ストロングポイント

毎週日曜 17:30~18:00放送

放送内容

第109回 パラスノーボード 成田緑夢

2018年03月17日 放送

兄は、2006年のトリノオリンピック スノーボードハーフパイプに出場した成田童夢。そして姉は同じく元日本代表の今井メロ。3兄弟の末っ子がグリム選手。兄たちと同じく、スノーボードの道へ。しかし、選んだのはハーフパイプではなくスノーボードクロス。オリンピックでも行われるこの競技はジャンプ台などがあるコースを複数で滑り、順位を競う。その「スノーボードクロス」で今シーズン世界ランキング1位!世界トップに上り詰めた彼には誰にも負けない武器がある。
緑夢「圧倒するスタートダッシュ」
スタートで一気に飛び出し、そのまま先行して逃げ切る。それが彼のスタイル。今シーズンの活躍でパラリンピック初出場!メダル獲得へ、周囲の期待は高まるが、本人は・・・
緑夢「パラリンピックでメダルを取ることが 僕の夢ではないんですよね」
この言葉の真意とは?彼が見据える先にある大きな夢、その挑戦を追った。

先月、長野県・白馬。ここで行われていたのは、パラスノーボードの日本選手権。去年のこの大会、リオパラリンピックで銅メダルを獲得したパラ陸上の山本篤選手がスノーボードに初挑戦し多くの報道陣が来ていましたが・・・
今年はそれを超える注目度!中心にいたのが、成田緑夢(ぐりむ)選手。
今シーズン、パラスノーボード・ワールドカップ総合優勝!ピョンチャンパラリンピックのメダル候補。「緑」に「夢」と書いてグリム。個性的な名前。元々はグリム選手もスノーボードに夢中な少年だった。しかし、トリノ後に兄たちが競技から離れたことで一度スノーボードを止めた。その後はトランポリンやフリースタイルスキー、ウェイクボードなど様々なスポーツに挑戦。特にトランポリンでロンドン五輪最終候補。さらにフリースタイルスキーでは世界ジュニア選手権で優勝するなど、どちらもオリンピックが狙える位置にいた。ところが2013年。トランポリンの練習で大ケガ。左足のひざから下にマヒが残る状態に。19歳のころでした。
緑夢「普通に生活するには歩けて階段のぼれたら意外と苦を感じなかったんですよね。でも初めて雪に乗った瞬間」「あ、君の足うごかなくなってるよっていうのが筋肉を通してだったり脳にガツンときた瞬間だったんですよね」「その瞬間に、僕の足は動かなくなったんだみたいな結構多分オリンピック無理かなみたいな」
それでも諦めることはありませんでした。競技に復帰できることを信じ、リハビリを続けた。その結果、ウェイクボードでは以前と近い状態まで体を動かせるまでに回復。健常者の大会にも出場。するとSNSを通じて、あるメッセージが。同じような障がいの方からでした。
緑夢「『僕も同じような障がいをもっていて緑夢君のそういう活動を見て勇気をもらったと感動をありがとう』っていうメッセージをもらったんですよ。僕がスポーツすることによって、こうやって人に影響を与えることができるのかって思ったんですよね」
スポーツは自分が楽しむためだけではなく誰かのためにもなる・・・
パラリンピックを目指すのは自然の流れでした。そしてグリム選手は、すぐに行動に移します。
緑夢「パラリンピックの競技を今までやっていなかったので、そこからどういう競技なら出れるのか、いろんな競技団体に電話してその電話した先が陸上であり、スノーボードでもあった。」
紆余曲折を経てたどり着いたのは、かつて兄たちと共に慣れ親しんだスノーボード。これならパラリンピックを狙えるかもしれない・・・グリム選手は確信しました。パラスノーボードは2種目、「スノーボードクロス」と「バンクドスラローム」。「スノーボードクロス」は、「ウェーブ」と呼ばれる連続した起伏やジャンプ台のあるコースを2人で滑り、順位を競う、レース競技です。一方「バンクドスラローム」は各選手が1人ずつ3回滑り、タイムを競う競技。白馬で行われた日本選手権、種目は「スノーボードクロス」。過去にグリム選手は、この種目を連覇、得意としています。まずは初日の予選。選手1人でコースを滑りタイムを測定、2回滑り、早い方の記録で順位が決まります。予選は、あいにくの天候。この吹雪の中でもグリム選手は、53秒37の好タイムをたたき出し、さすがの1位通過!2日目、決勝トーナメント。予選とは一転、この日は快晴。視界もバツグン!絶好のレース日和。決勝を争うコース、スタート直後にあるのは連続した起伏の「ウェーブ」さらに角度のあるカーブ「バンク」が6つここが勝負どころ。最後にはジャンプ台が設置してある。まずは準決勝。相手は予選タイム3位の半崎義達(はんざきよしたつ)選手です。スタート直後にグリム選手が先行すると・・・ここで半崎選手が転倒!そのまま独走状態でグリム選手がフィニッシュ!決勝へコマを進めた。決勝。パラリンピック前、最後の戦いを制し、勢いづけたいところ。相手はグリム選手と同じくワールドカップでも活躍する田渕伸司(たぶちしんじ)選手。決勝でもスタートから一気に飛び出したグリム選手!第一バンクを先に通過。差をつめられることなく、常にレースを支配。圧倒的なスピードをキープし・・・そのまま逃げ切りゴール!レース後、田渕選手は・・・
田渕選手「スタートが早い・・・追いつけない!」
鮮やかに大会3連覇を達成!
緑夢「まだまだ改善点はあると思いますが成長はしていると思います。」
決勝でも見られたスタートから相手を突き放す滑り。彼のストロングポイント、「圧倒するスタートダッシュ」その秘密をひも解く。今回の日本選手権、いずれもスタートから先行。その重要性を本人は・・・
緑夢「場所取りなんですよね あんまり抜きどころがないんで一回前に出ちゃうと前に出るのには1でいいエネルギーなのに抜くのには3エネルギーがいるっていう動作が働いちゃうんですよね」
スノーボードクロスでは、コースの幅が狭いため、途中で相手を抜くには駆け引きが必要。そのため、スタートから先行、駆け引きで余計な体力を奪われる事なく、そのまま逃げきるのが、緑夢選手のスタイルです。スタートで先行するにはグリム選手曰く、2つのポイントが。1つ目は、スタートしてすぐ。
緑夢「スタートセクションとかはこう走り出しなので速度は遅いんですよね。その分 筋力がばーんって蹴ったりとか瞬発力でばーんって蹴るって動作があるんですよね」
スタートと同時に力強く体をひきつけ、勢いよく飛び出す。その勢いで、体が浮くほど!まさにロケットスタート!この瞬発力、やっぱり小さいころから続けているあのスポーツのおかげでしょうか?
緑夢「ウェイクボードがいきてると思います。リズムよく思いっきり引くみたいなコツなんですよ。その引く感覚と瞬発的に引く力がぱんって入れる力がなれてたのかなって」
の腕の力と瞬発力がスノーボードのロケットスタートに生かされていた。そして2つ目のポイント、それはスタートした直後に設置されていることが多い、連続した起伏、「ウェーブ」。このウェーブを滑る技術がグリム選手は卓越、スタートダッシュの勢いを殺さぬまま相手を突き放していた。その理由を対戦相手の田渕選手は・・・
田渕選手「上がる時にうまく吸収して下るときにぐっと押し込む」「トランポリンの選手だったのでどこで力を吸収して、どこで力をバネをばっとすのかそれが緑夢は抜けていますね」
ケガをするまではトランポリンでトップクラスの選手。スノーボードとの関係をグリム選手も、こう語っていた。
緑夢会見「全てのベースはその感覚だったり表現もトランポリンで体をいっぱい使うことによって生まれた感覚だったので、それもスノーボードでいきていると思います」
ウェーブでの動きを見てみると・・・体を大きく上下し体重を乗せるタイミングをとるのは、まさにトランポリンと同じ動き。体全体を使い、誰よりも早く、ウェーブを通過します。ウェイクボード、そしてトランポリン。これまでやってきたスポーツが今のストロングポイント「圧倒するスタートダッシュ」を生み出していた。

