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毎週日曜 17:30~18:00放送

放送内容

第166回 ブラインドサッカー日本代表

2019年5月5日 放送

今年3月、日本で開催されたブラインドサッカーの国際大会ワールドグランプリ2019。
東京パラリンピックでメダル獲得を狙う日本にとって世界の強豪国と真剣勝負できる貴重な大会。
現時点で通用するモノ、足りないモノを知る格好のチャンス。
そこで輝きを放ったのがエース川村怜。
世界レベルの実力を遺憾無く発揮。
日本の全3ゴールをあげる大活躍、チームを国際大会初のベスト4という結果に導いた。
大会直後、日本の頼れるエース川村を直撃。
東京パラリンピックに向けての収穫、そして課題とは…
東京パラリンピックまで、あと478日。
悲願のメダル獲得へ日本の現在地が明らかとなった。

大会1ヶ月前。 千葉で行われていたブラインドサッカー日本代表合宿。
国際大会の出場機会が少ない日本代表にとってワールドグランプリは、自分たちの力を試す絶好の場。
練習とは思えない緊張感のあるプレーと仕上がりに手応えを感じていた高田監督が大会への意気込みをこう語っていた。

高田「結果だけですね。とにかく上の順位に行きたいです。去年のワールドグランプリに比べると全然違う。メチャクチャ強くなっている…と思って戦います」

日本が初めて挑んだ去年のワールドグランプリ。
目の前に立ちはだかる世界の壁を痛感。
6カ国中5位という屈辱的な結果に終わった。
その悔しさを晴らすため、そして1年後に迫った東京パラリンピックへ。
キャプテン川村選手が欲しいのは、確かな結果。

川村「ドリブルで突破することは強豪国相手でもある程度手応えをつかめたけど、最後に決め切るというところが昨年は自分自身足らなかったので、今の自分を試せるいい機会なので非常に楽しみにしています。グループステージ、しっかり自分たちの力で勝ち上がって次の上のステージに勝ち上がることが今回一番の目標。上に上がって景色を全員で経験したいと思います」

成長した姿を見せるべく挑んだ、今年のワールドグランプリ2019。
開催国の日本に加え、アルゼンチン、スペインなどヨーロッパや南米の強豪、全8カ国が集結。
まずは簡単にルールをおさらい。

フットサルを基にルールが考案されたブラインドサッカー。
そのためコートの大きさはフットサルと同じ広さ。
フィールドプレーヤーは4人、ゴールキーパーが1人の5人制。
顔に付けられたアイマスクはフィールドプレーヤーには着用が義務付けられている。つまり完全に視界はゼロ。そのためプレーする上で頼りは「音」。
ボールは転がると音がなる仕掛けになっている。
さらに監督やゴールキーパーからの指示も聞き分けながらプレー。
特徴的なのはガイドと呼ばれる存在。
セットプレー時にはポストを叩いたり、ゴールまでの距離や角度を、選手に音で伝えている。

今大会グループAの日本は、川村選手が大活躍。
3得点を挙げ、予選リーグを1位で通過。国際大会で初のベスト4進出を決めた。準決勝の相手はイングランド。イングランドのエース、イングリッシュ選手に2ゴールを許し決勝進出はならず。

そして、スペインとの3位決定戦。
結果はメダルに届かず4位。
収穫と課題、ともに多く見つかった大会だった。

川村「僕としては世界一のプレーヤーを目指しているので、こんなところで止められるようではまだまだ。これが世界の厳しさ」

そんな中でも川村選手、今大会を通じ、パラリンピックを戦う上で重要な世界でも通用したプレー、そして課題をシッカリと分析していた。
まずは川村選手が感じた、世界で通用したプレー。
それはグループリーグ第2戦で生まれたスーパーゴール。
川村選手がボールを奪うと一気に攻撃。
コロンビア相手に個人技で奪った超絶ゴール。

川村「中盤でドリブルで持ち込んで、1回とめて相手を見たときに、まだゴールまで距離があったので、もう一度進んで、あそこで2回目ボールを止めれたことが僕個人的には成長した。今までだとあのままシュート打って入らなかったけど、2回目止められたことで冷静に、キーパーを見極めて狙い通りにシュートを打ち切れた。これまで取り組んできたことが成果に出たゴール」

