ストロングポイント

毎週日曜 17:30~18:00放送

放送内容

第145回 ブラインドサッカー 川村怜③

2018年12月9日 放送

ブラインドサッカー日本代表キャプテン 川村怜。
東京パラリンピックでのメダル獲得を目指し、世界と戦う彼には武器がある。

『戦略的なドリブルシュート』

何も見えない状況の中、研ぎ澄まされた感性で相手の意表を突く。
東京パラリンピックへの試金石。先月行われたサッカー大国・アルゼンチンとの真剣勝負。
立ちはだかったのは世界最強のディフェンダー。
日本のエースが突き崩す世界の牙城!手に汗握る激闘の行方は?

先月4日、東京都町田市でブラインドサッカーの国際試合が行われた。
この日の対戦国はサッカー大国・アルゼンチン。
世界ランキング2位。世界王者に2度も輝き、パラリンピックでは常にメダル争いを繰り広げる世界のトップチーム。そんなアルゼンチンの強さは、世界最強とも呼ばれる鉄壁の守備。中でも注目はパディジャ選手。身長186cm、パワフルな守備が持ち味。

1989年、大阪で生まれた川村選手は先天性の弱視。
サッカーを始めたのは、小学1年生のとき。

川村「あまり見えていない状態でやっていました。近くにボールが来ればやっとわかる状況でなんとなくやっていました」

しかし中学では、視力の関係でサッカー部に入れず陸上部へ。

川村「どっかではサッカーに憧れは持ち続けていましたね」

そんな中、大学でブラインドサッカーと出会う。大きな喜びと共に、川村選手の才能は開花。大学卒業後、障がいが進行し、両目の視力を失った。
2013年に日本代表入りを果たすと…代表デビュー戦、世界王者ブラジルとの試合でいきなりゴール。最強チームから日本代表史上初となる得点を奪った。

視覚に障がいのある選手がプレーをするブラインドサッカーは障がいの差を無くし、公平をきすために選手はアイマスクを着用。5人制でフィールドプレーヤーは4人。ゴールキーパーだけ目の見える選手が務める。
コートの広さはフットサルと同じ。両サイドにはフェンスがあり、ボールが外に出ることはない。
そして、ボールには音が鳴る仕掛けが。選手はこの音を頼りにプレーする。
また、ボールを奪いに行くときは危険な衝突を避けるためボイと声を掛けなければ反則。さらに攻撃の際、大切なのが相手ゴール裏で指示を出すガイド。ゴールまでの距離や角度、シュートのタイミングを伝える。

川村選手は日本代表に欠かすことのできない得点源。
ゴールを生み出しているのは川村選手のストロングポイント、『戦略的なドリブルシュート』。フィジカルが強い外国の選手に対抗するため駆け引きで意表を突く。この駆け引きを可能にしているのは…

川村「一番は聴覚だと思うんですけど、人が動く音、キーパー横にスライドする音も聞き分けますし、どっちに動いたかも、判断して逆にシュートを打ったりするので、そういう音を瞬時に聞いていると思います」

今年5月、川村選手を中心とした日本はベルギー遠征で大きな収穫を得る。
相手はリオパラリンピック銀メダルのイラン。
川村選手が粘り強くゴールを決めると、強敵イランから初勝利。
そして、迎えた8月の南米遠征で日本はパラリンピック4連覇中のブラジル、そして世界ランキング2位のアルゼンチンと対戦。
ここで、川村選手は世界との差を改めて痛感したという。

川村「正直なかなか自分たちの思い通りには崩してシュートまではなかなかいけなかったですね。あそこまで自分たちのやりたいように、思い通りに展開出来なかったっていう試合がここ最近少なかったので、そういう意味では相手のプレッシャーも速かったですし強度もすごく感じましたし」

川村選手はストロングポイントのさらなる進化を目指した。
ポイントとなるのはフィジカルトレーニング。
硬く強い体ではなく、柔軟性のあるしなやかな肉体で相手のプレッシャーを受け流し、バランスを保つ。フィジカルの強い海外勢に力勝負をするのではなく、相手の力をいなすことに重点を置いた強化。

そして迎えた決戦当日。
世界ランキング2位・アルゼンチン代表との戦い。
試合開始早々、川村選手がゴール前へ。
しかし、4番パディジャ選手が立ちはだかり、シュートを打たせてくれない。
試合開始3分、強化したボディバランスでしっかり体勢をキープ。最後は、シュートを相手キーパーの股の下へ。アルゼンチン相手に初めてゴールを奪った日本。しかし、守りの意識が前線のプレッシャーを鈍らせてしまい、前半残り1分で同点に。
後半、アルゼンチンの長いパスを多用した、素早いサッカーに防戦一方の日本。すると、後半10分、エスピニージョ選手の強烈シュートでアルゼンチンが逆転。
完全に勢いを封じられた日本。
再びエスピニージョ選手が決定的な3点目。
そして、試合終了。
アルゼンチンの猛攻を凌げず、逆転負け。歴史的勝利は持ち越しとなった。
それでも、強豪アルゼンチンから得点を奪った川村選手は試合後…

川村「相手をブロックしながらしっかりボールを反応できたところは貪欲に狙えたと思います」

チームとしても8月の南米遠征で5本だったシュートが、今回は10本。数字の上でも成長が見られた。
川村選手は南米遠征後、新たな取り組みを始めていた。
それが「ドラッグステップ」と呼ばれるドリブル。
今までのドリブルはボールを左右に動かし、軌道がジグザグに。一方、ドラッグステップではボールを斜めに動かすため、一回のボールタッチで進む距離が全然違う。
さらに、ドラッグステップはコントロールミスをしても、ボールが横ではなく前にロストするため前への推進力が失われないというメリットもある。

進化を続けるキャプテンに高田監督の期待も膨らむばかり。

高田監督「2020年東京では得点王になる可能性がある。得点王にならないとおもしろくないでしょ。(川村選手が)得点王になるイコールメダルが取れるんで彼がそこまで取れば」

東京パラリンピックの得点王へ。川村選手の活躍が日本をメダルへと導く。

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