ストロングポイント

毎週日曜 17:30~18:00放送

放送内容

第175回 陸上 走幅跳 高田千明④

2019年7月14日 放送

陸上 高田千明。
リオパラリンピックでは視覚障がい 走幅跳(はしりはばとび) 全盲クラスで8位入賞。
2017年の世界パラ陸上では日本(にほん)記録を更新。銀メダルに輝いた。そんな彼女には…誰にも負けない武器がある。
「スピードに乗ったジャンプ」
力強い飛び出しから、瞬時にトップスピードへと到達。
そこから生まれる跳躍こそが彼女のストロングポイント。
東京パラリンピックでのメダル獲得へ向け、元オリンピック選手の心強いコーチたちと共に新たなフォームを模索してきた。
そして先月、成果が試される絶好の機会が。
果たして…自らの日本記録を更新できるのか?
高田(たかだ)選手の挑戦を追った。

東京で生まれた高田選手。
先天性の病気で、幼い頃から弱視だった。しかし、当時から走ることへの自信は人一倍。徒競走ではいつも1番。
そして、19歳の時に完全に視力を失った。
それでも、大好きだった走ることへの情熱を失うことはなく20歳から本格的に陸上を始めると、記録はおもしろいように伸びていき…2007年には100メートルで当時の日本(にほん)新記録で優勝。
さらに、2016年のリオではパラリンピック初出場で、8位入賞を果たした。
私生活では2008年に結婚し、10歳になる息子 諭樹(さとき)くんがいる。
夫の裕士(ゆうじ)さんは聴覚障がい者。夫婦で互いの障害を補い…
諭樹くんはお母さんの目となり、お手伝い。お父さんと会話ができるよう、手話を使いこなす。実は裕士(ゆうじ)さんもアスリート。聴覚障がい者の世界大会「デフリンピック」に出場する400メートルハードルの日本(にほん)記録保持者。
今回、高田選手が出場するのは目の見えない「全盲」の選手たちで争うT11クラス。健常者と異なる点は…踏切の幅。左の一般的なものに比べ、幅が広く1メートルの踏切エリアが設けてある。このエリアには石灰がまかれており、踏み切った位置から砂場に着地した距離を計測する。
また、全盲クラスの走幅跳には手拍子と声で、助走や跳躍のタイミングを知らせる 「コーラー」と呼ばれるガイド役がいる。
高田選手のコーラーであり、コーチを務めるのは大森(おおもり)盛一(しげかず)さん。
アトランタオリンピック1600メートルリレーのアンカーで5位入賞。世界を熟知した、元日本(にほん)代表選手。
そんな大森コーチに指導を受けて今年で14年。

大森「全盲というクラスの中で全力疾走をできるかどうかって、すごい所なんだと思うんですよ初めて会った時に彼女は全力疾走してたんで、そこはすごいなと思った所ではありました」

全盲クラス走幅跳の日本(にほん)記録保持者、高田選手のストロングポイント…「スピードに乗ったジャンプ」。
実は、高田選手…走り幅跳びだけでなく、なんと100メートルでも日本(にほん)記録を持っている。その速さの秘密は、大森コーチの指導。足を体の前で回転させることで、腰の位置がブレず、スムーズに加速。
この走りこそが高田選手、最大の武器。
また2年前からは新たなコーチも加入。元オリンピック選手で女子走幅跳の日本(にほん)記録保持者、井村久美子さん。
井村コーチの指導で踏切のフォーム作りに着手し、記録を伸ばしてきた高田選手。そして去年9月。踏切フォーム改造へ向け、高田選手は井村(いむら)コーチのもとで合宿を敢行。

井村「幅跳び選手は結構女子の選手は踏切ったあとすぐに着地をして砂場に突っ込むスタイルが多くなるので、千明さんも踏切が①だとして、②が空中で待つ時間、③が着地だとすると、千明さん①番から②番無しの③番にすぐいっちゃう。そうするとすぐ踏切、突っ込む着地だと距離を伸ばせないんで、いかに(助走で)速く走ってきたスピードを①番で踏踏切る②番で維持する 長くそのまま最後は③の応用で着地に繋げる練習」

すると…その成果はすぐに表れ、去年のアジアパラではみごと銀メダル。
今年からは、「着地の改善」にも着手。
去年は、体を横にして着地していましたが、現在は着地と同時にカラダを前に倒していることがわかる。

大森「リオの後に跳び方 改造始めて最終段階に今年の冬できて、あとは記録を出すだけというところに持ってきたので、普通に跳べば4メートル50~60は当たり前に出る跳び方をしているので、期待をしてるというか早く出せよって」

日本(にほん)記録更新なるか。勝負の一日に密着した。
6月1日、日本(にほん)パラ陸上競技大会。
目が見えない高田選手は体の軸を整えないと助走が曲がってしまう。そのため、試合直前まで、入念にトレーナーの全さんに見てもらう。
全盲クラスの走幅跳は健常者と同様、6回の跳躍の中から、最も良い記録で競う。自身が持つ日本(にほん)記録は4メートル49。今回は自己記録を大幅に更新する4メートル55を目指している。
いよいよ1回目の跳躍。
スタート直後、大森コーチがストップをかける。
助走が右にズレてしまいた。
踏切エリアや砂場に入らなければ、1分間の制限時間内はやり直しができるため、大森コーチがスタート位置へ誘導する。
仕切り直して、1回目の跳躍。

1回目は踏切直前で助走がズレてしまい砂場へ入ってしまったため…ファール。
続いて…2回目の跳躍。
記録は4メートル48。
助走がわずかにズレてしまったが、練習した空中動作からの着地もみごと決まり、日本(にほん)記録まであと1センチに迫る好記録。
そして高田選手…3回目の跳躍。
記録は4メートル35。その後も、スピードに乗ったジャンプを続けますが、記録はなかなか伸びない。
いよいよラスト6回目の跳躍。
助走は真っ直ぐで空中維持から着地まで…ほぼ完璧。
4メートル48。
この日は目標達成とはいかなかったが、今後の記録更新へ、手ごたえをつかんだ一日となったよう。

高田「今日はしっかりと跳んだ体も前にいった感じがあった。助走に気を使わなくても大森コーチの方に行って、そのあと、踏切から引きつけと腕がしっかり噛み合えばもっといった」

大森「記録には表れてはないがやろうとしてることは大体やっている試合感も戻ってないところもあるので1回試合を経験してから次どうするか。(試合感は)修正しながら次の大会に向けて行きたいと思います」

今年は、尻もちではなく、すべて「前のめり」の着地で試合を終えた高田選手。まだ陸上シーズンは始まったばかり。新たなフォームにさらなる磨きをかけ、2020年の東京で目指すのは…

高田「東京では5メートルを超えて跳びたい自信はあるんですけどね 常々」

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