ストロングポイント

毎週日曜 17:30~18:00放送

放送内容

第136回 陸上 短距離 井谷俊介

2018年10月07日 放送

パラ陸上界に突如として現れた、驚くべき新人選手。
今年7月。競技歴わずか8か月でリオパラリンピック銅メダリストを
破り、日本の頂点に上り詰めた。義足のスプリンター、井谷俊介。
彼には、誰にも負けない武器がある。

「急成長を続ける加速力」

走るたびに進化する、抜群の加速力。その陰には、リオオリンピック、陸上4×100mリレーで世界を沸かせた、山縣選手の存在が。

まさに彗星のごとく現れた、23歳。期待の新星のヒミツに迫る―――

三重県で生まれ育った、井谷選手。
ミニカーが大好きだった少年の「夢」。それは・・・
井谷「『レーサーになりたい』。鈴鹿サーキットが近くにあって、F1だったりスーパーGTを見に行って。小学校の卒業文集にも書いてました」
その夢を追い続けていた、大学3年の冬。バイク事故で、右足の膝から下を失う。
井谷「足がないのを見ると信じられなくて、本当にこの先僕はどうやっていけばいいんだろう。自分の中で受け入れるしかない。がんばるしかない」
歩くまでに半年、スポーツは1年かかると宣告され、持ち前の『負けん気』が爆発。手術からわずか二か月後には、試しにつけた、借り物の義足で走ることに成功。
レーサーになる夢をあきらめたくない。
そんな井谷選手に、運命の出会いが。
大学を休学せず、4年生になっていた井谷選手は、憧れていたトップレーサーに会う機会を得る。
日本最高峰のフォーミュラニッポンで優勝を飾るなど数々のレースで名を馳せる脇阪寿一さん。すると話はとんとんと進み、なんと、彼が所属する企業のサポートを受けることに。
井谷選手はさっそく4年生の秋から、本格的に陸上のトレーニングを始める。初めて走ったあの日、芽生えた夢へ。
そして、半年後の今年5月。
デビュー戦の北京グランプリで見事、優勝。パラリンピックへの夢が一気に現実味を帯びてきた。
井谷「最初義足になった時にレーサーになる夢をあきらめてたら何もやらずに、そこであきらめずにまず歩く練習をしよう。2週間で歩いて一回もあきらめなかった。あきらめなかったのが今の環境につながったと思う。レースにしても全部全てのことに本気であきらめずに挑戦出来たから道は開けた」
そんな井谷選手の快進撃は、まだまだ続く。
デビュー戦から二か月後、国内大会での決勝。
優勝候補はもちろん、佐藤圭太選手。
100mと200mのアジア記録を持ち、リオパラリンピックの4×100mリレーでは見事、銅メダルを獲得。日本のトップを走るスプリンター。 なんと、井谷選手が佐藤選手を0・02秒の僅差でメダリストをおさえ、見事な優勝。
気になるのはやはり、スタート。ひとりだけスタンディング・・・
井谷「簡単に言うとまだクラウチングスタートの技術が、まだ僕にはないんで(苦笑)。今はまだ手探りの状況でその時その時、ベストを出せるような走りでやってます。でも本来であればクラウチング両手ついて、座っての姿勢でのスタートがベスト」
競技歴わずか11か月。
今年5月のデビュー戦から、走るたびに自己ベストを塗り替え、瞬く間に日本のトップ選手に躍り出た。
いったいなぜ、この短期間で記録が伸び続けているのか?
彼のストロングポイント、『急成長を続ける加速力』のヒミツとは、いったい何なのか?
井谷選手が理想とする走り。それは・・・
井谷「山縣選手のような走りを理想としています」
リオオリンピックのリレーで銀メダルに輝いた山縣亮太選手。じつは井谷選手、レーサー脇阪さんの尽力で、山縣選手の練習メンバーの一員に加わっていた。オリンピアン山縣選手に井谷選手のストロングポイントについて聞いてみると。
山縣「井谷君は一次加速と二次加速のつなぎの所が非常にスムーズで、そこでグーッと井谷君がすーっと抜けていく加速力が魅力だと思います。100mはスタートからゴールまで常に全力というわけではなくて60mくらいまでが加速区間。スタートから30mくらいまでが一次加速。30~60mが2次加速」
この2つの加速区間をつなぐ箇所は通常、スピードが少し落ちてしまう。
しかし、井谷選手の場合はというと・・・
井谷「スタートで他の選手と並んでたり、ちょっと抜けてたりしても 30mくらいからフッと出る感覚があるので、そこがまあ、他の選手より速いところかなって思います。」

そして迎えた、国内最高峰の大会。
日本パラ陸上選手権・決勝。
今やライバルとなった、パラリンピックメダリスト佐藤選手は隣のレーン。
今回は、佐藤選手が王者の意地を見せ、優勝。
井谷選手は惜しくも2位。
向かい風が強く、タイムが伸びませんでした。

井谷「2020年の東京パラリンピックでは金メダルを争えるような選手になりたいです。10秒台で走れるような選手になって金メダルを争いたいです。」

パラ陸上界の新星は、2年後さらに輝くべく、加速していく。

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