ストロングポイント

毎週日曜 17:30~18:00放送

放送内容

第129回 車いす陸上 佐藤友祈

2018年08月12日 放送

車いす陸上・佐藤友祈、28歳。
2年前、初出場したリオパラリンピックで2つの銀メダルを獲得。去年の世界選手権では念願の2冠を達成した。
2年後の東京で頂点を狙う日本車いす陸上界のエース。
そんな彼には誰にも負けない武器がある…

『中盤の加速力』

世界が注目する28歳、その飽くなき挑戦を追った。

昨年11月。岡山県岡山市。
障がい者スポーツの実業団、グロップサンセリテ ワールドアスリートクラブ。ここに佐藤選手の姿があった。平日は人材派遣関連会社で勤務、練習は午後3時から。毎日およそ2時間半のトレーニングを行っている。

小学一年生の時、お父さんの影響でレスリングを始め、サッカーや陸上にも打ち込んでいた。しかし、21歳の時、病におかされ車いす生活に。失意の佐藤選手を救ったもの、それは…偶然目にしたロンドンパラリンピック。
佐藤「こんなにかっこいい車椅子に乗って風を感じて走れるっていう、それがすごい僕からしたら幸せそうというか幸せだなって感じて。本当1日2日のうちにネットで調べて、大会もレーサー持ってなかったですけどエントリーして」
そして、佐藤選手はメキメキと成長を遂げ、4年後には夢だったパラリンピックに初出場、2種目で銀メダルを獲得。さらに、昨年の世界選手権では2冠に輝いた。この急成長を支えているのが、チーム環境。松永仁志選手はチームの監督も兼任。3大会連続でパラリンピックに出場。リオではパラ陸上日本代表のキャプテンも務めた。そして後輩の生馬知季選手は昨年の世界選手権日本代表。3人とも出場するクラスはバラバラ。車いす陸上は障がいの種類や程度によって4つのクラスに分かれていて、おへそから下と左腕に麻痺がある佐藤選手は2番目に重いT52。松永選手と生馬選手はそれより軽いT53、T54のクラス。
チームメイト2人のタイムは佐藤選手のクラスでは世界記録以上に相当。
世界記録を常に意識できる練習環境、さらに、喰らいついて行く意思の強さが自慢の走りを支えている。

佐藤選手のストロングポイント、『中盤の加速力』。
チームの監督でもある松永選手に伺うと。
松永「スタートが遅いんですがそこから丁寧に速度を上げることが出来て、一気にトップスピードまで持って行けるっていうちょっと変わったタイプの選手かもしれないですね。非常にコンパクトで、コンパクトでピッチを刻んで尚且つスピードを上げられるっていう、非常に高い技術のフォームが完成してるというか」
マラソンでよく目にする2種類のフォーム。大股のストライド走法と小股で回転を速くするピッチ走法。車いす陸上のフォームにも大振りと小ぶりの2種類があり、佐藤選手はコンパクトな漕ぎで回転数の多いピッチ走法。握力が弱く、腹筋のない佐藤選手は腕を振りぬくと、戻って漕ぎ出すまでのロスが多い。その為、小さな漕ぎでロスを少なくし、回転数を増やしていく。
自慢の走りには、実はもう1つ大きな秘密が。
佐藤「リズムですね。やっぱ漕ぐときのピッチの安定したリズム。やっぱりピッチが上がったり下がったりっていうのが筋肉にかかる負荷。血流にも大きく影響してきますので、乳酸が出やすかったり除去しにくかったりとかそういったことがあるので、一定のリズムで走るということは心拍数をずっと同じリズムで自分のいいところでキープできるので長続きはしますよね」
自分の体に合ったピッチ走法と安定したリズム。それが世界トップレベルの、「中盤の加速力」につながっていた。

しかし、そんな佐藤選手には強力なライバルが。
アメリカのレイモンド・マーティン選手。ロンドンパラリンピック4冠。
リオでも佐藤選手を退け2冠に輝いた。
そんなライバルに勝利し、金メダルをとるために昨年から新たな取り組みもスタートしていた。
去年の春から取り入れた筋力トレーニング用マシーン。握力が弱く麻痺のある佐藤選手でも軽い負荷で筋トレができる。
世界記録更新のために、苦手としていたスタートの改善にも着手。さらにリオから比べて、6キロの減量にも成功。

そして…先月1日。関東パラ陸上競技選手権大会。
まずは1500m。
世界記録はアメリカ、マーティン選手がもつ3分29秒79。
課題としてきたスタートダッシュが決まり、ストロングポイントの中盤でトップスピードに。気温31度。更にホームストレートには向かい風が吹くシビアなコンディション。それでも佐藤選手はリズムをかえず、ピッチを落とさない。
最後のストレート…果たしてタイムは…3分25秒08。
これまでの記録を4秒以上更新する世界新記録。
さらに…その僅か1時間後の400m。疲労が残る中で、ベストに近いスタート。最初のコーナーを通過、ストロングポイントの中盤へ。リズムのいいピッチでぐんぐん加速。
なんと、この種目でも世界新記録。

東京パラリンピックまであと2年。佐藤選手は「中盤での加速力」を武器に、さらなる高みを目指す。

佐藤「ひたすら表彰台を1位をキープして、世界記録をさらに更新して2種目で金メダルを取るっていうのが僕の今の目標です」

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