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毎週日曜 17:30~18:00放送

放送内容

第171回 車いすテニス 上地結衣④

2019年6月9日 放送

車いすテニス・上地結衣。
リオパラリンピックでは日本女子史上初となる銅メダルを獲得。さらに去年のアジアパラ大会を制し、東京パラリンピック内定・第1号となった。彼女には誰にも負けない武器がある。
「試合をコントロールする力」
正確なショットで相手の嫌がるコースを突き、徐々に自分の優位な展開へと持ち込む。この武器で一昨年、4大大会のうち3大会を制覇。世界ランキング1位に君臨した。しかし去年。4大大会の優勝はわずか一度。世界ランキングも2位に転落。そこで、彼女が新たな武器として取り入れたのが『ドライブボレー』。
迎えた、今年4月のジャパンオープン。世界トップ4が集結し、東京パラリンピックの試金石となる大会で新たな武器は通用するのか。ライバルたちとの激闘を追った。

上地選手は1994年、兵庫県生まれ。
先天的な脊椎の病で両足に麻痺があり、11歳から車いすテニスを始めた。20歳の時には日本の女子で初めて世界ランキング1位に。そして2016年のリオパラリンピックでは銅メダルを獲得。
さらに翌年、グランドスラムは4大会中3大会を制覇するなど世界の舞台で輝かしい実績を残してきた。
しかし去年、ある壁に直面する。
それが最強国・オランダ代表。
筆頭は22歳のディーデ・デグルート選手。世界ランキングは堂々の1位。去年、上地選手に対し、5勝1敗と大きく勝ち越した。

そして世界ランキング3位のアニーク・ファンクート選手。
リオパラリンピックの準決勝では上地選手に勝利。強烈なフォアと巧みなバックのスライスが武器。
東京パラリンピックで彼女たちに勝つため、上地選手はこれまでのスタイルを進化させようとしていた。
これまでの上地選手のテニスはリスクを負わず、ベースラインの後ろから徐々に相手を追い詰めるスタイルだった。
しかし、その戦術は研究され、近年はオランダの選手の高さやパワーに圧倒されるケースが増えてきた。
このままでは勝てない。上地選手に求められたのは自ら動いて得点を奪う「攻めのテニス」。
そのカギを握るのが…

上地「『ドライブボレーを入れてみたら?』とコーチからアドバイスというか、提案があったので。自分が今までやった事…全くやった事のない、まず女子で自分からホントに前後左右を使ってプレーを展開していく選手って、もう1人いるかいないかぐらいなので」

『ドライブボレー』。
いったいどういうショットなのか?
ボレーとは、ノーバウンドでボールを打ちかえすショットのこと。振り切らずコンパクトに当てることが基本。
一方のドライブボレーは同じくノーバウンドのボールに対し、ストロークと同じスイングで打つショット。前に詰めながらスイングする為、打点が狂いやすく、難易度が高い。
ジャンプや素早い横移動への切り替えが出来ない車いすテニスでは、健常者のテニスに比べ、後ろを抜かれるリスクは高まる。
難しくてリスクも高いドライブボレーには、どんなメリットがあるのか。
このショットの提案者でもある千川コーチに伺うと。

千川「時間がなくなりますよね。構える時間だったりとか考える時間だったりとかっていうのを奪うっていう感じですね」

テニスでは打った後、次の準備をする為、コートの真ん中に戻るのがセオリー。その真ん中に戻る時間を奪うのが新たな武器『ドライブボレー』。

大会前、3月の練習。
テーマはもちろんドライブボレー。
前に出るタイミング、ショットの感触を確かめる。
練習時間の大半を費やしてじっくり調整。

そして4月。
世界のトップ4が集結したジャパンオープン。
上地選手は、この大会を6連覇中。

車いすテニスはコートやラケットなど基本的なルールはテニスと同じ。健常者のテニスと異なる点はツーバウンドまで返球が許されている点。

第2シードの上地選手。2回戦・3回戦ともストレートで順調に勝ち上がった。
迎えた準決勝。
相手はオランダのファンクート選手。
第1セット・第1ゲーム。
フォアが強烈なファンクート選手のバックにボールを集める上地選手。相手に得意なショットを打たせず、思い通りに試合をコントロール。最初のゲームを奪う。
続く第2ゲーム。
見事なドライブボレー。
コート奥へ連続で打ち込んだスピンのかかったボール。甘く返ってきたボールを振り抜いた。
これで勢いに乗った上地選手。4ゲーム目まで連取。粘りのテニスで見事、第1セットを奪った。
第2セットに入っても「攻めのテニス」は続く。
ドライブボレーは球が浮いてしまい、惜しくも失敗。
それでも攻められたファンクート選手は焦りが出たのか、ミスショット。
このままペースを握った上地選手がライバル・ファンクート選手にストレート勝ち。決勝へとコマを進めた。
次はいよいよ、大会7連覇をかけた決勝戦。
決勝の相手は世界ランキング1位の若き女王、ディーデ・デグルート選手。
上地選手が去年1勝5敗と大きく負け越した相手。

序盤は両者、互角の戦いを繰り広げる。
ゲームカウント1対1で迎えた第3ゲーム。
課題のドライブボレーが見事、得点に結びつく。実は上地選手、相手の動きを見抜いていた。

上地「向きと体勢ですね。コートに対して斜めにタイヤがなってるじゃないですか、なので上げてくるだろうなっていうことは予想して」

そしてゲームカウント4対3とリードを許した第8ゲーム。何としても追いつきたい、重要なゲーム。
2本続けてドライブボレーで得点するが、デグルート選手の強烈な一打。第1セットを落とす。
追い込まれた第2セット。
両者一歩も譲らず、ゲームカウント6対6。タイブレークまでもつれこむが、惜しくも敗れ準優勝、7連覇はならなかった。

上地「試したかったことが試せたというのは大きな収穫だったと思いますけど、やっぱりそれ以外が全然良くなかったので。そこが上手く今後回っていけば、いい方向にいけば、今やっていることもいきてくる」

優勝こそ逃したものの、世界のライバルたちに着実な進化を見せつけた上地選手。決着の舞台は来年に迫った東京パラリンピック。

上地「焦る必要はないですけど、やらなければいけないことは、まだまだたくさんあると思うので、その先に東京の2020で金メダルっていう結果を出すための過程としては、いまは我慢をしなきゃいけない時期かなと思います。でもやっぱり自分が負けるのは悔しいので、楽しくはないですよね」

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