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放送内容

第112回 パラ卓球 茶田ゆきみ②

2018年04月08日 放送

パラ卓球 茶田ゆきみ。
世界を舞台に躍進する日本パラ卓球界のエース。そんな彼女には誰にも負けない武器がある。
『キレのあるツッツキ』
ボールを突っつくように返す通称「ツッツキ」。驚きは強烈なバックスピン。
さらなる高みを目指して世界と戦うための新たな秘策とは?
その飽くなき挑戦を追った。
9歳の時、原因不明の病気にかかり、両足、腹筋、背筋の感覚を失った。現在は、静岡から上京し、東京で一人暮らし。東京パラリンピック出場を目指し、目覚ましい成長を遂げている。
初めて国際大会に挑んだ2015年の世界ランキングで26位だった茶田選手。
翌年の2016年には19位に浮上。そして今年は14位に。たった3年で世界ランクが12もアップ。
腹筋、背筋が使えない茶田選手、日頃の地道な反復練習が急成長を支えている。障がいの程度によりクラス分けがされているパラ卓球。クラス1から5は車椅子、6から10は義足などを利用した立位。体幹のない茶田選手は車いすのクラス3に属している。現在、世界ランキング14位の茶田選手。その最大の武器は『キレのあるツッツキ』。
どんなテクニックなのか改めてご紹介しよう。
「ツッツキ」とは、ボールをラケットで突っつくように返す技。この技を覚えたのは中学生の頃。
茶田「健常者の子達とやっていたので、どうしても私の方が守備範囲が狭くなりますし、攻撃でもなかなか勝てなかったので、下回転をかけてツッツキで相手に気持ちよく攻撃をさせないように、相手に勝ってやろうという気持ちでやっていました」
茶田選手のツッツキは打つ瞬間に加える強力なスピンが特徴。
一般的なツッツキに比べ手首のスナップを効かせることで強烈な高速回転を生み出している。
このボールを普通に打とうとするとボールは飛ばず、ネットの前に落下…強引に打つと上に飛んでしまう。
そんな相手のミスを誘うツッツキを武器に世界の強豪と戦ってきた茶田選手。
2015年、韓国で行われた彼女にとって初の国際大会。
自慢のツッツキで2勝をあげ、世界ランクは26位から19位へアップ。
しかし翌年のスロベニア大会では、全敗。続く中国大会でも全敗。
その後、ほとんどの国際大会で勝利をあげられず世界ランクも伸び悩む。
茶田「勝てないですね。キレてるツッツキは最初は相手が打てなくてミスしてしまったり落としたりすることはあるんですけど、だんだん私の回転に慣れてくると、それに合わせてしっかり打ってくるので、ツッツキだけでは勝てない」
しかし、去年5月に行われたスロベニア大会。
茶田選手の卓球スタイルが激変した。それまでのミスを誘うツッツキではなく、鋭いドライブで相手を翻弄。攻撃スタイルへと大きく変貌を遂げた。
そして去年11月大阪で行われたのが、東京パラリンピック出場に繋がる重要な大会。迎えた準決勝、ここでも茶田選手は正確なフォアハンドで果敢に攻撃、勝ち進む。
そして決勝戦。
1セットも落とすことなく見事優勝。日本一の栄冠を掴み取った。
その要因ともなった攻撃卓球。
この日の得点割合はツッツキが38%、ドライブなどの攻撃が31%とほぼ同じ割合。国際大会のデータでも2015年は攻撃による得点がわずか18%だったのに対し、去年末は32%に増加。
相手のミスを誘うツッツキ重視の戦法から攻撃卓球へと変貌を遂げた茶田選手。
そこには様々な課題が。
茶田「体幹がないのでフォームが大きいと体のバランスが崩れるので、なるべくフォームを小さく体の重心がぶれないように改善した」
確かに以前は、肘を伸ばす際、バランスを大きく崩していた。
肘が伸びると体はのけぞり大きく揺れる、そこで肘を伸ばさずフォームを小さくするとバランスは崩れない。
フォームの改造によって素早い攻撃が可能になった茶田選手。
実は、進化のポイントはもう1つ、ボールを打つコースにも。
茶田「車いすだと動ける範囲が限られていて、届かない範囲というのが出てきてしまう。基本的にフォアの遠いところのボールとバックの遠いところ。ミドルのフォアを出すかバックで出すか迷ってしまう。この辺りが難しい、私も苦手な場所。海外の選手は体も大きく腕も長いのでそこを狙ったところで全然届いてしまうんですね。そういう選手は体に近いボールは苦手だと思うのでミドルに深い球を送ったり、というふうに考えて試合していました」
自らも正面に来た球を返す練習、あえて遠くではなく相手の正面を狙い打つ。
世界で勝利するために研究に余念がない。
生まれ変わった茶田選手。
去年2月、アメリカで行われた大会では予選を一位で通過。
そして決勝で当たったのが世界ランク一位のスウェーデンの選手、茶田選手は初対決。取り組んできた攻撃卓球がどこまで通用するか。夢中でラケットを振り続けた。
結果は敗戦も世界女王から1セットを奪った茶田選手。世界ランクも16位から14位にアップ。しかし、彼女には新たな課題が。
今年3月、大阪で行われたジャパンオープン。
障がいのクラス分けのない日本一のパラ卓球選手を決める大会。
茶田選手は順当に勝ち進み決勝トーナメントへ進出。
相手はこの大会で過去6度の優勝経験を持つ吉海選手、障がいのクラスは茶田選手より一つ軽い4です。
試合はまず茶田選手が1セット目を奪取。
しかし、その後にミスを連発。2セットを連取され残念ながら敗退…
気になったのが、対戦相手・吉海選手のラケット。
粒高(つぶだか)というラバーを貼っているそう。これは一体?
茶田「卓球のラバーは、裏ソフトラバー・表ソフトラバー・粒高ラバーの3種類があるんですけど、粒高は粒が高いので表ソフトよりも粒が高い、相手の回転が逆になって返ってくるんですね」
高いツブによって、ボールが逆回転で戻るのが粒高ラバー。
つるつるの裏ソフトは摩擦力が強く、回転をコントロールすることができる。
茶田「中国・韓国・タイですね、私のクラスでいうとほぼ粒高ラバーを使っているひとがほとんど、そういうラバーで押されるのが苦手」
世界ランクを確認すると確かに中国や韓国などアジアの選手が上位に並んでいる。
これまでアジア選手との対戦成績は2勝16敗、勝率わずか11%の茶田選手。
このままではいけないと現在、粒高ラバー専門のコーチと猛特訓を行っている。
猛特訓に励む茶田選手の目標は?
茶田「東京パラに出場すること、メダルを獲ることは目標なんですけど、そのために海外の選手もみんな一人一人違うので、その一人一人のプレースタイル一つ一つの課題をクリアにしてゆくのが目標です」

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