ストロングポイント

毎週日曜 17:30~18:00放送

放送内容

第123回 車いすバスケットボール日本代表 後編

2018年07月01日 放送

先月開催された車いすバスケットボールの国際大会、三菱電機ワールドチャレンジカップ2018。日本代表は、グループリーグを全勝し決勝に進出。2年後の東京パラリンピックでの活躍を予感させる見事な全勝優勝。その歓喜の瞬間を上田晋也も会場で見届けた。
大会でひときわ輝きを放ったのが今大会の得点王、カナダ代表のパトリック・アンダーソン選手。パラリンピックで3度金メダルを手にした世界ナンバーワンプレーヤー。そのレジェンドを、上田さんが直撃した。
上田「率直に今大会振り返っての感想を伺ってもよろしいでしょうか?」
パトリック「聞いてくれてありがとう。48時間で4試合をこなしたので、今は正直、疲れているよ。でも結果には満足しているから気分はいいです。負けたけど善戦したからね。いろんな感情が混ざった心境かな。」
上田「若い人たちの精神的支柱としてすごく頼りにされているかと思うんですが、若手にはどんなアドバイスを普段なさっているんですか?」
パトリック「私は子供の頃、テレビで見たマイケル・ジョーダンに憧れていました。彼のようになりたいと思い、バスケットボールを始めました。だから若い選手にも、同じように大きな夢を抱いてほしいです。」
上田「パトリック選手のストロングポイントを伺ってもいいですか?」
パトリック「私のストロングポイントは、長い腕と短い脚。」
上田「確かに、リーチ長いな。また、手も大きいですね。これは良い鍋つかみになるわ。訳さなくていいですからね、ここは。」
パトリック「私が世界で活躍できているのはウィークポイントがないからだと思います。シュート、パス、高速での移動、ディフェンス、全てを出来るようにして、弱点を作らないこと。私は自分が1番とは思っていません。私よりシュートが上手い選手や速いだけの選手はたくさんいます。しかし、それら全てにおいて私は極めて高いレベルにある、それが私の強みです」
長身を生かしたポストプレーに、ドライブできりこんでのシュート。ゴール下で見せるテクニシャンな一面も。それに加え、抜群のシュート力。大会の3ポイント王にも輝いた。さらに、ゴールに繋がる、この正確なパス。なんでもできるプレースタイルこそがパトリック・アンダーソン選手のストロングポイント。
上田「今回の大会を振り返って、日本チームの印象も伺いたいんですけど。日本は率直にどんなチームに見えました?」
パトリック「日本チームには、とても感激しました。ここ数年間の日本のプレーを見て、良い選手が何人もいるのは分かっていたので良いプレーをするだろうとは予想ができました。日本には、成功に繋がる要素があった。スピードがあり、試合をコントロールできる。それにディフェンスもいい、日本が悪い試合をすることの方が考えられませんでした。日本のコーチ陣は大変だと思いますよ。いい選手がたくさんいる。コートにどの5人を出すか頭を悩ますでしょう。金メダルやプレッシャーのかかる試合なら、なおさらです。まあ、コーチにとっては嬉しい悩みでしょうけどね」
上田「ちなみに、何歳までプレイヤーとしてはおやりになりたいですか?」
パトリック「一日一日精一杯やるだけです。年齢的にいつまで出来るか約束できません。目標は2020年の東京パラリンピックです。出場するのは簡単ではありません。でも、私たちはプレー出来ると信じています。2020年、私は41歳になっています。決して若くはない。2022年のトロントの世界選手権まで出来れば続けたいとは考えています。東京パラリンピックは集大成です。特別な大会にしたいし、燃え尽きたい。願わくばメダルも獲得したいです。」

