南イタリア、シチリア州。
パレルモから南に車で1時間半。
なだらかな山々に囲まれた村。
ほんの50年前まで、
村には自給自足の暮らしが息づいていた。
厳しい環境に負けないように、
村人たちは手を取り合い、
家族のように支え合いながら力強く生きてきた。

代々農業を営む家に生まれ、父から受け継いだ麦畑を耕し、家畜を育てながら家族を養ってきた男。20歳の頃、他の若者同様に外の世界に憧れ、ドイツやフランスで大工として働いたが、病気になって村に戻ることを余儀なくされた。村を離れたことで、家族と故郷の大切さを知ることができた。それから43年、村から一度も出ることなく、畑一筋で生きてきた。
もう一人の主人公は、村で会計士として働いているが、今はちょうど休暇中の母親。
娘の結婚式が間近に迫っているため、その準備に忙しいのだ。花嫁衣装や式場の飾りはすべてお手製。8か月前からコツコツと準備してきた。村人総出で、新郎新婦の門出を祝う。質素だが愛情に溢れたそんな式を娘にも体験してほしい…、そんな母の願いが込められている。