ストロングポイント

毎週日曜 17:30~18:00放送

放送内容

第114回 車いすフェンシング 安直樹③

2018年04月22日 放送

車いすフェンシング 安直樹(やすなおき)。
お互いの車いすを固定した状態で、剣を突き合い、ポイントを競う車椅子フェンシング。
フルーレで日本選手権3連覇と国内敵なし。
2年後の東京パラリンピックでメダル獲得が期待されている。
そんな彼には世界で勝つための「武器」がある。

『パワーを生かした剣の振り込み』

一瞬の駆け引きで勝敗が決まる車いすフェンシング。
攻撃後、前のめりとなって、がら空きとなった相手の肩口へ防御不能の一撃。
この「振り込み」こそが、彼のストロングポイント。
この技を武器にフルーレで快進撃を続け、絶対的な強さを誇ってきた安。
しかし…今、フルーレの練習は…
安「いやほとんどやっていない。この半年フルーレ剣を持っていない」
東京パラリンピックまで、わずか2年。なんと実績のあるフルーレを捨てるという、まさかの発言。実はその裏で、大きな決断に辿り着いていた。
これまでの実績をかなぐり捨て選んだ新たな道。
その決断へと踏み切らせた、真意に迫る。

ここで車いすフェンシングのルールを紹介。
使用する剣の種類によってフルーレ、エペ、サーブルの3つに分かれる。
各種目によってポイントとなる有効部分が変わるのが大きな特徴。
背中まで有効なサーブルに対し、有効の範囲がもっとも狭いフルーレ。
安選手の専門も、このフルーレだった。
試合は決められた時間内に指定のポイント数を先に奪った方が勝ち。
また、腹筋の機能があり、自力で体制を維持できるかでAとBのカテゴリー分けがある。そして、健常者のフェンシングともっとも違うのが…
地面に固定された車椅子。互いに手を伸ばせば届く距離で激しい攻防が繰り広げられる。
この車いすフェンシングで安選手はフルーレで3連覇。
その活躍には彼のあるスポーツ経験が関係していた。
14歳の時、病気のために受けた手術が失敗。
日常生活は歩いて過ごせますが左股関節が曲がらない後遺症を負う。
しかし、ある競技と出会いパラスポーツ界のレジェンドと言われる存在に。
そのある競技とは…車いすバスケットボール。
ぶつかり合いながら急激なターンで相手をかわす激しい競技。
安選手は持ち前のパワーで、すぐさま国内トップの選手となり、2004年、26歳でアテネパラリンピックの日本代表に。
そして、3年前、車いすフェンシングに転向。
バスケ時代に培った強靭な筋力を武器に日本選手権3連覇という快挙を成し遂げる。
しかし、東京まであと2年と迫ったこの時期、安選手は大きな決断をしていた。
安「メインの種目をサーブルに変更しました。この半年ほとんどフルーレ剣を持っていない」
なんと結果を出していたフルーレをやめ、ルールの異なるサーブルでの東京挑戦に踏み出した。その理由は?
安「ワールドカップや世界選手権でいろんな強豪の選手と壁が大きいのがすごく大きいのがわかっていまして、その壁を乗り越えるのに何をしたらいいのか
サーブルだと相手に剣が触ればランプがつくのでフェンシング歴が少ない自分としては(東京までの)残りの年数も考えて(メダルの)可能性があるんじゃないか」
すべては東京でのメダル獲得のため。
しかし、まだ慣れない種目に苦戦中・・・。
今年行われたワールドカップでは30人中22位と惨敗。
そんな安選手、追い風となる大きな環境の変化を迎えていた。
指導者としてサーブルの第一人者が加わった。長良まどかコーチ。健常者フェンシングで日本選手権7連覇の実績を持つ女子サーブル界のレジェンド。
去年9月から安選手を指導。コーチの考える安選手のウィークポイントは筋力だけに頼りすぎ、単調になってしまう攻撃。パワーだけではサーブルでは通用しない…この窮地から抜け出すためには新たな武器が必要。
それこそが進化したストロングポイント。

『緩急が生むスピードアタック』

安「リラックス(弛緩)した状態からのアタック」
フェンシングで言う「リラックス」とは筋肉の弛緩状態のこと。
攻撃に移る前にあえて力を抜き、動きにメリハリをつけることでよりスピードが増していた。
安「とにかく今すごく苦しい。ずっとコーチと考えて(勝つ方法を)探しているがこれと言った正解がない。でも1つづつ信じていくしか今はない。暗い部屋だとしたらこれくらいのひかりが薄っすら見えてきている。ただそのペースで大きくなっていくというより、何かきっかけさえ掴めれば一気に変われる。もちろんそれを信じて挑戦している。この光が大きな光になってくれるといい。」

より強くなるために、王者から再び挑戦者へ。
東京パラリンピックでのメダル獲得を目指し、ストロングポイントを武器に安選手の挑戦は続く。

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