ストロングポイント

毎週日曜 17:30~18:00放送

放送内容

第160回 パラテコンドー 伊藤力②

2019年3月24日 放送

パラテコンドー、伊藤力。
先月行われた全日本選手権で見事優勝。そして今月行われた国際大会、US オープンでは銅メダルを獲得。東京パラリンピックから正式種目に採用されたテコンドー、メダルへの期待を背負う日本のエース。彼には誰にも負けない武器がある。

「意表を突く鋭い蹴り」

変幻自在な間合いと軌道…ムチのようにしなる蹴りは予測不可能。
この武器で世界の強豪たちと渡り合ってきた。しかし、大きな試練が…
日本のエースが味わった大きな挫折…
東京パラリンピックで輝くために迫られた立て直し。迎えたリベンジの舞台…果たして結果は?苦難と戦う日本王者の今を追った。

パラテコンドーを始めてまだ4年目の伊藤選手。
1985年、双子の弟として誕生。
子供の頃から体を動かすことが大好き。
サッカー、剣道、テニスとスポーツに明け暮れていた。
2015年に30歳で久美子さんと結婚。
しかし、そのわずか1ヶ月後、働いていた工場で事故に遭い、右腕の肘から下を切断することに。
失意の伊藤選手を支えたのは事故から5ヶ月後に誕生した愛娘。
前を向いて歩き始めた伊藤選手が出会ったのがパラテコンドーだった。

格闘技経験はゼロ。
それでも持ち前の運動神経でメキメキと頭角を現し、翌年にはなんと国際大会で優勝するまでに。
現在、世界ランクは日本人トップの12位。
日本パラテコンドーの先駆者と呼ばれている。
普段、健常者の選手と一緒に練習を行う伊藤選手。

パラテコンドーとテコンドー、ルールの違いは?
テコンドーの試合では頭と胴への攻撃が認められている。
一方、パラテコンドーでは胴への攻撃のみが有効ポイント。
相手を倒すのではなく蹴りで得点を競うスポーツ。
得点は蹴り方によって様々。
まず普通の蹴りは2点。
振り返りながら蹴る「後ろ蹴り」は3点。
体を一回転させて蹴る「回し蹴り」は4点。

伊藤選手のストロングポイント「意表を突く鋭い蹴り」。
相手のウラをかく独特な間合いから繰り出され、予測不可能な軌道を描くこの攻撃。
相手の意表を突く鋭い蹴りで、これまで圧倒的な強さを見せてきた伊藤選手。
ところが去年…日本人選手から初めての敗北。
それは韓国で行われた国際大会の準々決勝。
押してはいるが、自慢の蹴りがなかなか当たらない。
結果はまさかの0対7、完敗。
パラテコンドーで味わった初めての挫折。
その対戦相手とは…17歳の新星、星野祐介選手。
これまでの対戦成績は伊藤選手の6戦6勝。
なぜ、伊藤選手の蹴りは当たらなかったのか?

星野「(ビデオで)伊藤さんの試合を見たりして、伊藤さんがどういう蹴りが得意でどういう蹴りでポイントをうまく取っているかっていうところを調べて臨んだ試合だったので、そういう部分で伊藤さんの蹴りをどこからどっち足が来るかみたいなのを凄い分かったうえで臨んだのでやりやすかったです」

対戦相手に動きのパターンを研究されていた伊藤選手。これも日本王者、追われる立場ゆえの苦しみ…
では、勝負を分けたポイントは一体どこにあったのか?

鋭い蹴りを生む右足の攻撃力を重視した構え。
しかし、守備面に目を向けると、右腕が欠損している伊藤選手は相手の攻撃に対して腕を使った防御ができない。この構えは、いわば諸刃の剣だった。
さらに、持ち味の攻撃まで見透かされていた。

伊藤「以前はガムシャラに蹴っていて、相手がまさかこんなところを蹴ってこないだろうという所を蹴ってただけなんですけど。今はしっかりフェイントだったり、体の動きで相手の隙を作ってそこに蹴り込むようにしています」

悔しさと引き換えに掴んだ新たなファイトスタイル。
以前は試合中、常にステップを踏んでいたが、先月の試合ではほとんど踏んでいない。テコンドーにおいてステップは動きのリズムや相手との間合いを測るために重要な技術。

伊藤「(攻撃のために)ステップをとるのに気をとられちゃうんですよね。そうすると相手の蹴りが見えなかったりとか。反応が遅れたりとか。結構そういうのがあったんで。今はステップをやめて、しっかり相手の蹴りを見る感じにしていますね」

ステップをやめる。
攻撃が魅力の伊藤選手にとって大きな決断。
これまでの攻撃重視のスタイルから相手を見極め、ガードをしてからの攻撃につなげるスタイルへの大胆な変化は成功したのか?

星野選手との再戦。
試合開始早々、積極的にしかける伊藤選手。
左手のガードから、攻撃につなげてポイントを重ねる。
接戦の末、第1ラウンドは5対9で伊藤選手のリード。

そして迎えた最終第2ラウンド。
開始早々、同点に追いつかれるが、流れを掴んだ伊藤選手が攻守で星野選手を圧倒。
18対14で伊藤選手の勝利。

伊藤「パラリンピックも1年半後と迫ってるので、もちろんそこも見据えながら1日1日大切にしながらトレーニングしていきます」

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