南イタリアの高原地帯。
なだらかな山の頂に築かれた村、モッタサンタルチア。
尾根に沿って走る一本の道を挟んで家々が立ち並ぶ。
その道を通って物が運ばれ、人が行き交い、
様々な人生が綴られてきた。

村のほとんどの建物を手掛けてきた腕利きの左官職人。
若い頃、昼夜を問わず働き続け4人の娘を大学に行かせることができたのが誇りだ。左官の仕事は7年前に退いたが、今も野良仕事や家畜の世話に忙しい毎日を送っている。仕事熱心な性格は父親譲りで、父親から教わったことは、今も心に刻まれている。
もう一人の主人公は、村の外れを流れる川のほとりで一人で暮らしている女性。家族は代々水車小屋で小麦を挽き、暮らしを支えてきた。水車は幼い頃に使われなくなり、母親の代からは家畜を飼いはじめ、農家として生きてきた。