イタリアの真ん中。
渓谷を見下ろす崖の突端に村がある。
モンテフランコだ。
南向きの斜面にはオリーブの木立が生え、
緑豊かな谷底には太古の昔から
ローマへと水を送り続けたネーラ川が流れる。
村人たちの日々はどこまでも穏やかだ。

村のサッカー協会の副会長。特別な仕事があるわけではないが、洗濯や芝の管理など、チームの裏方仕事を一手に引き受ける。
もともとは選手の一員だったので、チームのために働くことで若者達と一緒にいられるだけで嬉しいのだ。イベントを企画してその収益をサッカーチームの運営にまわしたり、村人達を集めてパーティを開いたり…世話好きに見られるが、本当は村で一番の“いたずら坊主”だったことを村人は皆知っている。
もう一人の主人公は、現役時代、エンジニアとして長年働いてきたが、今は日がな故郷の絵を描いて過ごしている男。家の中は描いた絵で埋め尽くされるほど、絵には人生を費やした。若い頃は才能も認められていたが、生業としての画家になる道には進まなかった。人生最大の傑作は、居間の壁いっぱいに掛けられた、ひと際大きな絵。そこには妻との壮大な恋の物語が秘められている。