放送内容

第4回「フレイルと骨粗しょう症」

<今回のテーマ>

健康な状態から要介護状態に移行する中間段階にあたる「フレイル」は、要介護状態や死亡のリスクが高いという研究結果が出され、注目を集めています。
そして、加齢とともに増加する「骨粗しょう症」おいては、さまざまな新薬が登場して治療の選択肢が広がっています。
健康的に生活できる期間を指す「健康寿命」を伸ばすために、私たちができること、そして最新の医療とは?
健康寿命のカギを握る、フレイルと骨粗しょう症に迫ります。

<フレイルとは>

フレイルとは健康な状態と、日常生活でサポートが必要な要介護の中間にある状態を指します。65歳以上の高齢者の10人に1人、80歳以上では3人に1人がフレイルだといわれています。
フレイルには、筋力が低下して歩行が困難になるなどの「身体的要素」、うつや認知症、気力の衰えなどの「精神的・心理的要素」、地域の活動に参加しなくなり、孤独や閉じこもりなどの「社会的要素」があります。
また、要介護や死亡につながる危険度が高いという調査結果も報告されています。

<フレイルチェック>

・この半年で体重が2〜3kg以上減った
・軽い体操や運動・スポーツをしなくなった
・最近、理由もなく疲れを感じる
・横断歩道で青信号の間に渡りきれない
・握力が男性26kg未満、女性18kg未満
以上の項目のうち、3項目以上が該当する人は「フレイル」の恐れがあります。
また、2項目が該当する人は「フレイル予備群」です。

<フレイルの予防法>

フレイルに詳しい東京都健康長寿医療センター研究所、北村明彦先生によると、「運動」「栄養」「ストレス解消」「健康管理」の4つの観点から、フレイルの予防に取り組むと効果的だそうです。
フレイルは病気ではありません。食事や運動など普段の生活に気をつけることで、健康な状態に戻ることも可能なのです。

<骨粗しょう症>

女性の場合、骨密度が20歳ころをピークに低下するため、背が縮む、背中が曲がる、ちょっとしたことで骨折してしまうなど、骨の問題を抱える高齢者が多いのです。
国内で骨粗しょう症と疑われる人は約1280万人いるとされ、そのうち女性は980万人と、男性の3倍以上いると推計されています。

<破骨細胞と骨芽細胞>

体の骨は常に新陳代謝を繰り返しています。
「破骨細胞」が古い骨を壊す一方で、「骨芽細胞」が新しい骨を作ります。
しかし、加齢とともに2つの細胞のバランスが崩れ、骨を「壊す」ことが「作る」ことを上回ると、骨の量が減り、折れやすくなってしまうのです。
これまで、骨粗しょう症のくすりは「破骨細胞」に働きかけ、骨の破壊を抑えるタイプが中心でしたが、これに加えて「骨芽細胞」に働きかけ、骨の形成を促進するくすりが登場しています。

<骨折のリスクを下げるビタミンD>

鮭やイワシ、サンマ、きのこ類に多く含まれているビタミンDは、日本人が不足しがちな栄養素。
最近の研究で、血液中のビタミンDの量が少ない人は、多い人に比べて骨折するリスクが高いことがわかりました。
ビタミンDは食事の他、日光を浴びることで、体内でも生成されます。
最近は日焼け防止の意識が強いせいか、ビタミンDが欠乏した若い世代の女性が
増えていると、専門家は警鐘を鳴らしています。

出演者

●東京都健康長寿医療センター研究所(東京・板橋区)

北村 明彦 研究部長

●健康院クリニック(東京・中央区)

細井 孝之 院長

●近畿大学医学部(大阪・大阪狭山市)

公衆衛生学
伊木 雅之 教授

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