ローマの東、緑の谷間にある村。
中心には名門貴族のものだった城がある。
昔は、優雅な城に住む貴族に比べて村人の生活は楽ではなかった。
ローマからそう遠くないこの村では、今も昔も働きに出る人が少なくない。

14歳の時からローマに通って働いていた元電気工事士の男性。真面目で誠実な人柄で34歳の時に村長に選ばれ、立派な功績を残した。なんと、村人の憧れだった城の購入に成功して、村の共有財産にしたのだ。偉業を成し遂げた息子を父親は誰よりも誇らしく思っている。
もう一人は、プロでも通用するギター演奏の実力があったが、仕事として音楽を選ばなかった男性。愛する妻と村で暮らすため、生地問屋の仕事に転向したのだ。去年退職して、家族とのんびり過ごす日々だ。今も暇さえあればギターを奏でる。音楽に興味深々の7歳の孫にひそかな期待を寄せている。