ストロングポイント

毎週日曜 17:30~18:00放送

放送内容

第137回 フェンシング 加納慎太郎

2018年10月14日 放送

車いすフェンシング加納慎太郎。
わずか1メートルの間での攻防。逃げ場のない状態で激しい戦いが繰り広げられるスリリングな競技。
この車いすフェンシングで現在、日本ランキング1位。
彼には、世界で勝つための「武器」がある。

『柔らかさが生む切り返し』

相手の攻撃をあえて受けてから繰り出す反撃のカウンターアタック。
この「切り返し」こそが、彼のストロングポイント。
相手の攻撃を読み間違えれば、即、命取り。このリスクの高い戦術に辿り着けたワケ…そこには東京でのメダルにかける執念が。
加納慎太郎、剣にすべてをかけた男の戦いに迫る。

車いすフェンシングは使用する剣によって、フルーレ、エペ、サーブルの3つに分かれる。
各種目によりポイントの取り方と有効部分が変わるのが大きな特徴。試合は決められた時間内に指定のポイント数を先に取った方の勝ち。顔をガードするマスクは視界も狭める。
加納選手の身長は167センチ。選手としては小柄。
剣の長さに規定がある車いすフェンシングでは体格の差はそのままリーチの差となり、大きなデメリットとなる。
では、なぜ日本ランク1位に上り詰めるまで強くなれたのか?

加納選手は16歳の時に起きた交通事故により左足の膝から下を切断。
その後に通った「ある学校」がパラスポーツと出会うきっかけを作る。
加納選手「義足を作る専門学校に行って障がい者同士でフェアな状態で戦うスポーツ競技があることを知って視野が広がりました」

そして、加納選手は車いすフェンシングを選ぶ。その決め手となったのは少年時代から取り組んでいたあるスポーツだった。

加納選手「小さい時から剣道をしていまして父親の影響でしていたんですけどパラリンピックの種目で剣を使う競技っていうのが車いすフェンシングということで車いすフェンシングがしたいなと」

11歳から剣の道を志していたという加納選手。5年前からパラリンピック出場を目指し、同じ剣を使う車いすフェンシングに専念。
剣道とフェンシング。その共通点は?

加納選手「相手との距離感 剣がどこにあるのか次はどこに次は動くかの読みというところは共通している」

剣道で培った「間合い」と「読み」で小柄な加納選手は勝利を積み重ねていく。そして、4年後…並み居る強豪を降し、ついに日本ランク最高位にまで上り詰めた。
この「間合い」と「読み」こそが加納選手のストロングポイント、「柔らかさが生む切り返し」の重要な要素。
このストロングポイントがどう生み出されているのか。

加納選手「後の先ですね。後の先を生かした戦い方を心がけている。相手の攻撃した次を読んで対応している」

「後の先をとる。」
つまり、最初に相手にわざと攻撃させて、そこで生まれるスキをつくカウンター攻撃。しかし、読みが外れれば、相手の攻撃をまともに受けてしまうリスクの高い戦術。
海外には大きな選手が多いため、リーチが10センチ以上違う選手と戦うことも。そんな状況でも小柄な加納選手が勝つために選んだ技だった。
では、この技が体の大きな選手にどう有効なのかを検証。
対戦相手、中川選手の身長は180センチ。長いリーチを持つ日本選手権上位の実力者。試合形式で行い、加納選手に「切り返し」を使ってもらう。
開始直後、加納選手は動かず、相手の攻撃を弾く。
この時、攻撃にでた相手の体が加納選手にグッと近づいたのが分かる。
そこへ・・・反撃の一突き。
相手は防御に戻れずポイント獲得、リーチの差をみごとに埋める攻撃。限られた視界の中で瞬時に相手の攻撃を判断、剣で弾いている。そして、反撃の瞬間、相手を逃さず、剣を届けるためにもっとも必要なのが…

加納選手「柔らかさ動かすところの柔軟性は必要」

コンマ1秒でも速く、相手に剣を届けるために必要となるのが「体のやわらかさ」。とくに肩甲骨の可動域が重要なんだそう。肩甲骨まわりの関節の可動域が広がることで、にぎりこぶし1つ分ほどリーチをのばすことができる。

加納選手の世界でのランキングは現在18位。メダルには、ほど遠い順位。
世界との差を埋める方法を常に探っている。
たとえば、試合用と練習用で長さの異なる2本の剣。練習用は6センチほど短くしている。

加納選手「短い剣を使うことによって相手との距離感を縮める方法というものを模索しています」

あえて短い剣で練習することで海外選手の長いリーチに対抗する技術を習得しようとしている。
夢の舞台に近づくため目指すは勝利。
ストロングポイントを武器に加納選手の挑戦は続く。

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