放送内容

2010年4月27日、5月4日放送

 
#2

「ボストン美術館展」 六本木ヒルズで名画のフルコース

今回ぶらぶらするのは、六本木ヒルズ森アーツセンターギャラリーで開催されている「ボストン美術館展」。レンブラント、ミレー、モネ、セザンヌ、ルノワール、ゴッホなどなど、西洋絵画の巨匠による作品80点が勢ぞろいする名画入門にうってつけの美術展です。
西洋絵画はまったくわからないと宣言していたおぎやはぎのふたりも、山田五郎の解説のおかげで、見終える頃には大変化が!?あなたも「印象派ってそういうことだったのか!」と、目からウロコが落ちること間違いなしです。

名画をたくさん国外に貸し出しちゃって、本家ボストン美術館は大丈夫なの?

実は今、アメリカのボストン美術館は展示棟の一部を改装工事中なんです。だからこそ普段は海外に貸し出されることのない名作を日本で楽しめるんですね。こんなチャンスはめったにない!

西洋絵画の歴史がわかる!

西洋絵画って肖像画やキリスト教のエピソードを描いた「宗教画」がとても多い印象がありますよね。それは何故かって?今なら、画家が自分の好きな題材を描くのはあたりまえですが、昔はスポンサーの注文で描くのが普通だったからなのです。

そして、かつての画家の最大のスポンサーは、「ローマ・カトリック教会」。
だから宗教画の注文が圧倒的に多かった、というわけです。

次なる大きなスポンサーは「王侯貴族」。
ですから、宮廷画家になって王族たちの肖像画を描く事は、画家として「勝ち組」だったのです。

ちなみに、値段は絵のサイズに比例するということで、教会に飾る大きな絵や、全身フルサイズの肖像画の注文がくれば、画家はもうウハウハ状態だったのです。

バブルに沸いた画家の末路

教会や王侯貴族以外のスポンサーが登場したのがオランダ。17世紀の大航海時代、世界中との交易でお金持ちになったオランダの商人たちは、こぞって画家に絵を描かせました。特にレンブラントは、たくさんの注文を受け、稼いだお金で邸宅を建てたり、美術品を買い集めたりと豪勢な生活を送っていましたが、当時のオランダでおきた「チューリップ・バブル」(チューリップの球根が投機の対象になり好景気に沸いたものの、世界史上初のバブル崩壊となった)に直面し、晩年は食うや食わずの生活を送るはめになったのでした。

昔の絵画は、今とは違う特別な意味を持っていた!

まだ写真がなかった時代ですから、絵画には、写真代わりに「記録する」という役割があったのです。
歴史画や肖像画は歴史の教科書でもよくみかけますよね。ヴァン・ダイクという宮廷画家が17世紀に書いたメアリー王女の肖像画。実はこれ、今で言う「お見合い写真」だったのです。将来結婚する予定のオランダの王族に「こんなにかわいく育ってますよ〜」とお知らせするための絵だったのです。でも、やっぱり本物よりはちょっと可愛くしてあるんでしょうね。

19世紀、写真の登場で西洋絵画の歴史が変わった!

それまでの絵画は、いかに「リアル」に描くかが大事で、それが評価基準だったのですが、写真の登場で「リアル」なだけでは存在価値がなくなってしまったのです。そこで重要になってくるのが「作家の個性」。以来、絵の題材も描き方もどんどん幅広くなっていくのです。

西洋絵画の歴史を変えた印象派の登場

19世紀後半のパリ美術界には、美術アカデミーのサロン(展覧会)に出品し、そこで認められなけば画家として一流になれない、という常識がありました。
アカデミーは、客観的な事実をリアルに描くという写真誕生以前の価値観に固執していましたが、そこに登場したのがマネでした。「自分の目で見て、肌で感じた主観的な印象を描く」スタイルは、当時としてはとても斬新。下町のカフェやそこで生きる人々の日常を描き、新しい世界を模索していました。しかし、その新しさも権威主義的なサロンではなかなか認めてもらえなかったのです。そんな中、マネをリスペクトする若い画家たちは、マネのアトリエのそばにあった「カフェ・ゲルボワ」(「ぶらぶら」ではよく出てくるお店なので覚えてね!)に集まり「マネを認めないなんてサロンはおかしい!それじゃ、俺たちが勝手に展覧会をひらくぞー!」と、はじめたのが「第一回無名芸術家展」でした。ここに参加した新進気鋭の画家たちが「印象派」と呼ばれているんです。

印象派ってどんな人?どんな絵?

モネ、ルノアール、ピサロ、シスレー、ドガ・・・。彼らの絵の描き方は今までの画家の常識とは違っていました。
例えば、「写生」という、外に出て実際に風景を見ながら描くという方法を積極的に用いたのは印象派の画家たちなのです。写生なんて、私たちにしてみれば普通のことですよね。でも、昔の画家たちは外に出てもスケッチ程度で、部屋の中で実際の風景を見ずに描くのが一般的だったのです。 また、絵具を混ぜて色を作るのではなく、いろんな色を点のように細かく描くことによって色を作り上げる「点描」という技法を取り入れたのも印象派。現代の印刷での色の作り方と同じですね。ちなみに印象派の絵を見る時、少し離れたところから見ると、より鮮やかな色に見えてくるのはそのためなんです。これを知っていると、ちょっとだけ自慢できるかも・・・?

ミスター印象派・モネ

印象派の名前の由来を知っていますか? 実はモネが「第一回無名芸術家展」に出品した「印象〜日の出」という作品の名前から生まれたものなのです。

モネがこだわり続けたのは、一瞬の光と影を表現すること。だから同じ題材の絵を、光の加減が変わる時間をとらえて何枚も何枚も描いたのです。
「積みわら」25枚、「ルーアン大聖堂」30枚、そして「睡蓮」(自分の家の池)は200枚以上!! 究極の題材は、水に写る光と影、ということだったのかもしれません。

 
相沢紗世のラブ♥ラブ♥美術・博物館

「印象派」・・・どこかで聞いたことあるけど、どんな人たちが、どんな絵を描いて何を目指していたのか、よーくわかりました。そんなお話を聞いてから改めて絵を見てみると、なんだか違って見えてくるから不思議です。「カフェ・ゲルボワ」、もう覚えました?

今回のおすすめミュージアムグッズ

「Think Bee!」と「ボストン美術館展」のコラボバック

中世ヨーロッパの宮殿などに飾られ、王侯貴族たちから愛されたゴブラン織り。そのゴブラン織りの生地で作られたバックを持てば、ちょっとお姫様気分を味わえるかも。

 

Information

森アーツセンターギャラリー「ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち」
6月20日(日)まで開催中

アクセス 東京メトロ・日比谷線 六本木駅下車1C出口より徒歩0分
専用入口「ミュージアムコーン」より、六本木ヒルズ森タワー52階へ
観覧料 当日 一般1,500円 高校・大学生1,200円 中学生500円
前売 一般1,300円 高校・大学生1,000円 中学生400円

※「ボストン美術館展」は、2010年7月6日(火)〜8月29日(日)、京都市美術館(京都市左京区岡崎円勝寺町124、岡崎公園内)でも開催します。

 

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