経験。
早稲田実業中等部に入学した時、パラ卓球と出会う。すると、すぐに頭角を現し、数々の大会で優勝。
大学3年で初の日本一に輝くと。翌年、パラリンピックに初出場。
大学卒業後は、健常者のみが所属する実業団の名門、協和発酵キリン卓球部へ。健常者の実業団チームにパラ卓球選手が迎え入れられるのはまさに異例中の異例。
スカウトしたのは、佐藤真二監督。かつては日本男子代表監督などを歴任し、オリンピックの銅メダリスト・水谷選手などの育成に携わった名将。
佐藤監督「2020のパラリンピックでのメダリスト、特に金メダルを取りたいと強く思ったもんでですね。是非うちで叩き直してメダリストではなく、金メダリストにさせてあげたい」
パラ卓球は障がいの種類や程度によって、10クラスに分けられる。1〜5が車椅子、6〜10が立位。
岩渕選手は、比較的障がいの軽いクラス9に属している。
現在、世界ランキングは3位。
その強さの秘密は…「前で戦うこと」。
岩渕選手のストロングポイントは「超攻撃的な前陣でのプレー」。
卓球にはプレーエリアがあり、台の近くの前陣、少し離れた中陣、そして後陣と、大きく3つに分けられる。
その中で、岩渕選手が前陣にこだわる理由とは…
岩渕「男子の選手だと台から下がって大きく動いて、台から距離を取ったフリーになる。そのポジションになると、一番ハンデが出るところ。障がい弱点を強みに変える前陣でのプレーを意識するようになった」
一方、前陣でのプレーは相手との距離が近いため、ボールへの素早い対応が求められる。
勝利のカギは…先手必勝。サーブで仕掛け、相手が崩れたところで一気に仕留める「3球目攻撃」。
この超攻撃的なプレースタイルを生かすため、重要になるのが…「巻き込みサーブ」。そして、この巻き込みサーブを有効に使うためある工夫もしていた。
岩渕「今までは自分の得意な巻き込みサーブっていうサーブをメインに使っていたんですけど、やっぱりそれを研究されて、最後の方に慣れられてしまって、競った場面で効かなくなる試合も増えてきたので、自分のバックハンドでサーブを出すサーブを序盤に使いながら、勝負所で自分の得意なサーブにつなげていく展開。サーブの配球というところも工夫してやってきています」
成長を続ける岩渕選手。
2年前には実業団の日本一を決める団体戦、日本卓球リーグへ参戦。健常者のトップ選手が集まるリーグに、パラ卓球の選手が出場するのは史上初めて。岩渕選手は団体戦の第一試合に出場。相手は全日本大学選手権ダブルスで優勝経験もある宮本選手。
自慢の巻き込みサーブで先制すると。みごと健常者を相手に1ゲームを先取。続く第2ゲームも取り、このまま勝利かと思われましたが、惜しくも敗退。
岩渕「少し競った内容の試合もあって、本当にいい経験をさせてもらったなと思います。これを必ず成長につなげていきたいと思います」
そんな日々の積み重ねが結果となってあらわれ、2年前、9位だった世界ランキングは3位にまで上昇。
さらなる進化へ、岩渕選手が取り組む新たなチャレンジとは?
岩渕「発信力をつけるということでYouTubeチャンネルを開設しました。YouTube見ててパラ卓球を調べた時にヒットする動画が無かったので、検索していただいた時にパラ卓球とはこういうものだと伝わるようなモノを作れたらと思って始めました。」
パラ卓球の魅力を広く伝えるため、2月からYouTubeチャンネルを開設していた。1人でも多くの人にパラ卓球の魅力を知ってもらうべく、競技以外でも精力的に活動してきた岩渕選手。現在、チャンネル登録者数はおよそ800人。動画には練習以外にも、岩渕選手のインタビューや装具の紹介など、選手目線の要素がたっぷり。
新型コロナウイルスの影響で1年の延期が決まった東京パラリンピック。この決定を聞いた時、岩渕選手の心境は?
岩渕「1年の延期は自分が成長できる期間になるのかなというふうなプラスに捉えることができたので、中止という判断にならなくてよかったなと思いました。まだ1位の選手はすごく実力的にも抜けている選手なので10回やって1回勝てればすごくいい。その1回を東京に持ってこられるような、そんな調整をしていきたいなというふうに思っていたので、そういったイレギュラーな状況っていうのも味方につけていきたいと思っています」
外出が制限される中、どのようなトレーニングをしていたのか?
岩渕「緊急事態宣言がでているうちは、所属での練習も中止になってしまったので、その時は1人でできる筋力トレーニングだったり体作りをメインに。」
そして、自粛期間があけた7月。岩渕選手のもとに、嬉しい報告が。
岩渕「東京パラリンピックの出場権も保留になっていた状況。正式に(出場内定を)出していただけたのは嬉しい決定ではありました。」
それは…国際卓球連盟が定めた世界ランキング枠での東京パラリンピック出場内定。
1年後の東京へ…意気込みを聞いた。
岩渕「1年延期になってしまったんですけど、延期になる前から目標は金メダル以上。金メダルを取って、パラスポーツの素晴らしさ、パラ卓球の面白さを伝えていく。東京をスタートにして、パラスポーツが盛り上がっていけるように選手としてやっていきたいと思っています。」