放送内容

2010年8月10日、8月17日放送

 
#8

渋谷で発見!西欧と江戸の大衆文化
〜ブリューゲルの版画と江戸の絵画〜

東京・渋谷〜広尾は、美術館がたくさんあるアートなエリアです。
今回はこのエリアをぶらぶらして、西洋と日本のかつての庶民文化を紐解きます。もともと王侯貴族のものだった芸術が庶民の文化に変わっていった、その変遷をたどってみましょう。

庶民のアート・ブリューゲルの版画

まずは渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開かれている「ブリューゲル 版画の世界」展です。
16世紀フランドル地方(今のベルギー・オランダ)の画家ピーテル・ブリューゲル(父)は、日本でも人気の高い画家。教科書や歴史の本などの挿絵にもよく使われています。このブリューゲルが、版画の版元ヒエロニムス・コックの依頼で原画を描いたのが、今回展示されている版画なのです。

フランドル地方は、当時ヨーロッパで芸術の大スポンサーだった「王様」のいない土地で、かわりに「庶民」が芸術のスポンサーでした。そこで、お値段の張る一点物の油絵よりも、安く大量に提供できる版画が発展したのです。なので、フランドル地方では、芸術の中心地だったイタリアより、いち早く大衆絵画が進んだ・・・というわけなんですね。

キモかわいい!ブリューゲル

ピーテル・ブリューゲル(父)の作品で人気が高いのが“キモかわいい”怪物がたくさん描かれた作品。字の読めない人がまだまだ多かった当時、聖書の物語や諺(教訓)を絵で示すこの手の版画は大人気だったのだとか。

ちなみにこちら「大きな魚は小さな魚を食う」という諺を
絵にしたもので、「弱肉強食」「上には上がいる」といった意味なんだそうです。

しかし、こういった画風はもともとブリューゲルの画風ではありませんでした。実は、ブリューゲル以前のオランダの画家、ヒエロニムス・ボス(山田五郎さん曰く「オランダの水木しげる」)の画風の「パクリ」なんですって!
ボスの版画が当時大人気だったのを受けて、版元のコックが新人画家・ブリューゲルに、「なあブリューゲル、ボスっぽい絵を描いたらおまえの版画、売れんじゃね?」などと言って生み出されたのが、この奇妙なクリーチャーたちの絵。
だから版画にはブリューゲルの署名はなく、物によってはボスの署名入りで作られた版画まであるんです。うーん、商売上手?

ちなみにピーテル・ブリューゲルに(父)がつくのは、同名の息子ピーテル・ブリューゲル(子)がいて、これまた同じようなスタイルで怪物の絵を描いているからなんです。

江戸庶民の絵画「琳派」ってなに?

つづいては、広尾にある日本初の日本画専門美術館「山種美術館」。
現在、行われている「江戸絵画への視線」では、貴族や武家だけのものだった芸術が庶民に広まっていった江戸時代の作品が楽しめます。

今回まず覚えておきたいのが「琳派(りんぱ)」。
「派」といってもその画家たちには直接の師弟関係はなく、先人たちの作品をリスペクトした後世の画家たちによって、時代や場所を超えて受け継がれていったという、他に類を見ない形なのです。

琳派は安土桃山時代〜江戸時代の初めに京都で生まれたスタイル。元祖は俵谷宗達・本阿弥光悦です。俵谷宗達は、もともと扇などに絵をつけていた人で、庶民の間でも人気の画家でした。そのスタイルを元禄時代になって受け継いだのが尾形光琳と弟の乾山。この尾形兄弟が有名になったので、「尾形光琳」の名前を取って「琳派」と呼ぶようになったのです。

「琳派」といえば金ピカ屏風!

「琳派」といえば背景に金・銀泊を使った屏風が有名です。
一見派手に思えますが、今の家とちがい、昼間でも薄暗かった当時の建物の中では、わずかな光を反射する金屏風は、おしゃれなデザインライト的な役割も果たしていたのです。

そして「琳派」の特徴と言えば“高いデザイン性”。
大胆な空白の取り方、型紙のパターンを用いた繰り返し、写実的に描く部分と抽象的に描く部分のコントラスト、などなど・・・。
それらの作品は、その後、ヨーロッパの画家たちにも大きな影響をあたえました。「見たものをそのままリアルに描く」伝統を持った当時の西洋画家たちが、こんな 金屏風を初めて見て、さぞかし大きな衝撃を受けたことでしょう。「背景が何にも書いてねーよ!」とか「このベタっとしたとこ、これって川なの?」なんて、ね。

 
相沢紗世のラブ♥ラブ♥美術・博物館

日本の絵画をこんなにしっかり見たのは初めてでした!「琳派」って初めて聞いたけど、今見てもとってもおしゃれ。もっと見てみたいなって思わせてくれる展覧会でした。

今回のおすすめミュージアムグッズ

金箔はがき入れ&風呂敷バック

今回実は私(相沢紗世)のお誕生日ということで、矢作さんが初めてプレゼントを買ってくれました!なんと2つも!

一つは「金箔はがき入れ」。琳派の元祖・俵谷宗達と本阿弥光悦が描いた「新古今集鹿下絵和歌巻断簡」をデザインしたもの。
そしてもう一つは、風呂敷バック。取っ手に風呂敷を止めるだけでバックになっちゃう優れモノです。風呂敷を変えるだけでいろんな色柄のバックを楽しめるんです。

 

Information

Bunkamura ザ・ミュージアム「ブリューゲル 版画の世界」
2010年8月29日(日)まで開催中

開館時間 10:00−19:00(入館は18:30まで)
毎週金・土曜日 21:00まで(入館は20:30まで)
休館日 展覧会開催期間中無休
入館料 当日 : 一般 1400円
     大学・高校生 1000円
     中学・小学生 700円

前売り・団体 : 一般 1200円
         大学・高校生 800円
         中学・小学生 500円
場所 東京都渋谷区道玄坂2−24−1
JR山手線 渋谷駅ハチ公口より徒歩7分
電話 03−3477−9413(Bunkamura ザ・ミュージアム)

「ブリューゲル 版画の世界」は、以下の日程で巡回します。
2010年9月4日(土)―10月17日(日) 新潟市美術館
2010年10月22日(金)―11月23日(火・祝) 美術館[えき]KYOTO

山種美術館
開館記念特別展Y
『江戸絵画への視線―岩佐又兵衛《官女観菊図》重要文化財指定記念―』
2010年9月5日(日)まで開催中

開館時間 午前10時〜午後5時(入館は4時30分まで)
休館日 毎週月曜日(祝日は開館、翌日火曜日は休館)
展示替え期間、年末年始
入館料 当日:一般 1200円(1000円)
    大高生 900円(800円)
    中学生以下 無料
 ※( )内は20名以上の団体および前売り料金
 ※障害者手帳、被爆者手帳をご提示の方、
およびその介護者(1名)は無料
場所 東京都渋谷区広尾3−12−36
JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅2番出口より徒歩10分
電話 03−5777−8600(ハローダイヤル)
 

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