ストロングポイント

毎週日曜 17:30~18:00放送

放送内容

第154回 視覚障がい者マラソン 道下美里③

2019年2月10日 放送

視覚障がい者マラソン・道下美里。
3年前、39歳で初出場したリオパラリンピックで、銀メダルを獲得。
翌年には、世界記録を樹立。
40代になった今も尚、その進化は止まらない。
彼女には、誰にも負けない武器がある。

「粘り強いピッチ走法」

1年後、東京パラリンピックで金メダルを取る為に。
その戦いの日々を追った。

パラリンピックメダリストで世界記録保持者。
輝かしい経歴の道下選手、実もともと走るのが得意だったわけではない。

子どもの頃は、なんと運動が苦手。かけっこをしても負けてばかりだっだそう。そんな中、角膜を徐々にむしばむ難病が発覚。13歳で右目は見えなくなった。さらに、25歳で左目の視力もほとんど失い、調理師として働いていた仕事も辞めざるを得なくなった。
そんな時、出会ったのが陸上。

道下「走るのはダイエットで始めた。毎日少しずつ走ったら痩せるかなって。頑張ったら頑張った分記録が縮まっていく、その達成感が楽しくなってきて。日常生活の中で出来なくなることばかりだったので、始めてからは目標や夢ができて楽しくなってきた」

30歳からマラソンを始めた道下選手。
視覚障がい者マラソン選手としての人生が始まった。
そして、リオデジャネイロパラリンピック。夢の舞台で銀メダルを掴んだ。
さらに、2017年のロンドンマラソンで初優勝。世界の舞台で初めて金メダルに輝くと…
同年12月には、それまでの記録を2分以上も縮める驚異的なタイム。
2時間56分14秒で世界新記録を樹立。

そんな彼女のストロングポイントは…「粘り強いピッチ走法」。
ピッチ走法の典型はシドニーオリンピック金メダリストの高橋尚子さん。
1歩の歩幅を小さくする分、足の回転を増やしてスピードを上げる走り方。
その高橋さんのピッチは、1分間におよそ200歩。
道下選手は、さらにその上、1分間におよそ240歩。その走りに解説者の増田明美さんは…

増田「見てるほうは、ピッチ走法の人、大変だなと思うかもしれないんですけども、実際は筋肉にかかる負担抑えながらピッチでカバーしますから、筋肉は疲れないですよ。大濠公園、道下さんと走ってるときに目が疲れちゃった。早送りしてる感じの走りですから。ものすごく足の返しが早い。超ピッチ走法」

道下選手はこのピッチをどうやって身につけたのか?

道下「生まれつき、みんなより身長が低いので、同じように歩いてても回転数早くしないと間に合わない(笑)。なので小っちゃい頃から鍛えてきたものがあるんだと思います。つけようと思ってつけたものではないんですよ」

この走りに、さらに磨きをかけ43歳で挑む東京パラリンピックで目指すは、金メダル。

今回、行われていた福岡での強化合宿。
参加しているのは道下選手の目となり情報を伝える伴走者の仲間たち。その名も「チーム道下」。

2014年から共に活動。
一人で走る事のできない道下選手の為、雨の日も風の日も、仕事の合間をぬって駆けつけてくれる仲間たち。
いまでは100人を越えるメンバーが道下選手をサポートしている。
チーム道下の中には、こんなメンバーも…
元箱根ランナーでハーフマラソン日本代表にもなった志田淳さん。
今年の箱根駅伝で総合優勝を果たした名門・東海大学出身。男子選手の伴走者としてパラリンピックにも出場している経験豊富なランナー。

世界記録保持者の道下選手が1年後の東京パラリンピックで金メダルを取るため、いま強化しているのが『スピード持久力』。
実は道下選手。今回の合宿であることを指摘されていた。
これまでの走り方や生活のクセで右肩が少し上がってしまうよう。

道下「傾いて走ってると知らない間に斜めに走行してるんですね。真っすぐ走れないとそれだけロスも多い」

前への推進力が生まれにくくなっていることがスピードの持続にも弊害になっていた。
合宿で浮かび上がったこの課題…克服するために必要なのが、体幹の強化。
向かった先は、ヨガ。
左右のバランスを整えながら、体幹を鍛えることで綺麗な姿勢を目指す。

今や東京の冬の風物詩、東京マラソン。
一部のコースは2020年の東京オリンピックのマラソンコースにもなっている。
道下選手がこの大会に参加するのにはある狙いが…

道下「2020年のパラリンピックのコースがまだ発表されていないのではっきりは言えないんですけど、もしオリンピックと同じようなコースが想定されるのであれば、東京マラソンはコースとして走る部分に被るところがあるんですね。私たち視覚障がい者はどうしても足元の不安が付きまとう競技なので走るときは。なのでその不安を取り除くために実際体でコースを覚える作業ができればいいな、感じるって作業ができればいいなと思っています」

2020年への戦いは既に始まっている。

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