放送内容

2010年5月11日、5月18日放送

 
#3

丸の内建築遺産とモダン・パリのアート

東京・丸の内周辺には日本の「建築遺産」と言うべき明治から昭和初期にかけての名建築がたくさんあるんです。今回は、そんなモダン建築の宝庫・丸の内をぶらぶらします。

また、明治の名建築が再現された三菱一号館美術館では、建物とほぼ同時代のパリで活躍した画家マネの特別展「マネとモダン・パリ」が開催されています。マネの絵に隠された面白エピソードも飛び出しますよ。

東京駅周辺は建築遺産の宝庫!

東京の玄関口「東京駅」(1914年・大正13年)。
現在は改装中のため、おなじみの赤レンガ造りの駅舎は見えません。一体なぜ改装しているのかというと、空襲で破壊されてしまう前の、本来の姿に戻そうとしているんですって。もとは3階建てで、両サイドにドームがあったという東京駅。その雄姿、平成24年にはお目見えするらしいので、楽しみですね!
そして、東京駅を作ったのが日本の近代西洋建築の父・辰野金吾。彼は、ほかにも「日本銀行」(1894年・明治29年)(※重要文化財)を設計しています。それまでの日本にはなかった堅牢な建物を作った辰野金吾には「辰野 堅固」なんてあだ名がついたそうですよ。

左地図
1:東京駅
2:日本銀行
3:三井本館
4:明治生命館
5:三菱一号館美術館

ちょっと使える建築のウンチク。

日本銀行の向かいには三井本館(1927年・昭和4年)。こちらは現存する日本最古のアメリカ式オフィスビルで、今も現役で使われています。関東大震災後に「東京の復興を世界にアピールしよう!」と建てられただけあって、よーく見ると、当時の三井グループの威信をアピールする飾り(レリーフ)が建物の壁にたくさんあるんです。
たとえば、歯車と鉄槌のマークは「機械工業」、天秤と鍵は「為替と財宝の保管(銀行業)」
そして、羽の生えた杖に蛇が巻き付くマーク。これは、商業系の高校や大学のマークにも使われている「マーキュリーの杖」=商業の象徴なのです。(ちなみに、マーキュリーはローマ神話の神様で、ギリシャ神話では、ヘルメス=商業の神様なんです。)
このような由来のあるレリーフが全部で12個もあるんです。建物のまわりをぐるっと一周するだけでちょっと楽しめるでしょ?

丸の内は“一丁ロンドン”

今年四月丸の内に美術館として復活した「三菱一号館」(1894年・明治27年)の建設・設計は、明治政府のお抱え建築士だったイギリス人建築士・ジョサイア・コンドルによるもの。実は、コンドルは(日本銀行を設計した)辰野金吾の師匠であり、東京大学工学部の基礎を作った人物。まさに、「日本近代建築の父」なんです。
かつて丸の内一帯を開発した三菱は、この一号館のようなレンガ造りの建物でオフィス街を作り上げたことから、当時この界隈は「一丁ロンドン」と呼ばれていたのだそうです。今の近代的なビルが立ち並ぶ光景からはちょっと想像がつかないですね。

他ではマネ出来ない「マネ展」

さて、三菱一号館が出来たのと同じ頃、パリで活躍していたのが画家・マネ。というわけで、開館記念として行なわれている特別展が「マネとモダン・パリ」です。
近代絵画の創始者ともいうべきマネは51歳で亡くなってしまったため、残した作品の数は多くありません。その上、世界中の美術館が彼の作品を目玉としているので、約80点ものマネ作品を集めた今回の展覧会は、100年に一度あるかないかぐらいの大チャンスなんです!それを実現させたのが三菱一号館美術館の高橋館長。筋金入りのマネ・マニアです。

マネと弟子ベルト・モリゾの意味深な関係

今回の展覧会の特徴は、絵を見ることで当時のパリの風俗と美術界の様子がわかるということ。
たとえば、当時のパリは今の日本で言う「韓流ブーム」のように、「スペインブーム」が起きていた・・・とか。
また、マネがいかに当時の美術界の主流派から批判されていたか。その一方で、「カフェ・ゲルボワ」に集う仲間たち(前回の「ぶらぶら」に出てきた印象派の若手画家たちや、エミール・ゾラのような小説家)に慕われ、支えられていたか・・・などなど。

そして今回の注目は、マネの弟子であり、印象派の画家であったベルト・モリゾをモデルにした一連の作品。
今回は、マネによるベルト・モリゾの肖像画が5点集められています。そして、それら作品のほとんどが、描き手・マネに対し、若くさわやかな微笑みと熱いまなざしが向けられているのがわかります。ですが、最後に描かれた1点だけ、少し年をとった感じでそっぽを向き、他の作品とは全く違った感じなのです。
実は、その最後の作品は、ベルト・モリゾがマネの弟と結婚した後に描かれたもの。良家の子女でありながら30歳を過ぎてもずっと独り身だったベルト・モリゾ・・・。なぜマネの弟と結婚したのか? マネはなぜベルト・モリゾの最後の一枚をあんな風に描いたのか?・・・実際に絵画を見て、彼ら二人だけの物語を想像してみるのも楽しいですよ。

 
相沢紗世のラブ♥ラブ♥美術・博物館

絵を見てその時代の雰囲気が分かるなんてなんか新鮮でした。
ベルト・モリゾさんのホントの気持ちってなんだったんでしょうね・・・?

今回のおすすめミュージアムグッズ

カフェ・ゲルボワ Tシャツ

「カフェ・ゲルボワ」は19世紀中ごろのパリで、マネのアトリエの近くにあったカフェ。ドガ、セザンヌ、モネら印象派画家のほか、小説家や美術評論家らが集い、芸術について語り合ったという伝説的な場所です。
マネが描いたカフェ・ゲルボワをモチーフにしたこのTシャツは山田五郎さんも一押し。タグまで「Manet(マネ)」になっている、こだわりのグッズなんですよ。

 

Information

三菱一号館美術館「マネとモダン・パリ」
7月25日(日)まで開催中

アクセス 東京メトロ千代田線「二重橋前」駅・1番出口から徒歩3分
都営三田線「日比谷」駅・1番出口から徒歩3分
JR「東京」駅・丸の内南口/JR「有楽町」駅・国際フォーラム口から徒歩5分
観覧料 当日/日時指定 一般1,500円
高校・大学生1,000円 小・中学生500円

三井本館
東京都中央区日本橋室町2-1-1
(※通常は銀行業務を行っているため、館内は一般公開されていません)

日本銀行本店
東京都中央区日本橋本石町2-1-1
<館内見学可能・要予約>
申込先:日本銀行情報サービス局(見学受付あて)03-3277-2815(直通)
または、03-3279-1111(大代表)より情報サービス局(見学受付へ)

明治生命館
東京都千代田区丸の内2-1-1
<下記日時・館内見学可能>
【毎週土・日曜】11:00〜17:00
※ただし12月31日〜1月3日および、ビル電気設備定期点検日は休館
[お問い合わせ]
明治安田ビルマネジメント 丸の内センター
電話番号 03-3283-9252

 

▲ページトップへ戻る