ストロングポイント

毎週日曜 17:30~18:00放送

放送内容

第177回 陸上 走幅跳 澤田優蘭

2019年8月4日 放送

陸上、澤田優蘭。
去年、走り幅跳びの視覚障がいクラスで、5メートル70を記録。その年の世界ランク1位に輝いた。2020年の東京でメダルが期待されているニューヒロイン。そんな彼女には、誰にも負けない武器がある。

「飛距離を生む加速力」

力強く地面をけり出すことで生まれる走り。
その加速力を生かした跳躍こそが、彼女のストロングポイント。
さらに100メートルの日本記録保持者。国内では敵なしの強さを誇る。
さらなる進化を求め、新たな跳躍法へと挑んでいる。
迎えた6月の大会。その成果は果たして…!?
澤田選手の挑戦を追った。

6歳のころ、網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう)という目の病を患った澤田選手。
進行性の病気で視界の中央が徐々に見えなくなり、現在は、足元や両脇がかすかに見える程度だそう。

幼い頃から運動神経はバツグン。かけっこが大好きだった。
盲学校の陸上大会では、はじめての走り幅跳びで好記録をマーク。
これをきっかけに、競技歴2年目の才で北京パラリンピックに出場。
おととしには日本記録も更新。トップ選手へと成長を遂げた。

澤田選手が出場するのは、視覚障がいの選手たちで争うT12クラス。健常者よりも踏み切りの幅が広く、1メートルの踏み切りエリアが設けられている。
また、このクラスではガイド役で助走や踏み切りのタイミングを知らせることも可能。
ここ2年で、飛躍的に記録を伸ばしている澤田選手。おととしには、日本新記録となる5メートル03をマーク。
さらに去年の大会では、5メートル70と記録を更新。この年1番の記録として、世界ランク1位にも輝いた。
そんな澤田選手の武器は…力強く地面を蹴り出し瞬時にトップスピードへと到達する「加速力」。
走り幅跳びは、助走速度が速ければ速いほど、より遠くへと飛ぶことができる。実は、記録が急激に伸びた要因というのが…2年前から本格的に始めた「100メートル走」にあった。

澤田「足が流れず切り返していけるというのは、100mをやってくなかでわかるようになってきた感覚で」

澤田選手の言う『切り返し』とは…まず、蹴り出した足をコンパクトに折りたたみ、素早く引き戻す。そして、カラダの真下に片足が来たとき、膝がカラダの前に出ている状態。
この左右の足の『切り返し』がスムーズにできるようになったことで、澤田選手の100メートルのタイムは1秒以上速くなった。
現在、澤田選手の走りを指導する塩川コーチ。
二人三脚で取り組んできた…フォームの改造。
これが実を結び、100メートルでも次々と自己ベストを更新。
今年行われた大会では12秒57の日本新記録をマークした。
かつては、独学で競技に取り組んでいた澤田選手。
今では、コーチと共に走りのメカニズムを分析しながら強化をしている。実は…2年前に味わったある挫折が、彼女を大きく変えた。

澤田「2017年に世界選手権がロンドンであってわたしはそこにはなんとか出たいなって思ったんですよね」

しかし…世界選手権への選考基準に到達できず。

澤田「やっぱり技術とか自分には足りないものがありすぎるなっていところでのくやしさがすごいあって、このまんまじゃだめだなっていうのを思ってからフィジカルとか、大きくトレーニング環境をさらに変えたっていうところは大きかったですよね」

そんな澤田選手が目標の選手として挙げるのがウクライナのズブコフスカ選手。6メートル60の世界記録を持つ屈指のジャンパー。

澤田「ずっとパラリンピックではメダルをとっている選手ですし、その人と勝負ができる選手になりたいですね。世界記録も持っている選手なので6m越えても勝てるかってわからないんですけど、っていう勝負のところで6mは越えたいです。やっぱり幅跳びをやっていると6mというのは憧れの記録ではあるので」

目指すは…未知なる領域「6メートル超え」。
それを可能にするべく、武器である加速力を磨きながら新たな跳躍法にも取り組んでいく。

宮崎コーチ「空中動作で足を動かして、シザースっていう跳び方なんですけど」

澤田選手の以前の跳躍。
踏切後…すぐに足を前に投げ出す「抱え込み跳び」という跳躍法。一方、現在、宮崎コーチと取り組んでいる新たな跳躍法が「シザース」。抱え込み跳びは踏切後、すぐに両足を前にそろえ、そのまま着地している。一方、シザースは…空中で走るように両足をかきながら着地動作に入っている。

宮崎コーチ「走った動きが空中でこう結局足をかいて走ってる動作になるのでスピードを殺さない」

助走の勢いを殺さずに跳ぶ、澤田選手の長所をいかした跳び方だった。

さらに、着地にもある効果が・・・
以前の澤田選手の跳び方だと、着地の際、足が早く着きすぎ、着地点より前に、カラダが投げ出されてしまっていた。これでは、せっかくの助走スピードが無駄になってしまう。
そこで、シザースにより足を回転させることで、空中での姿勢が安定。より前へ、足を置くことができるようになった。
この跳び方の違いで、数十センチもの差が表れると言う。
ストロングポイントである助走スピードを磨きつつ、新たな跳躍法を身に着けたことで、澤田選手はさらなる進化を遂げた。

今年6月。
現在の実力を試す、絶好の機会が訪れた。
大阪、長居で行われた日本パラ陸上競技選手権大会。
新たな跳躍法「シザース」を武器に、果たして5メートル70の自己ベスト更新なるのか?
4本目まで跳び、ここまでの最長は5メートル21。
特訓を重ねたシザースの効果もまずまずのよう。
そして5本目。
記録は…5メートル07。

宮崎コーチ「助走から踏切自体はよかったんだけど急いで着地にはいってしまっているのでこの部分がもっと欲しい」

踏み切り時、リード足をすぐに降ろさないように臨んだ…最後の1本。
結果は惜しくも…自己ベスト更新ならず。

澤田「えー何点だろ。50点くらいですかね、まだ。スピードにのったところでイメージした踏み切りができるようになっていけば100点に近づいていくし記録もおのずとあがってくるかなって」

大会で見つかった新たな課題。
澤田選手はいま、大会で浮き彫りになった新たな課題に取り組んでいる。
スピードの乗った助走。
そしてシザースで体を安定させることができても、肝心の踏み切りのところでロスをしてしまっていた。
そこで踏み切りまでの動きを集中的に練習している。

宮崎コーチ「今は最後の2歩の練習なんですけど、走った状態のまま踏み切っていってるんで、それを2歩前をおおきくして最後を小さくと。2歩前は沈み込んで、そこから起き上がってバネを作るということなんですけど」

踏み切りの際、歩幅が大きいと前への推進力しか生まれず、高さのある跳躍にはならない。
そこで、2歩前の歩幅を広げることで一度重心を下げ次の一歩を短くする。これにより、重心を上げながらリード足を素早く引き上げることができる。つまり、助走スピードをころさずに上への推進力を得ることができるという。
自分ではフォームを確認できない澤田選手。細かい動作は宮崎コーチが手取り足取り教えている。
徐々に助走距離を伸ばしながら、感覚を体に覚えこませる。
6メートル超えのジャンプを目指し、日々フォームの改造に取り組む澤田選手。
その成果を試す機会は…今年の11月。

澤田「世界選手権で4位を入賞するとることが1つ東京パラリンピックでの出場権を獲得するチャンスなので、ぜがひでもそこにしっかり入っていく。やはり東京パラリンピックでメダル獲得というのは目指してますね。金メダルを私はとりたいと思ってやっています」

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