放送内容
#03 血液のがん 2020.01.19
<今回のテーマ>
昨年、競泳女子のエース 池江璃花子さんが白血病と闘っていることを公表し、日本中に衝撃が走りました。
白血病は、がん化した血液細胞が増える病気。いわゆる、血液のがん。
治療が困難で、かつては骨髄移植をする以外、有効な治療法がありませんでした。
そんな治療が難しい白血病にも、有望な新薬の開発が進められています。
今回は、数ある“がん”の中でも、進化を続ける「血液のがん」治療の最前線に迫ります。
<血液のがん>
白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などが主な疾病です。
白血病は、40代後半くらいから発症する人が増え、高齢になるほど増加します。
死亡率は高齢者で高くなっていますが、若者など世代によっては低くなっています。
一般的ながん(大腸がん、乳がんなど)は手術で「がん」を摘出できますが、血液のがんは手術で摘出できません。
<白血病の分類>
どこで異常が起きているのか、急性or慢性など主に4つに分けられます。
骨髄系…「急性骨髄性白血病」「慢性骨髄性白血病」
リンパ系…「急性リンパ性白血病」「慢性リンパ性白血病」
<慢性骨髄性白血病>
血液のもとになる造血幹細胞から生まれた血液細胞は、骨髄で成熟して血管の中に出ていきます。
この過程で、がん化した異常な血液細胞が作られます。
放置すると5〜6年かけて異常な血液細胞は増えていき、その後悪化して死に至る恐れが生じます。
<慢性骨髄性白血病の原因/フィラデルフィア染色体>
私たちの体には、23対の染色体があります。
9番と22番の染色体が何らかの原因で切断され、切断された部分が入れ替わり,異常な染色体ができます。
それがフィラデルフィア染色体です。
フィラデルフィア染色体が作り出す物質にエネルギーが統合すると異常な血液細胞が大量に作られ、慢性骨髄性白血病の原因となります。
<慢性骨髄性白血病の治療>
分子標的薬は、フィラデルフィア染色体が作り出す物質にエネルギーが統合しないようにブロックすることで、がん化した血液細胞が作られないようにします。
他の血液のがんの分子標的薬も、続々と登場しています。
<新たな治療法 CAR‐T細胞療法>
体には、T細胞という免疫細胞が備わっています。
T細胞に遺伝子改変を施し、がん細胞を攻撃するように設計されたのがCAR‐T細胞です。
CAR‐T細胞療法は、2019年に承認されました。
出演者
◆順天堂大学医学部(東京・文京区)
血液内科
小松則夫 教授
◆山口大学大学院
医学系研究科免疫学
玉田耕治 教授