放送内容

第1話  がんと新薬

2016年01月10日 初回放送

<今回のテーマ>

日本人の2人に1人が生涯がんになるといわれています。
しかし近年、研究者の努力により、がんは克服に向けて大きく進んでいます。
治療成績が格段によくなる治療法が開発され、生存期間の延長が期待できる画期的な新薬も誕生しました。
「がんと新薬」の最新の取り組みに迫ります。

<日本人の死亡原因第一位>

日本人の死亡原因で1番多いのはがん、そして心臓病、肺炎。
3割近い人が、がんで亡くなっています。
がんの中でも死亡率が最も高いがんは肺がん。年間死亡者数は約7万3千人。

<新しい抗がん剤「分子標的薬」とは>

まずは直接がん細胞を取り除く手術療法が優先されますが、近年、新しい抗がん剤「分子標的薬」が進化を遂げています。
従来の抗がん剤は、がん細胞だけではなく、正常な細胞も攻撃してしまい、さまざまな副作用を引き起こす欠点がありました。
分子標的薬は、がん細胞の発生や増殖にかかわる「特定の分子」だけを狙い打ちにし、がん細胞の発生や増殖を抑えるのです。「分子標的薬」は、特に「肺がん」で大きな効果を発揮しています。

<肺がんの新薬・ALK阻害剤とは>

画期的な分子標的薬の開発に深く関わったのは日本人研究者・間野博行教授。研究し始めたのは今から約30年前。
核の中には、2本で1組の染色体が23組入っていますが、ほかの染色体とは異なるものがあることを発見したのです。
染色体は通常、EML4、ALKという遺伝子で構成されています。
ところが、染色体の一部が切れて、反転してつながり、異常な遺伝子になっていたのです。
さらにATPと呼ばれる「アデノシン三リン酸」と結合してがん細胞を増殖させる指令を出していたことがわかりました。
間野先生は2007年、世界に向けて論文を発表。
それから、わずか4年後の2011年に、ALKとATPの結合を防ぐ「分子標的薬」が誕生しました。

<注目される個別化治療>

これまでの治療法では、がんの部位や進行度に合わせて同じ治療薬を投与していました。
しかし一部の患者さんには効果があっても、別の患者さんには効果がないケースがありました。
近年、分子レベルで患者さんの「がんのタイプ」が判別できるようになり、その人に合った「分子標的薬」を投与できるようになってきています。
タイプを調べる診断薬は「コンパニオン診断薬」と呼ばれ、患者さん1人1人を診断して「個別化治療」が行えるようになりました。

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出演者

日本医科大学 呼吸器内科
弦間 昭彦(げんま あきひこ)学長
日本医科大学付属病院 呼吸器内科
清家 正博(せいけ まさひろ)准教授
東京大学大学院 医学系研究科 細胞情報学
間野 博行(まの ひろゆき)教授
BS日テレ 医進薬新 夢のメディ神殿2016スペシャル