ストロングポイント

毎週日曜 17:30~18:00放送

放送内容

第132回 パラ陸上 走幅跳 前川楓

2018年09月02日 放送

義足のパラアスリート。走り幅跳び 前川楓。
18歳で挑んだ初めてのパラリンピックで、4位入賞。注目を浴びた新星は去年の世界選手権で見事、銀メダルに輝いた。彼女には、誰にも負けない武器がある。
『全速力でも上体がぶれない走り』
スピードにのった助走が、跳躍のカギとなる走り幅跳び。
前川選手はこの、体がぶれない走りを追求。
自己ベストを更新し続けている。
見据える先は、2020年東京。挑み続ける二十歳の今に、迫る。

国内のトップアスリートが集結する、関東パラ陸上競技選手権。
6月末の初日。調子をあげてきた前川選手の姿が。
走り幅跳びの5本目で4メートル5を記録し、自己ベストを6センチ更新。
アジア選手として初の4メートル越え。
前川「いまけっこう嬉しい気持ちと、もっともっとという気持ちもあるので、このもっとという気持ちがだせれば記録につながると思います。4メートル05では(まだまだ)と思っているので、今の状態で本当にすべての条件が整えば4メートル30ぐらい、20台後半はいけると思うんですけど、それ以上になると今のままじゃ全然ダメかなと思うので」

三重県、津市で生まれ。
活発な少女時代を送っていた前川選手。
中学時代はバスケットボール部で副キャプテンを務めたほど。しかし、中学3年のときに交通事故に遭い、右足を膝上の太腿から切断。ふさぎ込む彼女を陸上へ導いたのは、ひとりのトップ・パラアスリート。
前川「そのときはまったく陸上やる気なかったのに、陸上のユニフォームをプレゼントされて、『これあげるから試合に出てよ』っていわれて、それで『ああ、はい』みたいな感じで、義足が履けて走れるようになってから一回試合に出ました」
誘ってくれた大西瞳選手と同じレースを走った。初めての陸上の大会で、結果は最下位だったが何かを感じた前川選手。
前川「べつに最下位とかタイムとかはすごく自分のなかではどうでもよくて、走り切ったときにすごく楽しいなって思ったので、もっと速くなったらどんなに楽しいかなって思って、で、次の大会も出たんですけど。その大会で初めて前の人を一人抜いてみたいと思って。その次の日に高校の陸上部に入りました」
メキメキと頭角を現した前川選手は練習を始めてわずか2年でリオパラリンピックに出場。当時の自己ベスト、3メートル68を跳びアジア記録を更新。4位入賞を果たした。
リオから帰った前川選手は、競技環境を変えることを決意。元オリンピック日本代表、井村久美子さんが地元の三重で後進を育てていると知り、直談判で指導を仰いだ。
心強いパートナーを得た前川選手はさらに進化、アジア記録を次々と塗り替えていくことに。
そんな前川選手のストロングポイントは『全速力でも上体のぶれない走り』
アジア記録を更新し続けているのは、その走りをさらに進化させている結果だという。具体的にいったいどういう走りをしているのか。
去年のジャパンパラで大会記録を更新したときの跳躍。スタートで勢いをつけられるよう、身体を大きく反らせる補助動作で反動をつけてから助走を開始。以降はまっすぐの姿勢のまま走り切り、踏み切っている。
一方、今年の6月にアジア新を更新したときの跳躍。やや前かがみの前傾姿勢で助走をスタート。そこからトップスピードに乗り、跳躍を行っている。
進化の理由は、どこにあるのか?
前川「一番は体幹だと思います。ウエイトトレーニングをこの冬はけっこう頑張ったので、ウエートトレーニングで身体を作り上げてきた感じです。ウエートトレーニングをすることによってどこの筋肉を使ったら(体の)どこがどう感じるというのを自分でもわかるようになってきたので、走っているときもここを今は使っているというのがわかるので、それは結果につながっています」
7月。関東パラから一週間後、前川楓選手は国内最高峰のジャパンパラに挑んだ。大会には、世界ランキング1位のマルティナ・カイローニ選手がイタリアから参加。世界との距離を測る絶好の機会。
この日の前川選手のベストは、4本目に跳んだ、3メートル89。
一方、マルティナ選手の跳躍は4メートル85のビッグジャンプ。一週間前の前川選手の自己ベストと比較しても、その差は80センチ。世界トップの跳躍に高い壁を見せつけられた。

前川「すぐには無理ですけど、2020までには追いつけるようになりたいと思いますね。もちろん悔しいと思う気持ちもありますし、差が80センチ現時点であるので、そこの部分ではまだ遠いなと思いますし、でもそればかり考えていてもよくならないので、そうではなくて自分に足りないものは何かとかそういったものを考えたほうが絶対にいいと思うので、意識することも大事ですけど、そこまで意識しないほうがいいかなと思っています」

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