ストロングポイント

毎週日曜 17:30~18:00放送

放送内容

第72回 アルペンスキー 森井大輝

2017年07月01日 放送

ワールドカップ総合チャンピオンに3度輝き、世界選手権では5つの金メダルを獲得した森井選手。ただ1つ彼が持っていないのはパラリンピックの金メダル。ストロングポイント「精度の高いカービングターン」を武器に、2018年 平昌パラリンピックで頂点を目指す森井選手の世界一の滑りに迫る。

森井選手が、バイク事故で脊髄を損傷し、医師から車いすでの生活を宣告されたのは、16歳の時だった。しかし、入院中にテレビで見た長野パラリンピック、同じ障がいを持った人たちが活躍するチェアスキー、その輝く笑顔に出会い、彼の人生は変わった。幼い頃からモーグルやアルペンスキーに親しんでいた森井選手は、チェアスキーを始めてすぐに頭角を現し、2002年にはジャパンパラで見事2位に。そして同年、ソルトレイク・パラリンピックへの初出場。入賞はしたものの、初の大舞台で世界との差を痛感、メダルへの闘いが始まる。ひたすら練習を積み重ね、その後、トリノで銀、バンクーバーで銀・銅を獲得。2012年にはワールドカップで総合優勝を果たし、世界のトップに上り詰めた。

チェアスキーとは、下肢に障がいのあるアスリートのために開発された、座った状態で滑ることのできるスキー。スピードは時速100キロを上回ることもある。
アルペンスキーは、斜面に設置された赤と青の旗門と呼ばれるチェックポイントをすべて通過し、ゴールタイムを競う競技。種目は、高速系の『滑降』『スーパー大回転』、技術系の『大回転』『回転』、そしてこれらを組み合わせた『スーパー複合』。これら5種目の総合成績で争われるのがワールドカップなのだが、森井選手は、今シーズンのワールドカップで何と3度目の総合優勝を果たした。つまり、アルペンスキーに死角無し、名実ともに世界一のスーパーパラスキーヤーなのだ。

森井選手が頂点を極めた理由、それは、チェアスキーでは不可能だとされていた「カービングターン」をものにしたからだ。それまでのチェアスキーの主流は、スキー板をずらす「スキッドターン」で、遠心力がかかり大きく膨らむため、スピードが遅くなってしまう。一方、カービングターンでは、スキー板を立てエッジで雪の表面を捉えるため、スピードを殺さず小さなカーブで素早くターンできる。この、わずかな差だが、幾度ものターンの積み重ねでタイムが伸び、世界で勝ち抜く強みになったのだ。しかし、この武器を駆使し全ての旗門をカービングターンで攻めると、コースアウトや転倒など、致命的なタイムロスが生じるリスクも出てくる。それを避けるべく、森井選手は、柔軟にスキッドターンをも織り交ぜて場面に応じた柔軟な滑りで王座を守り抜いている。
そして、彼を支えるもう一つの秘密が、道具のメンテナンス技術だ。森井選手の身体にぴったり合った希望通りのシートや板。そのきめ細やかなチューンナップは、長年森井選手を支える熟練の担当者たちによってじっくり詰められ、施されている。そして、スキー板の上でバランスを崩さないよう上半身全体の筋肉を鍛え上げる日々のトレーニング。実は森井選手、初めてパラリンピックに挑んだ21歳の頃から体重が16キロも増え、筋力とともにスピードもアップしたのだそうだ。
心技体、そして、道具。出来得る限りの準備を進め、見据える先は7か月後の平昌。今度こそ、悲願の金メダルを!

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