放送内容

第2回「ウイルス感染症と人類」

<今回のテーマ>

太古の昔から、人類を脅かし続けてきたウイルス感染症。
その生態や実像は多くの謎に包まれています。
これまで人類は、科学の進歩により、ウイルス感染症による危機を幾度も乗り越えてきました。
遺伝子工学を駆使したワクチン開発という新たな武器を手にして、新型コロナの脅威を克服できるでしょうか?

<ウイルスとは>

ウイルスは、自分自身で増殖する能力がないため、『生物ではない』とされています、大きさはおよそ1万分の1ミリで、文字通り「目に見えない」存在。
その内部にはDNAやRNAが入っているだけで、感染した生物の細胞の中でしか増殖できない、謎多き物体です。

<人類を脅かしてきたウイルス感染症>

ウイルス感染症の一つ「天然痘」は、紀元前の時代から人類を苦しめてきました。
また、史上最悪と言われるのが、20世紀初めにパンデミックを起こした「スペイン風邪」で、世界中で4000万人以上の死者が出たとされています。
その他、エイズや新型インフルエンザ、SARS、MERSなど、様々なウイルス感染症によって多くの人命が奪われてきました。
その中で、人類の力で根絶できたウイルス感染症は「天然痘」だけです。

<PCR検査>

新型コロナの検査法として、一躍認知度を上げた「PCR検査」。
ウイルスなど目に見えない極小の物質を検出するため、DNAをくり返し増幅させ、約100万倍に量を増やすことで「見える化」します。
この検査法を1983年に発見したキャリー・マリスさんは、その功績によりノーベル化学賞を受賞しています。

<ワクチンとは、ワクチンのはじまり>

ワクチンは、病原体を無毒化・不活化してから体内に取り込み、免疫細胞に「抗体」を作らせるはたらきをするものです。
人類がワクチンの原理を初めて実用化したのは、1796年のこと。
イギリスの医学者エドワード・ジェンナーが、「牛痘」の膿を事前に人が接種すると「天然痘」にかからないことを証明しました。

<遺伝子ワクチン>

ワクチンは、あらかじめ病原性を弱くしたり、無くしたりした病原体(ウイルスや細菌)を体内に入れ、免疫(めんえき)をつくることで、病気を予防するくすりの一つです。近年は、病原体を使わず、遺伝子組み換え技術で製造したワクチン「遺伝子ワクチン」の開発が進んでいます。「遺伝子ワクチン」は今までのワクチンとは違う、新しい開発アプローチによるものです。

<ファクターXへの挑戦>

まだ謎に包まれている「新型コロナウイルス」。
例えば、なぜ日本を含む東アジアでは新型コロナの死者が少ないのか……。
未だ解明できない要因「ファクターX」に、世界中の研究者が取り組んでいます。
国立国際医療研究センター研究所の山本直樹 特任部長は、人種による遺伝子の働きの違いが重症化の要因ではないかとする研究成果を発表し、注目を集めました。
重症化の要因が実証されれば、ワクチンを優先的に接種させる指標になるなどメリットが期待されています。

 

出演者

●川崎市健康安全研究所(神奈川・川崎市)

岡部 信彦 所長

●国立国際医療研究センター病院(東京・新宿区)

国際感染症センター
大曲 貴夫 センター長

●国立国際医療研究センター研究所(東京・新宿区)

ゲノム医科学プロジェクト
山本 直樹 特任部長

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