全勝で優勝を果たした日本代表。
及川ヘッドコーチに大会を振り返っていただくと。
及川「まず全勝で勝てたっていうのは本当に素晴らしい。今までになかった歴史的なことだと思います。それだけ選手たちがパフォーマンスを出してくれたことっていうことは本当によかったというかホッとした感じですよね。いろいろ試行錯誤して何とかしていい成果を出したいと思って試行錯誤してきた中で、非常にこういった中でチームが一つのいい結果を出せたっていう事は一つ自信になった。やっと自信になれるかなっていうのは正直に思っているところですね。」
大会を通して、終盤に試合を決めることが多かった日本。この展開こそが、世界と戦うためのゲームプランなのだという。
及川「試合が間違いなくもつれるっていう戦いが一番想像しやすい我々の勝ちゲームだと思うんですね。10点差、20点差離して確実に勝つみたいなことは東京2020にはできないと思うので、常に接戦で勝ち上がるっていうゲームプランのなかでチームを作ってきた成果が出たかなっていう。だから後半が間違いなく勝負なんですね。だから前半リードしてても前半負けてても、実はあんま関係ないっていうそういうメンタリティーが作れているチームになっていったっていうのはすごい良かったですね。」
接戦で競り勝てる、後半に強いチーム作り。この戦い方で、2020年、日本はメダル獲得を狙う。さらに求められるのが、若手の成長。実は上田さんとのインタビューの中でパトリック・アンダーソン選手は2人の若手選手の名前を挙げていた。
パトリック「去年11月に日本へ来た時に、7番のタク(古澤選手)、5番のレン(鳥海選手)に会いました。1on1をしたんですが、そのとき“ただの若者だから気楽にやるように”と言われたんです。しかし、2人はとても速く、身体能力が高く私に対して果敢に仕掛けてきました。互いを知る良い機会となりました。彼らはとても謙虚で、貪欲。自信家で、バスケットボールに対して研究熱心でした。私は自信に満ちた若い選手とプレーをすることが好きです。2人は私に敬意を示してくれた一方で、私を負かそうとしてきました。その気持ちが嬉しい。彼らを尊敬します」
23歳以下日本代表で古澤選手と鳥海選手を指導してきた京谷アシスタントコーチは今大会の2人をどう見たのだろうか?
京谷「古澤に関してはやっぱり、そのプレイの安定性というのがちょっと欠けていたかなっていう。好不調の波がちょっと大きくてメンタル的な部分だと思うんですけれども、能力的には高いですし、これから日本を背負っていく側のプレイヤーだと思っているので、そういった部分はこれから経験を積みながらやっていけると思いますけれども、ただやっぱり彼の3Pというのは非常にポイントポイントで効果的にチームを助けてくれていたので、そういった部分ではその強気というか、そういう姿勢はすごく良かったかなというふうに思いますけれどもね。鳥海に関しては、どちらかというと僕は彼のディフェンスという部分を非常に評価していて、彼がカナダ戦であってもパトリック・アンダーソン選手と遜色ない走力を見せたりとか、そういった意味ですごくこうディフェンスの部分で献身的にチームのために動いてくれていた。まあ、ディフェンスの部分では100点はあげられないですけれども80点くらいあげられるかなっていう、それくらい非常に良いアグレッシブなディフェンスをしてくれたなと。今、ダブルエースって誰が言ったか分からないですけれども、藤本、香西ってなっていますけれども、そういう事を言わせないくらい彼らがもっともっと存在感をだしていかないと日本はレベルアップしていかないでしょうね。今以上にはね。」
原動力となったのが若い才能、22歳の古澤拓也選手と19歳の鳥海連志選手。
その若手コンビを上田さんが直撃した。
上田「見事な優勝でございました。率直なお気持ちをうかがってもよろしいですか?」
古澤「やっぱり去年の雪辱を果たせてすごく嬉しいです。」
上田「今大会を振り返って、ご自分の自己採点を100点満点で点数をつけていただいてもよろしいですかね」
上田「じゃあ見せてください、お願いします。60点!なるほど。どの辺で60点だったんでしょうか?」
古澤「初戦のドイツ戦、昨日のカナダ戦、その2試合は自分としては納得のいく出来だったんですけど、昨日のオーストラリア戦と今日のオーストラリア戦については自分の中でもっともっと出来ることはあったし、試合の中で修正しないといけない部分はたくさんあって、後はそこは伸びしろだと思っているんで、その40点。本当はもっと低くしたいんですけど。」
上田「あら、そうですか。まあ、優勝してテンションも上がっているし。どの辺が特に課題なんですか、ご自分の中では?」
古澤「自分の中でオーストラリアのような高いチーム、またフィジカルでくるチームに対して、自分はアウトサイドのシュートをより正確に入れていくという、そこをもっとできると、相手はジャンプアップしてきているのでもっともっといいプレーができたかなと思っています。」
