ストロングポイント

毎週日曜 17:30~18:00放送

放送内容

第139回 パラバドミントン 鈴木亜弥子

2018年10月28日 放送

パラバドミントン 世界ランキング1位、鈴木亜弥子。
2年後に迫る、2020年東京パラリンピック。
なかでも注目されているのは、新たに正式競技として加わったパラバドミントン。初代女王は、いったい誰になるのか。
金メダルにもっとも近いと有力視されている、鈴木選手。
彼女には世界に勝つための、誰にも負けない武器がある。

「相手を追い込むドリブンクリア」

おっとりとした雰囲気と、やわらかい笑顔。
その奥に秘められた闘志とは?
コートのなかでの容赦ない攻撃。相手を封じ込める、新たな戦略とは?
現在、31歳。絶対女王の真の強さに、迫る。

6つのクラスに分かれているパラバドミントン。
生まれたときから右腕にまひがある鈴木選手は、上肢障がいのクラス。ルールは健常者のバドミントンと全く同じ。

先月30日。
東京、町田市の総合体育館でパラバドミントンの国際大会が開かれた。
去年に続き、日本で2回目の開催となった、『ジャパンパラバドミントン国際大会』。世界14カ国から、各国の精鋭109人が参加。健常者のバドミントンと比べ、世界と戦う機会の少ないパラバドミントンではとても貴重な国際大会。
前回大会覇者で連覇を狙う、鈴木選手は順調に決勝へ。
相手は世界ランキング5位。杉野明子選手。
流れを失いかけた場面もあったが、次第にペースを掴み、第1セットを先取。
続く第2セットは、絶対女王・鈴木選手の独壇場。
攻めの姿勢を崩さず相手を前後に揺さぶり、圧倒的な強さでゲームを支配する。結果、セットカウント2対0で勝利。見事、大会2連覇を達成。

鈴木選手の拠点は、杜の都・仙台。
社会人リーグの強豪として名を馳せる、七十七銀行に所属している。この健常者のチームに入ったのは、2年前。現在、最年長の31歳。
部員でたったひとりのパラアスリートとして、健常者と同じ練習、ほとんど同じメニューをこなし、日々、切磋琢磨している。

世界女王の闘志。いったいどこから生まれるのか?
人見知りで、お姉ちゃんの後ろにくっついて歩く子供だったという鈴木選手。
1987年、埼玉県で誕生。
右腕が肩からあがらない先天性の障がい。
バドミントンを本格的に始めたのは、ジュニアクラブに入った小学3年生のとき。そこで学生時代、県の大会で優勝経験があるお父さんが立ち上がる。

父「障がいがあると、この子は勝てないだろうとみんな思うんですよね。(クラブだけでなく)自分で指導しようかなと。小学区の体育館を借りてやったんですね」

可能性を見出し、育てた父。娘の才能は開花する。
中学3年生で、関東大会優勝。高校ではインターハイにも出場。
そして大学3年から、パラの世界へ。卒業後は、世界選手権とアジア大会で優勝。瞬く間にトップに上り詰めた。
しかし・・・

鈴木「当時は世界選手権とアジア大会がグレードがトップ2で高い大会で、そこで優勝をしたので、それ以上のグレードはなかったので、もうやめました・・・それ以上の目標が自分のなかで見つからなかったので、一度引退しました」

パラバドミントンにはもう戻らない。そう決めていた。
OL生活を楽しみ、ラケットを握ることすら、ほとんどなかったそう。
ところが、そんな鈴木選手の心を動かす出来事が。
日本でパラリンピックが開催されることが決まり、しかもその2020年東京から、パラバドミントンが正式競技となった。引退から5年が経っていた。
パラリンピックに挑戦する。
悩んだ末、そう決めた鈴木選手はすぐに行動し、2016年、現在のチームへ。
29歳での現役復帰。5年というブランクは、予想以上に身体が動かなかったという。
健常者とともに練習するのは、昔も今も同じ。ハードなトレーニングでも、ついていけるはず。鈴木選手は自分と向き合い、奮い立たせた。
彼女の覚悟は、すぐに結果に結びついた。国際大会に復帰すると、次々と優勝。翌年には世界ランキング1位に返り咲いた。
そんな鈴木選手の最大の武器。試合で生かしてきたストロングポイント。