ボールを止めることで転がる音を消す「消えるドリブル」。実はこれ、ある選手を参考にしていました。

川村「ブラジルのリカルド選手から学んだんですけど。対戦して“あれってどうしてるの?”と聞いたら“ボールを止めてる”。ディフェンスしてて聞こえずらくて相手にとって有効的。肌で感じて自分も取り入れた」

続いて川村選手が、日本の成長を感じたプレー。
それは国際大会で初のベスト4を決めたスペインとの一戦にあった。
前半、スペインは中央を固めて日本の攻撃に対応。川村選手も得意のドリブルで中央に切り込んで行くものの、スペインの人数をかけた守備に手を焼き、ゴールを奪えない。
それを見た日本は、ある作戦に出る。

川村「スペインが中を閉じていたので、縦のスペースが空いていた。僕らが縦のスペースを使うことで、スペインは縦を切ってきた。それに対して僕らは中を使うようにした。スペインが対策したことで僕らも戦い方を変化して戦えた。かなり高度なことですし、見えてない選手が監督やキーパー、コーチ陣と話をしながら変えていった。戦い方のバリエーションはこれまで積み上げてきたものがあるので僕たちも柔軟に対応できた」

スペインが警戒した縦のドリブルから空いた中のスペースに切れ込みシュート。世界で戦うために必要な攻撃のバリエーション。日本の成長を証明したゴールだった。

川村「あの瞬間、あの時間帯 スペインも少し間延びした瞬間。縦へ突破して、最後はカットイン ずっと狙っていた。うまくハマって瞬間だった」

1年間、チームで積み重ねてきた物が国際大会初のベスト4という確かな結果に結びついた。

その一方で修正しなければいけない課題も。
それは決勝進出をかけたイングランドとの準決勝。直近の3試合の対戦では、2勝1敗と相性のいい相手。
しかし、厳しい現実が…

川村「必ず勝って決勝に行くと挑んだけど、イングランドの強度に対して僕らの重心が下がった」

体格で大きく上回る相手に日本は試合開始から苦戦を強いられる。
大きい相手に素早い動きでしかけるものの…

川村「僕らの良さである選手同士のいい距離感を保てなかった。後ろと前の間にスペースを与えてしまったのが勿体無かった」

先制ゴールを許すと、さらに…間延びした日本の守備陣にイングランドのエースが襲いかかる。
スペースをつかれ、2失点。川村選手にとって大きな刺激となった。

川村「世界で勝ち上がって行く国をみるとゴール前で相手が寄せても最後に打ち切る力があるストライカーがいる。過去対戦した時よりも技術的にもフィジカル的にも成長感じた。日本代表が成長してる以上に世界も成長している。危機感を持って日常から取り組むことが必要だと感じた」

そして今大会、日本がメダルをかけて戦ったスペインとの3位決定戦。
番組ナビゲーターの上田晋也も観戦に訪れていた。
予選では日本が勝利したが、メダルが懸かった大一番。スペインも強さを見せる。体格では劣る日本。それでも積極果敢にゴールを狙う。
試合は一進一退のまま終盤へ。
日本は高い技術とスピーディーな展開で強豪スペインを苦しめる。
1点をもぎ取る為、積極的に攻めるサッカーを前半、後半ともに貫き通した。

上田「前回見たときより激しさ、早さがレベルが上がっている。超速の進歩を遂げていると思うんですが」

矢野「3年半前までは守りっぱなし。意図的なシュートやパスがなかった」

敗れはしたが、4位は大きな進歩。

上田「負けたのは残念だけど、川村選手はキレのある動き。いろんな技を身につけて日本代表を引っ張ってくれるかな。日本代表は素晴らしい」

日本代表のエース、川村怜選手。
国際大会初のベスト4入りを果たしたワールドグランプリ。快進撃の中心にいた川村選手ですが大会直後から休むことなく、日々自分を追い込んでいる。全ては夢舞台、東京パラリンピックで輝くため。
しかし中心選手だから感じる日本代表への不安があるそう。

川村「現状、僕と佐々木ロベルトが5試合でフル出場。他の国を見ても5試合フル出場している選手はほとんどいない。危機感として捉えないといけない。交代できる選手がいない。選手層が薄い。交代をうまく使ってチームとして戦い切ることが今の日本に一番大事」

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