この日は、雪山ではなく東京・有楽町に。今日の予定は?
緑夢「4時から取材1時間してそこからイベントの打ち合わせ。イベントっていう感じです」今回のイベント、自身で出席することを決めたグリム選手。実はメディアへの対応、どのイベントに出て、どんなことを話すかなどほとんど1人で決めている。そこには明確な理由と目的がありました。
緑夢「シンプルに言うと技術のためですね」「練習時間が多くするためにはやっぱり取材時間を多く取っていると難しいので」「いかに効率よく例えば板にゴープロをつけるとすると1本練習がなくなるんですよ」「でもメディア共有フォルダで1本僕がゴープロで撮った映像をあげておけば僕のフリー素材なんでどこの局も使えるじゃないですか」
これまで撮り貯めた写真や映像を無償で使えるようにしている。メディアにとってはありがたい。
緑夢「僕もそれで嬉しいしそれで取材日が1日減ればその分練習できるしって、ともにいい関係が作れたらいいなと思います」
取材される側とする側がWIN=WINになるための徹底した準備。「成田緑夢」を自らプロデュースする、彼の意識の高さが垣間見えた。ピョンチャンパラリンピック直前、緑夢選手に目標を聞くと。
緑夢「パラリンピックでメダルをとることがこれ夢ではないんですよね。だからカラーにもこだわっていないんですよ。僕の最終ゴールっていうのが障がいをもっている人、怪我をして引退を迫られている人一般の人に夢や感動、希望、勇気を与えられるようなそんな素敵なスポーツアスリートになりたいっていうのが僕の夢なんですよ 。」
ピョンチャンオリンピックでの選手たちの活躍が日本中に感動を与えてくれたように、パラリンピックでもグリム選手が多くの人を勇気づけてくれることでしょう!
さあ、いざ、決戦の地へ!

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