イタリア中部アブルッツォ州。
山に抱かれた村・プレトーロ。
今から400年前、山の斜面を削り、家を建て、
人々は身を寄せ合うように暮らし始めた。
村の営みの中心にあったのは
山がもたらす良質の木材だ。
木工の仕事が盛んだったこの村で、
職人たちは凌ぎを削ってきた。

村人に“マエストロ”と呼ばれ、親しまれている木工職人がいる。
自宅の一角に工房を構え、ほぼ毎日朝７時から夜7時まで、この工房で何かしら作っている。木工の仕事を始めたのは7歳の時。年金生活に入ってから、“芸術”は花開き、バチカンのサン・ピエトロ寺院やバルセロナのサグラダファミリアなどの有名な歴史的建造物の模型を作り始めたのだ。
もう一人の主人公は、豊かな自然を体験してもらい、その大切さを伝えていこうと、自然保護体験センター「イル・グランデ・ファッジョ（大きなブナの木）」を作り、自らもそこに住み込んで活動を続けている男。家族と離れ離れの暮らしは寂しくないと言ったら嘘になるが、離れているからこそ家族の絆を感じる瞬間がある。