第4話 炎症性腸疾患と新薬
2016年01月31日 初回放送
<今回のテーマ>
腸の粘膜に潰瘍ができる「炎症性腸疾患」。
日本人のおよそ20万人が、炎症性腸疾患で苦しんでいます。その多くは20歳前後の若者たち。
しかし近年、医療の進歩によって患者さんの生活は大きく改善されました。
最新の治療を詳しくご紹介します。
<炎症性腸疾患とは>
炎症性腸疾患というのは、原因が分からない自己免疫疾患。
本来なら外から入ってきた細菌やウィルスを攻撃する免疫が腸に向かって攻撃を仕掛けてしまうのです。
大きく「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」に分けられ、潰瘍性大腸炎は大腸の出口付近に炎症を起こし、
クローン病は主に小腸と大腸を中心に消化管のいたるところで炎症が生じるのが特徴です。
<炎症性腸疾患の治療>
潰瘍性大腸炎に対する代表的な治療薬「メサラジン」。これが基本薬として寛解導入・寛解維持の両方に使われます。
それでも治まらない人には、一時的に「副腎皮質ホルモン」というステロイドを使います。
<炎症性腸疾患の新薬>
近年「寛解導入」も「寛解維持」もどちらも期待できるくすりが誕生しました。
1980年代、ある物質が炎症性腸疾患に関わっていることが分かりました。その物質が「TNF-α」。
自分自身の腸の粘膜を攻撃する際、白血球から放出されるのが「TNF-α」です。
そして生み出されたのが「TNF-α阻害薬」。
白血球から放出されたTNF-αをブロックしたり、白血球自体を捕まえて粘膜の炎症を防ぐくすりです。
1991年にアメリカで臨床試験が始まり、1998年、クローン病の治療薬として承認。
日本では、2002年にクローン病の治療薬として、2010年には潰瘍性大腸炎の治療薬として承認されました。
出演者
- 慶應義塾大学病院 消化器内科
- 金井 隆典(かない たかのり)教授
- 東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器内科
- 渡辺 守(わたなべ まもる)教授