『相手を追い込むドリブンクリア』。

クリアとは、自陣の後方から相手の後方に打ち込むショットのこと。
「ハイクリア」と「ドリブンクリア」の2種類がある。
まずは「ハイクリア」。
シャトルは高く、山なりになって相手の後ろへ。滞空時間が長いのが特徴。
守備的なショットで、相手選手は後ろ足で無理に下がることを強いられるため、体勢を少し崩してしまう。
そして、鈴木選手が得意とする「ドリブンクリア」。
ハイクリアと比べると、ドリブンクリアのほうは弾道が低い。スピードも速く、着地までの時間が短い。
ドリブンクリアは、前後に揺さぶりをかけるため、相手をさらに追い込む、攻撃的なショット。鈴木選手はドリブンクリアを打つタイミングを冷静に見極め、狙い撃ちしている。
これこそが、世界の頂点に君臨する理由。さらに、鈴木選手の凄さはこれだけではない。
このストロングポイントを生む、驚異の頭脳を拝見。

鈴木「打つ前から、相手は大体どこら辺にいるか予測します。試合中はどこに打ったら決まるかなと考えてます」

試合中一体何を考えているのか。頭の中を探るべく、先日の決勝の試合を解説して頂くと。
対戦相手は、世界ランキング5位の杉野選手。
第1セット。試合序盤から有利な展開で試合を運ぶ。
あっという間に11対6、ブレイクに。

鈴木「8月にブラジルで国際大会があったんですけどスマッシュたくさん打ったので点数結構取られてしまったので今度はスマッシュ打たないでやってみようって思いました。スマッシュ打つっていうことはラリーを長く続けないようにしていたので簡単に勝とうとしていた自分がいて今度はスマッシュを打たないでラリーをしようって思いました。」

しかし徐々に、相手にリズムを掴まれてしまう鈴木選手。怒涛の追い上げで一気に追い詰められ、2点差に。
この時、鈴木選手は何を考えていたのか?

鈴木「完全に0にではないですけど、8割ぐらいになったりとかはします。本当はいけないんですけど。全部100%でやると考えてるよりか一歩客観的に自分を引いて見るっていうかちょっと力を抜くと意外と相手のことが見えたりとか、相手のペースだったので最初に戻ろうって思って。1セット目で色々試してこれはダメだなこれはダメだなって気づけばもうそれはやらないので、1セット目で色々やってみて相手を見るっていうところですね。1セット目取られても2セット取ったら勝ちのルールなので、1セット目取られてもいいでし ょって私は思ってます。」

なんとか第1セットを奪った鈴木選手。ここからが絶対女王の真骨頂。
第2セットは、鈴木選手の一方的なペースに。
ストロングポイントの、ドリブンクリアが炸裂。
さらに、打つと見せかけて手前に落とすドロップショット。

鈴木「後ろにふってから前に落とした方が相手の動く幅が大きくなるのでミスの確立が上がるっていうところで前に落とすっていうことをやっています。年齢が上になると体力とか筋力とか鍛えていないと落ちるところがあるんですけど、その分経験があるのでそこで考えてコースを狙っていきたいです。」

パラバドミントンの女王、鈴木亜弥子選手。
再び戻ってきた、パラバドミントンの道。
すべては2年後の金メダルへと、つながっている。
東京パラリンピックで、初代女王に輝く。その栄光に向かって。

鈴木「優勝したいです。初めて正式種目になるので、それも何かの縁かなっていうことで目標は金メダルです。」

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