ストロングポイント

毎週日曜 17:30~18:00放送

放送内容

第67回 ウィルチェアーラグビー 池 透暢

2017年05月27日 放送

2016年リオパラリンピックで、ウィルチェアーラグビー日本代表は初の銅メダルを獲得し、新たな歴史を刻んだ。日本代表の大きな得点源は、池選手。彼のストロングポイント=相手のディフェンスを一瞬で切り裂く「正確無比なロングパス」が、幾度となく日本の得点を演出してきた。しかし、彼は銅メダルという結果に満足していない。東京パラリンピックで金メダルを目指す池選手の挑戦を追った。

幼いころからスポーツ万能だった池透暢選手。小学校では野球に、中学ではバスケットボールに打ち込んだ。しかし、19歳の時、交通事故で全身に大やけどを負い、左足を切断。リハビリを兼ねて始めたのが、プレー経験のあるバスケットボールだった。その後、日本代表候補に選出され、ロンドンパラリンピック出場を目指すも、本番前に落選してしまう。失意の池選手の目に飛び込んできたのは、同じ車いす競技であるウィルチェアラグビー日本代表の姿だった。この競技ならバスケットボールの経験が生かせると考えた池選手は、ウィルチェアラグビーへの転向を決意。そして、わずか4年で日本代表のキャプテンにまで登りつめた。

ウィルチェラグビーは、両手両足に障がいを持つ選手たちが車いすで得点を競う球技。試合はバスケットボールと同じ広さのコートで行われ、障害の軽い選手から重い選手まで、さらに、女子選手も一緒にプレーできるのが特徴だ。1チームの選手は4人。障がいの度合いに応じて選手に持ち点が割り振られ、障害が重い選手をローポインター、軽い選手をハイポインターと呼ぶ。 池選手のストロングポイントは「正確無比なロングパス」。この強みを活かす秘密は、受け手の障害の度合いに応じてパスを使い分けるスキルにある。
池選手は、パスの受け手が比較的障がいの軽い「ハイポインター」の場合、バウンドしてから伸びるパスを出す。そうすることで、選手のスピードを生かすことができるのだ。一方、受け手が比較的障がいの重い「ローポインター」の場合は、「遠くにいったとしても、その場所である程度バウンドで停滞してくれるパス、ローポインターがそこに走り込めるようなパス」を投げるのだという。そしてこのパスを支えるのは、積み重ねた鍛錬と磨き抜かれたテクニックだ。

高知県・高知市を拠点にしている池選手。実は高知にはウィルチェアラグビーの選手がほとんどいないため、練習は常に1人。パス練習も体育館の壁の節目を利用したり、コーンやブザーを使って走りこんだりと工夫を欠かさない。ある時は、公園の急な坂道およそ100メートルを猛ダッシュ、30秒で駆け上がったりバックしたりとハードワークを重ねる。パスの技術だけでなく、ランも強化することで、攻防の切り替えが早いプレーヤーを目指す。

千葉県・君津市での大会。池選手率いるチーム・フリーダムが対戦したのは、日本代表の官野選手らが所属するライズ千葉。池選手のロングパスは次々とゴールを演出。8点差で勝利、幸先の良いスタートを切るも、2試合目・日本代表の島川選手らを擁するブリッツに破れてしまう。池選手が目指すパスとランの両方を活かす試合運びは出来たものの、連戦の疲れでチームメイトにキャッチミスが出てしまい、7点差をつけられ敗戦。

リオで味わった悔しさを晴らすため、進化を続ける池選手。「この競技を続ける理由は、金メダルを取ること」だと力強く言う。3年後の東京で目指す場所は、たったひとつだ。

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