ストロングポイント

毎週日曜 17:30~18:00放送

放送内容

第101回 柔道 北薗新光

2018年01月20日 放送

柔道・北薗新光選手。去年10月、ウズベキスタンで行われた視覚障害者柔道ワールドカップで、東京パラリンピックメダル候補に名乗りを上げる銅メダルを獲得。一本にこだわる彼の武器は、『変幻自在の連続技』。一つの技を仕掛け、それが無理とみるやすぐに次の技へと繋ぐ。視覚に障害があるとは思えない、この迫力満点の連続技こそ彼のストロングポイント!そこには、視覚に頼らない彼だけが持つ特別な感覚がある。決して諦めず、挑むことをやめない北薗選手、その強い思いに迫った。
北薗選手が柔道を始めたのは5歳の時。谷亮子選手の柔道を見て、いつか自分もオリンピックで金メダルを取りたいと大きな夢を描き始める。高校は神戸の強豪・育英高校に進学。柔道に打ち込む一方で、この頃から徐々に視力が低下。大学に進学するときの検査で、網膜色素変性症という病気が判明。視力を失い、ほとんど見えない状態になった。自分の視覚に障がいがあると、その事実に直面したとき、大好きな柔道をこのまま続けるべきか悩んだと言う。そんなとき、大学柔道部の先生から言われた一言が北薗選手の考え、そして人生を変えた。
北薗「やるもやらないもお前の人生なんだから自分で選べ」
自分の人生は自分で決める。当たり前のことに気付かせてくれた、その言葉が北薗選手の背中を押し、視覚障がい者柔道の合宿に参加。初めての経験に衝撃を受けたという。
北薗「組んで始めることで、すごくハイレベルな柔道をしていて、私の価値観がかわって、この世界に挑戦したいと思った」
そして2010年、視覚障害者柔道への転向を決断した。
健常者の柔道では、お互い離れた位置から試合が始まり、組み手争いをする。これに対し、視覚障害者柔道は、組んだ状態から始まるため、技がかけやすいのが特徴。顔が付きそうなくらい近い位置で試合がはじまり、両手が離れたら「待て」がかかり試合再開。そして、障害の程度によって3つのクラスに分けられ、北薗選手は、もっとも障害が重いB1クラス。しかし、このクラス分けは、ランキングポイントに影響するだけ。試合は、弱視、全盲など視力の状態によるクラス分けはなく、一般の柔道と同じく体重別のみで戦う。北薗選手のように、障害が重い選手にとっては厳しい世界。それでも、めきめきと頭角を現し、日本代表に選ばれると、初めてのパラリンピック、ロンドンでは100キロ級に出場し7位、続くリオデジャネイロパラリンピックでは、73キロ級に出場し、5位入賞。
兵庫県警が北薗選手の練習拠点。日頃から機動隊の猛者にまじって技を磨いている。兵庫県警は、去年、警察柔道の全国大会で優勝した強豪。その兵庫県警での練習風景。コーチの指示に反応して、その方向へ素早く動く練習を繰り返す。
北薗「いかに早く、相手の技を反応し、体の向き、体をさばくかと、体自体に染み込ませるというのを行なっています。反射神経を鍛えることで、技に影響がでる。技をかけた、避けられた、それなら相手の体重どこにかかっているか、こっちにかかっているならこの技、こっちならこっちというふうに考える前に、体が勝手に動くことができるんです」
そして、実は北薗選手、他にも凄い能力がある。
北薗「左手をつかって相手の場所を探知します。相手がどこにいるか、正直(見えないから)わからないので、手の甲の部分を相手のここ(肩)につけちゃうんです。ここにつけることによって相手のことを感知しています」
相手のわずかな動きだけで状況を察知し、瞬時に対応することが出来る。左手の甲で、相手が技を出すタイミング、そして足の位置までわかるという。この探知能力と反射神経の二つを駆使して生み出されるのが、北薗選手のストロングポイント「変幻自在の連続技」。そして、連続技を可能にしているもう1つの大事な要素が・・・
北園「諦めない心です。昔の私ですと一回技をかけてだめだったら、そのまま諦めていたんですけど、一回技をかけたら最後の最後まで自分の技をしていくということ。どんなことをしてでも、相手を投げ切るというふうな諦めない心を、私は兵庫県警の方々から教えていただきました」
その全てが噛み合って生まれた、北薗選手だけのストロングポイント。それが念願の国際大会での初めてのメダルに繋がった。

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