上田「やっぱり3Pの精度をもっと上げていきたいなと」
古澤「やっぱり3Pも自分は入りだしたら止まらないんですけど、入るまでの短さを、より次の大会に向けて調整したいなと思っています。」
上田「今大会を振り返っていかがでしたか?」
鳥海「非常に苦しい、全てがクロスゲームな、とても苦しいバスケットボールではあったんですけど、勝ちきる、強いチームに勝ちきるというところが自信につながりましたし、本当に良い雰囲気の中でバスケットボールができたかなと。」
上田「たくさんのお客さんの大声援もありましたしね。今、古澤選手にお話を伺っていたんですけど、古澤選手が自己採点で100点満点の60点だとおっしゃるんですよ。鳥海選手からご覧になっていて、古澤選手、そんなに点数低かったです?」
古澤「チームの軸になる選手で、任される役割もかなり大きい選手なので、それなりのアンサーをしていかないといけない選手ではあるんですけど、今日はちょっと調子が悪かっただけで、チームに与える影響というのはすごく大きいので、自分は良くやったと」
上田「後輩ですよね、すごく上から言っていますよね、その割には。鳥海選手からご覧になっていても、古澤選手は今日は調子悪かった?」
鳥海「ちょっとね、はい。」
上田「やっぱり調子悪かったんだ」
古澤「すごく調子悪かったですね、今日は。」
上田「だって後輩にこれだけ言われるぐらいですからね。」
古澤「でも、これがいつもです。」
上田「そういう間柄なのね。鳥海選手にも、100点満点で自己採点をつけてもらってもよろしいですか。別に、古澤選手が何点だからとか何も考えずに。出してもらいましょう。75点。もうちょっと先輩に気をつかいなさい。先輩が60点って言っているんだから。自分では75点、どの辺が良かったですか?」
鳥海「自分がコートに立つ役割というのは、ディフェンスに大きくあると思っていて、そこでしっかりと日本を引っ張れたというか、自分の中では手応えがあったので、75点で今日はいいんじゃないかなと。」
上田「優勝したご祝儀的なものも含めてって事でしょ、自分の中では。課題はどの辺ですか?」
鳥海「オフェンス面で自分のチャンスを作ることと、周りをチャンスメイクして生かしていくところのバランスですかね。やっぱり自分も輝きつつ周りを生かすというところが今後まだまだレベルアップできるところかなと思います。」
上田「古澤選手からご覧になっていて、鳥海選手のベストプレー、記憶に残っているのはどの辺ですか?」
古澤「今日は比較的、いつも以上に調子いいなと思っていたんですけど、その中でも速攻のレイアップシュート、あれについては良くやったなと僕は思います。」
鳥海選手のパスから速攻を仕掛け、豊島選手のレイアップシュートをアシスト。オーストラリアとの接戦、試合の流れを一気に日本へ引き寄せた。
上田「古澤選手のベストプレーは、今大会では、どの辺ですか?」
古澤「昨日、拓の3Pから日本に流れが来たのが」
グループリーグのカナダ戦、1点ビハインドから逆転の3ポイント。このプレーで勢いづいた日本は全勝で決勝進出を果たしました。
鳥海「本当にチームにいい影響を与えてくれたところあそこはやっぱりチームも盛り上がりますし、拓自身も波に乗ってくれますし、そこが一番良かったところかなと思います。」
上田「じゃあ、2020年に向けての意気込みをお願いできますか」
古澤「2020年は、今日と同じように自分たちのやるべきことをやって、金メダルを取るというその目標だけを追い続けたいなと思います。」
鳥海「2020年、長いようですごく短い期間だと僕は思うんです。毎日毎日どれだけ練習できるか、どれだけバスケットボールのことを考えられるか、そこに尽きると思うので、ここでもう一度金メダルを取れるように、明日、明日はレストしますね。明後日から。」
上田「明日ぐらいはとりあえず休みましょう。明日は、ちなみに何をなさる予定ですか?」
鳥海「明日はたぶんずっと寝てるかなと。」
古澤「ミーティングですね。」
上田「ミーティングは出なさいよ、ちゃんと。」
鳥海「ミーティングは出ます。帰ってからですね。」
上田「ミーティング以外は?寝てる?」
鳥海「たぶん寝るかなと思います。」
上田「古澤選手は明日は?」
古澤「ミーティングはしっかり出て、後は自分を振り返って、レストするのも仕事なので、休むということに集中したいなと思います。」
上田「ちょっとカッコいい言い方したけど、要は寝てるということでしょ。」
古澤「カッコよく寝ます。」
上田「最後、ちょっと先輩が盛り返そうとしたのかな。お疲れのところどうもすみませんでした。おめでとうございました。」

進化した戦いで世界の強豪に競り勝ち、見事に優勝を果たした日本代表。
2020年のメダルへ、戦いはまだまだ続きます。

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