ストロングポイント

毎週日曜 17:30~18:00放送

放送内容

第111回 車いすテニス 眞田卓

2018年04月01日 放送

車いすテニス 眞田卓(さなだ たかし)。
現在、世界ランク8位。レジェンド、国枝慎吾選手を追う日本男子期待の星。東京パラリンピックでメダル獲得を目指す彼には、世界に誇る武器がある。『相手を圧倒する パワーストローク』相手の攻撃を封じる力強いストロークで押し込み、常にゲームを支配。特に、フォアハンドのスピードは世界トップクラス!その威力は・・・あの国枝慎吾選手も認めるほど。
国枝「ビッグフォアで相手をなぎ倒していく。トップレベルだと思いますね。」
身長166cm。けして大きくはないこの体から、なぜ世界を圧倒するショットを放つことができるのか?そこには、全身のエネルギーを一気に爆発させる、磨き上げられた独特の感覚があった。東京での表彰台を目指す、闘いの日々に迫る。
テニスコートにやってきた眞田選手。日本のトップ選手が利用する、ナショナルトレーニングセンターです。ラケットを握る前に、まずは入念なストレッチから。眞田選手は、右足の膝から下が切断されていて、普段は義足をつけて生活。テニスのときに使うのは、競技用の車いす。この日は、車いすテニス日本代表・中澤監督とのマンツーマン・トレーニング。次々と鋭い球を打ち込む眞田選手、ウワサ通りのパワーショット。どんな感覚で打っているのか?
眞田「意識的にはコンパクトなスイング。速いスイングを体で回していく。ケガのリスクもあるので。1箇所に肘とか手首とか肩とかに一気に負担が来て怪我の原因になるというのがリスクがありますね。こういう速いストロークというのは。なるべくリスクを減らしてくっていうところを意識しながらやっていく」
この鋭いショットは諸刃の剣。ギリギリの感覚を日々磨いている。
ここで上田のQ。このコーナーではわたくし上田晋也が抱いたふとした疑問を解明して参ります。今回のギモンは。車いすテニスで使う競技用の車いすには細かい規定などあるのでしょうか?
眞田「あんまり細かい規定はないですね。」「車いすテニスはクラス分けがあまりない。色んな障がいがいるが切断から下半身不随まで同じ土俵で戦うので、選手によって違ってくる」
では、世界の選手を見てみると・・・オランダのジェシカ・グリフィオン選手。両脚をくっつけて固定する、特殊なカバーがついています。フランスのレジェンド、ステファン・ウデ選手。車いすをよく見てみると・・・座面がなく、足は固定され体と一体化。特注品で、お値段はなんと推定1500万円だそうです。眞田選手の車いすは・・・小さな車輪が前後に付いています。これは?
眞田「ここの前に2つあることによって体重をかけた時のコーナリングの安定さが変わってくる。昔は前に1つ、後ろに1つだったが、ターンの時に転倒することが多かった。」
確かに安定しそうですね。じゃあ今はもう転ばないですか?
眞田「毎試合1回は転んでいますね」「多い方だと思います」
これもアグレッシブなプレーの結果。でも転ぶのは1試合に1回ぐらいに減ったとのことで、安心しました。ところで、一番気になるのは、脚の間にあるそのパーツなんですけど・・・
実はここにパワーストロークの秘密が隠されているんです。日本人離れしたパワーストロークを武器に、世界ランク8位につけている眞田選手。どのようにして、ここまでの選手になったのか?1985年栃木県に生まれた眞田選手。小学生のときは空手を習い、中学ではソフトテニス部で活躍。19歳のとき、バイクの運転中に事故に合い、右ひざから下を切断。その時、リハビリ施設で出会ったのが、車いすテニス。
眞田「当時は自分が障がいになりたてだったので障がいを持った人との交流が自分の支えになっていた」
持ち前の運動能力ですぐに上達。この頃はまだ「楽しむ」方が優先。向き合い方が変わったのは車いすテニスを始めて5年、国内のトップ選手が集まる全日本マスターズで3位に入賞、この競技に人生をかけようと決意する。猛練習を重ね、世界トップ10に名を連ねるまで成長。メダルも期待されたリオ・パラリンピックでは、シングルス9位、ダブルス4位。この悔しさを糧に眞田選手、東京での表彰台を目指す。そのカギとなるストロングポイントが、「相手を圧倒するパワーストローク」。
眞田「相手に時間を作らせない。あまり長いラリーをしないで速い展開で速くウィナーを取る。自分のストロークが強いという世界でトップクラスだという自信はある」
日本代表でともに戦う国枝慎吾選手も、眞田選手のストロークの威力を絶賛。
国枝「ビッグフォアで相手をなぎ倒していく。トップレベルだと思いますね」
その威力とは?眞田選手にラケットを提供している会社の方々に、パワーショットのデータを測定してもらう。使用するのは、野球の投球分析にも使われている、最新鋭の機器「トラックマン」です。さあ、どんな数値が出るのか!?
