放送内容

第1回「新型コロナウイルス感染症」

<今回のテーマ>

全人類を脅かしている新型コロナウイルス感染症。
多くの命が奪われる中、治療薬の開発に向けて研究が急ピッチで進んでいます。
そして、未知なる敵の正体が少しずつ見えてきました。
感染のメカニズムが明らかになるにつれ、治療のターゲットも定まりつつあります。
世界的な感染爆発「パンデミック」の勢いを食い止めることはできるのか?
新型コロナに立ち向かう、治療薬開発の最前線に迫ります!

<新型コロナウイルス>

ヒトに感染する7種のコロナウイルスの中で、最も新しいウイルス。
2002年から翌年にかけて流行したSARSと構造がよく似ているため、正式名称を「SARS-CoV-2(サーズ・コロナウイルス・2)」といいます。
なお、「COVID-19(コビッド・19)」は、このウイルスによる感染症を表します。
このウイルスが世界的なパンデミックを引き起こした原因の一つが、強い感染力。
また、軽症な感染者が多い一方、重症化すると数日で一気に症状が進行するという、警戒すべき特徴があります。

<感染のメカニズム>

新型コロナウイルスは、自身の突起の部分を使い、細胞の表面にある受け皿「ACE2」が持つ鍵穴を開け、細胞内に侵入します。
そこで遺伝子情報を放出し、細胞の力を借りて自分と同じウイルスを大量に複製。
増殖した新型コロナウイルスは、再び細胞の外へ出て別の細胞に感染を拡大させます。
これが新型コロナウイルス増殖のメカニズムと考えられています。

<サイトカイン・ストーム>

新型コロナウイルスが体内に侵入すると、それを察知した免疫細胞は、
「サイトカイン」という物質を放出して攻撃細胞を活性化します。
ところが、何らかの原因で制御不能になり、サイトカインが放出され続けて
嵐のように暴走すると、自身の肺を傷つけて「血栓」が生じ、
血管に詰まって重症化させてしまうのです。
この「サイトカイン・ストーム」が、新型コロナが重症化する要因の一つと
考えられています。

<ドラッグリポジショニング>

新薬の開発・承認には長い年月と莫大な費用がかかります。
そのため、すでに承認されたくすりに対して、別の疾患への有効性を見つけ出し、実用化につなげる「ドラッグリポジショニング」が注目されています。
既存のくすりは、副作用などのリスクがある程度わかっているため、新薬の開発に比べて、承認までの期間の短縮が見込まれます。
ドラッグリポジショニングにより、開発された新型コロナ感染症の治療薬は、国内でもいくつか承認を受け、実際に使用されています。

<治療薬の研究 3つのターゲット>

新型コロナ感染症の治療薬開発における、主なターゲットは次の3つです。
①「ウイルスの細胞への侵入を防ぐ」
②「ウイルスの増殖を防ぐ」
③「免疫の暴走を防ぐ」
この3つのターゲットを中心に、ドラッグリポジショニングによって新型コロナの治療効果が期待できるくすりの研究が、日夜続けられています。

 

 

 

出演者

●川崎市健康安全研究所(神奈川・川崎市)

岡部 信彦 所長

●国立国際医療研究センター病院(東京・新宿区)

国際感染症センター
大曲 貴夫 センター長

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