ストロングポイント

毎週日曜 17:30~18:00放送

放送内容

第179回 車いすバスケットボール 香西宏昭③

2019年8月18日 放送

車いすバスケットボール日本代表 香西宏昭。
学生時代アメリカで2年連続MVPを獲得。車椅子バスケの世界最高峰ドイツリーグで腕を磨いた日本代表の絶対的エース。彼には誰にも負けない武器がある。
「相手を凌駕するスピード」
一度ボールを持てば、コートの端から端まで一気に駆け抜ける。
相手を凌駕するこのスピードこそが香西選手のストロングポイント。
東京パラリンピックでのメダル獲得を目指し、日本代表が打ち出した独自のスタイル。攻守の切り替えを素早く行い、高さのある相手をスピードで翻弄する「トランジションバスケ」。しかし去年の世界選手権。浮き彫りとなった新たな課題。東京パラリンピックまであと1年、日本の司令塔が見出したメダル獲得への秘策とは?すべては日本代表のために。世界最高峰ドイツリーグで進化を続ける31歳、その挑戦を追った。

今年2月、ドイツ中部の町・ヴェッツラーでドイツリーグ6シーズン目を迎えていた香西選手。
ドイツリーグは、1970年代に創設された世界最高峰の車いすバスケットボールリーグ。選手のプロ契約化が進み、世界各国の代表クラスが数多く在籍している。中でも香西選手の所属チームはヨーロッパ最強クラブの一つ「ラン・ディル」。ドイツリーグ優勝13回を誇り、チームメイトにはリオパラリンピック王者のアメリカ代表をはじめ、世界のトップ選手の姿が。

香西選手のストロングポイントと言えば「相手を凌駕するスピード」。
地面すれすれまでタイヤに触ることで力を長く伝え、爆発的な推進力を生み出している。世界最高峰のドイツリーグでも、自慢の武器は健在。素早い加速で一気に抜け出し…颯爽とゴール。
昨シーズンはチームの得点源として大活躍。
ドイツ最強クラブ決定戦、ドイツカップ制覇の快挙を成し遂げた。

生まれた時から太ももから下がない香西選手。車いすバスケに出会ったのは12歳の時。高校卒業後は単身アメリカへと渡り、車椅子バスケの名門イリノイ大学へ。2年連続でエムブイピーを獲得するなど、当時からずば抜けた才能を発揮した。
その後、ワールドクラスの選手が集うドイツへ。常に世界を舞台に戦ってきた。日本代表では司令塔として長年にわたりチームをけん引。
チャンスと見るや、自らシュートを決める得点源でありながら、相手ディフェンスを崩して味方のゴールを演出する「攻撃の起点」となってきた。

3年前のリオパラリンピック。
日本は初のメダル獲得が期待される中…まさかの9位。
東京ではメダルを…日本が打ち出した新たな戦術、それは…
ボールを奪ったら、すぐさま攻撃。
攻守の切り替えを素早く行い、高さのある相手をスピードで翻弄する「トランジションバスケ」。

リオパラリンピック以降、日本代表はこの「トランジションバスケ」に徹底して取り組んできた。
すると去年行われた世界選手権。
16カ国が参加する4年に1度の大舞台で日本の「トランジションバスケ」が炸裂。国内リーグが盛んなイタリア相手に開幕戦勝利を飾ると。
続く第2戦、ヨーロッパチャンピオンのトルコに対しても…素早いトランジションで圧倒。
予選リーグ1位通過の快挙を果たす。

この快進撃について香西選手は…

香西「色んなチームを苦しめているというのは、確実に感じる事ができたし、今までで1番世界との差が縮まってるのを感じた大会ですかね」

しかし、迎えた決勝トーナメント1回戦。
リオパラリンピック銀メダル・スペインとの戦いで日本の新たな課題が浮き彫りとなる。
最終第4クォーター。
残り1分を切り、2点のビハインド。
日本は23秒を残しタイムアウト。
香西選手のシュートは枠を外れ、2点差で敗れた日本。
心の奥底からこみ上げる想い。
それは司令塔としての責任だった。

突きつけられた課題、「数手先を読むプレー」。
司令塔としての飛躍のカギ、それはドイツにあった。
彼には司令塔として理想とする選手がいる。チームのキャプテン、マイケル・ペーイ選手。リオパラリンピックでアメリカ代表を金メダルへと導いた世界屈指の司令塔。

香西「彼は一緒にバスケットをしていると、多分2手3手先も読みながら動いているように見えるんですよね。僕はすごいそれを習得したいと思っているので、日本代表のためにも」

数手先を読むこのパスワーク。
これこそが日本の司令塔・香西選手、飛躍の鍵。

日本代表が抱えてきた課題。
その一つが守りを固めた相手の崩し方。
海外選手の高さあるマークに苦しめられてきた。
ペーイ選手が実践するエクストラパスを活用すれば日本代表もより確実に得点をあげることが可能となる。

世界屈指の司令塔ペーイ選手を参考にスキルアップを図る香西選手。
今シーズンは、そのペーイ選手に代わり司令塔としての出場機会が増えた。
ドイツリーグで掴んだ確かな手応え。
来年に迫った東京パラリンピックへの思いとは?

香西「どんどん新しいことに挑戦していって、新しい香西宏昭になっていかないと。僕にとって東京パラリンピックは、始まりもしない。チームとしてもどんどん成長していって、金メダルを取るっていうことをここに誓います」

日本の司令塔としてさらなる進化を誓う香西選手。
この夏、彼にとって東京への試金石となる重要な戦いが。

先月、東京・パラアリーナ。
そこにはドイツでの戦いを終え、日本に帰国した香西選手の姿が。
この日は東京都選抜の練習。
実は今シーズン限りでドイツでの所属チームを退団した香西選手。
以前そのワケを語ってくれていた。

香西「もちろんその日本代表との時間を沢山過ごしたいからっていうのが大きいですね。こっちにいるとシーズンで試合があって。それだとこう自分の個人スキルの練習とかって中々とれなかったり、体力アップみたいなこうキツイ追い込む練習とかも中々出来なかったりするので、後は整えていく為には、必要かなと思います」

そんな香西選手に重要な戦いが迫っていた。
三菱電機ワールドチャレンジカップ。
世界の強豪が東京パラリンピックの会場で火花を散らす。
出場国は世界選手権銅メダルのオーストラリアに加え、アジア王者のイラン、長年ライバル関係の韓国と強豪国が揃った。
去年の優勝国である日本。来年の東京パラリンピックに向けて大きなステップとなる大会。

香西「僕たちの目標は優勝になってくると思いますし、去年の世界選手権よりもレベルが上がった僕たちをぜひ見て頂きたいと思いますし、東京2020で金メダルを取るっていう大きな大きな目標に向かう上では、ここで負けていられないっていう。僕たちの責任だと思っています」

ドイツでの戦い経て、さらなる進化を遂げた日本の司令塔・香西選手。
悲願のメダルを東京で…。
その飽くなき挑戦は続く。

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