車いすテニスでは、130キロ出れば速いそうですが・・・果たして、スピードは。136.7キロ!さらに、凄いのは、打球の弾道の低さ。いまのショットは地面から3度の角度です。この角度とは、ボールを打った時の地面に対しての角度。角度が小さいほど、弾道も鋭くなります。速いうえに、ネットの上ギリギリ!これが世界レベルのパワーストローク!さらに・・・144.6キロ!角度も鋭い数値。
野竹さん「平均で140出せてる 角度は5.9 角度低めで鋭い球」
平均140キロというのは、相当速いですか?
野竹さん「かなり速い。世界トップクラスと言っていい」
ちなみにもう一声、150キロっていうのは難しいんですかね?
眞田「あ、それは何回かあります」
そうですか! いま出して頂くなんてのは・・・
眞田「出せと?」
ということで恐縮ですが、「150キロへのチャレンジ」お願いしました。果たして!?
でました、151キロ!
野竹さん「あーアウト」
眞田「アウト?」
素晴らしいショットでしたが、惜しくもギリギリアウト。150キロは、コントロールも相当難しくなるようです。チャレンジ再開。これはどうだ!コートには入ってます。お見事、151.5キロ!しかも角度は1.5度。驚異の超低空パワーショットです。いやー恐れ入りました。
眞田「これがもっと確率よく入ってくれば、もっと上を目指せるんじゃないかと思います」
しかし、なぜ眞田選手はこれほどのパワーストロークを打てるのでしょうか?そこには、研ぎ澄まされた「あるメカニズム」が隠されていた。
眞田「筋力を鍛えるというトレーニングよりかは、その筋力を上手く使う運動連鎖。」
世界トップのパワーストロークを生み出す「運動連鎖」とは?ここは眞田選手がフィジカルトレーニングを行う、千葉県にある専用施設。トレーナーの吉部さんは、以前、北海道日本ハムであの大谷翔平選手も指導したフィジカルのプロ。世界屈指のパワーストロークを生む、トレーニングとは?いったい・・・何やら、ボールを持ってきた吉部コーチ。このボール、重さは3キロ。
眞田「筋力を鍛えるというトレーニングよりかはその筋力を上手く使うトレーニング。運動連鎖で強い安定したボールを打つ」
眞田選手のパワーストロークの秘密、それが「運動連鎖」。スーパースローで見てみます。
強いショットを打つためには、腕だけでなく全身の力をラケットに伝えることが必要。
眞田選手は、下半身から順に、腰、腹部、胸、肩、腕、そしてラケットと、綺麗に回転している。腕だけでなく、全身を連動させて打っている。無駄のない、効率の良い運動連鎖が、強烈なショットを生んでいる。さらに眞田選手、ある特有の感覚を持つと吉部コーチは言います。
吉部「一番の特徴は力が出せる。単純な筋力の強さではなく、ラケットがボールに当たる瞬間に自分が出した力の何%が伝えられるか。彼の優れた所。それをどう活かせるかを日々考えてトレーニングしています」
さらに、日本代表の中澤監督は、眞田選手にもう一つ優れた能力があると教えてくれました。
中澤「ボールをとらえる距離感。インパクトって言うんですけど。1番力が出るところでボールを捉えるということが毎回正確に出来るのでパワーが出やすい。」
テニスには、最も力が出るポイントが!ここから前後左右、少しずれるだけで威力が大きく変わってしまうんです。
中澤「世界のトップ選手たちも皆体の使いかたは上手く出来るように練習しているが、その距離感を正確にできている所ももう一つの彼の強み」
「運動連鎖」と「精密なインパクト」が組み合わされたパワーストローク。さらに、眞田選手の武器がもう1つ!2月のある日。眞田選手がやってきた、こちらにある会社が、眞田選手のパワーストロークに大きく関わっているのだとか。車いすの開発会議。こちらの会社が眞田選手の義足と競技用車いすのデザインを担当。どちらも、世界に1つのサナダモデルです。そして、眞田選手の車いすといえば一般的なものには見られない、この部分!ニーグリップと呼ばれ、両脚で挟み込むことで、大きくプレーが変わるのだとか。
眞田「とっても重要。内腿も使えるというところでしっかりと下半身の力を連鎖させて上半身につなげる。力を生み出してこのスイングする時の運動連鎖にも大きく関わってくる」
眞田選手の車いすテニスにかける熱意が多くの人を動かしている。そして、目指す先には・・・
眞田「東京では絶対メダルが欲しい。ホントにたくさんの素敵な出会いで自分で良いのかなって思うぐらい。良い企業さんがサポートしてくれてメダルを獲って、自分も皆も喜べる結果にしたい」
全ては、東京の表彰台に上るため。眞田選手のストロングポイントは進化を続ける!

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